思わぬ最後
ここ2日間ずっと浴室の天井にいたセスジツユムシらしき虫とそろそろお別れしようと思いました。
今日は浴槽にいたのでさっと捕まえようとしたのですがやはりすばしっこくてなかなか捕まえられませんでした。
跳ねながら私の追手から逃げるセスジツユムシらしき虫はその勢いのまま排水口の中に消えていきました。
排水口の中に消えていきました。
「おーい」と声を掛けてももちろん反応することはなく。底を叩いても何の反応もなく。
排水溝の中に消えていく様があまりにも静かであっけなくて直後は唖然としていました。
やがてちょっとした寂しさが湧き出てきました。寂しさのあとに、「見つけた時に外に逃がしてあげれば」という強い後悔の念が生まれました。
しばらく時間が経って這い上がってこないかなと思い何度も浴槽を見ましたが姿はありませんでした。
本当に一瞬の出来事だったのにその時の描写1コマ1コマが細かく記憶に書き込まれていて、鮮明に眼前に呼び起こせます。
セスジツユムシらしき虫だって死ぬなら人工物の暗闇の中より自然界で死ぬ方がいいに決まってる。知らんけど。
それから「セスジツユムシ"らしき"虫」という中途半端な知識のままお別れとなってしまったことも悔いています。
親しみが全然ないからこそあんな最後にさせてしまったことをものすごく申し訳なく思います。
運よく下水でどうにか外に出てくれれば…。ほんの僅かな望みを抱きます。
それにしても「セスジツユムシ"らしき"虫」の正体はなんだったのだろうか。写真も撮っていないというのはなんて感心のなさだろう。
この世を去ってから注目される。この世の常だ。
いやまだ死んでないと信じる。セスジツユムシらしき虫は。