同人誌を書くことの効用

この度、IT分野の技術系同人誌というものを上梓することになりました。既に原稿を書き終え、印刷・製本が進んでいます。今回は、初心者の方向けの抜け漏れのない勉強方法について、日頃から考えていたことをまとめてみました。無事に書き終えてホッとしているところですが、同人誌を上梓するまでの過程で感じたことや分かったことがいろいろあったので、ひとまず書き留めておこうと思います。

まず、良い意味で自分の文章能力の限界を知ったことです。1ヶ月半ほど前、ITエンジニアの仲間から「技術系同人誌の頒布会に出品しないか」と誘われたのがきっかけで、ボチボチ書き始めましたのですが、最終的にはA5版で100ページ分の文章を書くに至りました。文の量を文庫本などとの比較で言ったらそんなに多くはないでしょうけど、これだけのまとまった量の文章が書けてしまうとは、自分でも驚いています。しかも、これを予想をはるかに下回る合計30時間くらいで書き上げられたのです。学会報告用の報告要旨を半日で書くようなことは学生時代からしていましたが、これほどの文章力が自分にあったとは知りませんでした。ひとまず書いてみる、ということでやってみて、自分のこの部分での限界は、思っていたよりも高いところにあったことに驚いています。

次に、自分が日頃から考えていたことを一つにまとめたことで、自分の頭の中のアイデアを客観的に、体系的に知ることができました。書き始めるにあたって目次立てから始めたのですが、その時点で、自分の中の小さな個別のアイデアをつなぎ合わせながら、まとまった体系に並び替えていく作業はとても興味深いものがありました。こんなことを考えていたのか、という驚きもありました。それだけではなく、実際に文章を書く過程で、出典を紐解いて確認を取るような作業を通じて、自分が考えを煮詰めるきっかけになった原点を読み返すことができ、より頭の中が整理されて考えが確かなものになっていた感じがあります。

最後に、これだけの作品を書き上げるにあたって、表紙のデザインをしてくれたデザイナーや印刷・製本をしてくれた印刷会社との調整を図りながら、自分の段取りで滞りなく作業を進めていくマネジメント能力についても再確認しました。一人で作業の指揮を執ったのは久しぶりだったこともあって、腕が鈍ったのか、そもそも買いかぶっていたのか、自分で思っていたよりも段取りが良くなかったことにも気付けましたし、それが次への経験値になりました。

同人誌は、日頃の趣味の活動について発表するものだと思っていましたが、今回の創作活動を通じて、それだけに留まらない効用があることに気付けました。総じてまとめると、同人誌をしっかり1冊作り上げる工程を経験していくと、自分の考えをまとめることができ、自分のマネジメント能力を上げることにもつながり、自分のスキルアップの機会にもできるのだと分かりました。

既に同人誌を何冊も刊行されている方にとっては「今さら感」のある感想だと思いますが、まだ書いたことがない人には、ぜひ、一度、執筆の機会を持ってみてほしいと思います。自分が取り組んでいることや自分自身を客観的に捉えて、体系的に形作ることで、次の新たな一歩が見えてくる、とてもクリエイティブな営みを実感してみて下さい。

文章を書く仕事も、なかなか楽しい!

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