タイムトリップ
皆さんは昔に戻れるとしたらいつに戻る? よくドラマであるやつ。
私は戻りたいと思わないんだけど、どうしても戻らなけばならないなら、高校三年生。あの時はデッサンばかりしていて、付き合っていた彼とデートもなかなかできなかった。
理解してくれて、応援してくれていたけど、クリスマスにも会えなかったから、電話口でとても寂しそうにしていた。その時に戻ったら、美大なんて目指すのやめて、田舎で結婚するのかも。と、ありもしないことを考えては、そんな人生で楽しいのか?!と自分に突っ込んでみたり。
結婚だけが幸せのカタチではないと信じていたので、そっちの道を選ばなかったのだ。
ふたつ上の彼は、友達のお兄ちゃんの友達。いつも友達の家に遊びに行くと、お兄ちゃんやその友達もいて楽しそうにしていた。都会の高校生は友達の家で遊ぶなんてしないのかな。田舎には特に何もないので家パターンはあった。今はネット環境さえあれば、一緒にゲームをして遊ぶことができるし、昔みたいに誰かの家で遊ぶなんて、田舎でもないかも。
彼は既に社会人。私は美大受験を控えた高校生。もともと時間的に合わないのだ。それでも、惹かれた。
健康的な日に焼けた肌。色黒なだけだったかもしれないが。
おしゃべりでお調子者なところがあったが、それも新鮮に思えた。
たまに会える時は、車でドライブに連れて行ってくれたり、ゴルフの練習に付き合わされたりしていた。
その日は、一日ゆっくり会えるということで、車で三保の松原まで行った。
同じ静岡県だがかなり遠い。でもおしゃべりしたり、ご飯食べたりする時間がとても楽しかった。帰る前に海岸で戯れたり、写真を撮ったりして残り少ない時間を楽しんだ。いまだに鮮明に覚えているほど、楽しんだのだ。
その後もなかなか会えない状況は続き、クリスマスの時期がきた。
受験生にとって、冬休みは大事な時期だ。もちろん私も。
休みに入ってすぐに、東京の美大ゼミのために上京したので、ずっと会えなかった。ゼミが終わってから公衆電話に駆け込み、メリークリスマスを言うために電話したら、珍しく元気のない声が聞こえた。一緒にクリスマスを過ごせないことが寂しいと言ってた。
一瞬、美大受験なんてやめちゃおう、すぐに帰ろうって・・・
切なくて淋しくて、泣きながら電話を切った。
もし、タイムトリップするならば。
この時に戻って、すぐに伊豆に帰る。
そして、クリスマスを一緒に過ごしてみようかな。
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