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chapter.01 Summer

introduction
この記録は、友人のフジワラコトミとの
ルームシェア期間である2020年7月から、
解散する2022年7月までの2年間に、
わたし(タグチヒカリ)が記録した日記の一部を
再編集したものです。

illustration by Kotomi Fujiwara

【第1章 2020夏】

2020.July

25.
人生で一度は友達と暮らしたいという
一つの夢が叶った。
やりたいことを先延ばしにする
ダメダメな自分だけど、
行動に起こせばこんなにも早く
生活を変えることができるのだ。
行動できた自分に少しだけ
自信が持てたりした。

31.
ルームシェアを始めてから
明らかに元気になった。
何かあった時に一番話したい人が
家に帰ったらいるってそれだけで嬉しい。


2020.August

2.
肌の質感、髪の感触。
案外全部まだ覚えている。
忘れてしまう日が来てしまうのだろうし、
もうどうでもいいことのはずなのに、
まださみしい。
あれだけ自分を肯定してくれていた人が、
わたしをこんなにも追い詰めて、
結果的に自分を肯定出来なくなる
原因にまでなってしまった。
そこから抜け出して、わたしはわたし。
って思えるようになるのに
それなりの時間がかかってしまった。
わたしは何も持っていないということを
突きつけられるような
恋愛や人間関係はもうこりごりだ。

6
夏祭りの前の、そわそわした夕方を思い出すような香りの風が、キッチンの窓から入ってくる。
フジワラとアイスを買いにコンビニまで歩く。

11
もうどうしようもないのでついにインスタをミュートした。去年までのことは大切な思い出にしたいけど、あまりにも傷を負いすぎた。
わたしはいつまでこんな自分でいなければいけないのだろうか。

13
重めの映画が観たい気分。

21
優れているものは世の中にたくさんあるし、
才能だと言われたら元も子もないけれど、
センスがいい人を見ると
やっぱり震えるほど羨ましい。


2020.September

1
やんわりと8月が終わってしまった。

昨晩フジワラと話して、
自分はデザインの技術が
もっと欲しいのだなと思った。
ひたすら努力をし続けるしかない。
劣等感はある。ずっと消えないし、
ずっと比べてしまうと思う。
何か自分も成し遂げていると
思えるようにならないと。

4
大学の先輩がひっそりと更新している日記を
心の支えにして生きている。

7
やっとやっと抜け出した。
地獄みたいに忙しい1週間だった。
これだけ忙しいと何も考えられなくなる。
もっと丁寧にやりたいって思うけど、
ちゃんとやろうと思えば思うほど
アラが目立つしちゃんとやれなくなっていく。

10
私も一流の大学に行くとか、
ちゃんとした会社に勤めるとか、
そういう人生選択ができたらよかったのにな。
そういう発想が少しでもあれば
何か違っていただろうか。
全くお金に余裕がない。
増やすより出て行かないようにするのが
手っ取り早いのにそれが本当に難しい。

16
年齢への異常なこだわりがあるのは自分だ、
無意識的に口から出る言葉に棘がある。
ということに言った瞬間に気がつくのに、
言葉が先に出てしまって毎回自己嫌悪に陥る。

その考え方の情けなさに気づいているし、
そうじゃない価値観を大切にしたいのに、
わたしはだんだん若さを失うことを恐れている。
未来の自分が苦しいだけなのに。
年齢など関係ないということは分かっているのに。

18
親と自分を比べない。
わたしはわたしの人生を生きればよい。

親のような人生は生まれ直したって
できっこないのだ。
両親は自分たちの計り知れない努力で
今の仕事や生活水準を手に入れている。
誰かに雇われたままでも生きれたはずなのに、
父親は、自分の野心やこだわりのために
自分の違和感を無視しなかった。

私はせめて、二人に恥じないように、
自分のやりたいことには責任を持って
諦めずに生きるしかない。
自分の選択に誇りを持てるように、
生きてゆくしか親孝行する術はないのです。

わたしは親に土下座をして
この世界に足を踏み入れたのだから。

19
好きになった人とはうまくいかないな。
わたしも誰かに必要とされたい。

つづく

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