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Chapter.03 Winter

introduction
この記録は、友人のフジワラコトミとの
ルームシェア期間である2020年7月から、
解散する2022年7月までの2年間に、
わたし(タグチヒカリ)が記録した日記の一部を
再編集したものです。

illustration by Kotomi Fujiwara

【第3章 2020-2021冬】

2020.December

7.
恋人との時間は楽しくてたまらないけど、
大切なことを置き去りにしたまま
時が過ぎてしまっている気もしていて、
このままなんとなく時が過ぎては
まずいことがたくさんある。
自分の人生のことを
もっと考えなくてはならないのに、
目の前の楽しいことばかりに目がいって、
丁寧に生きられなくなっている。
仕事にも生活にも集中力がなくて、
それに気づく時、少し自分が嫌になる。
だからもう少しバランスをとって生きたい。

11.
特に何をしなくても、豪勢な食べ物がなくても、
コンビニのおにぎりとコーヒー、
あったかい日向があればそこで
ぼんやり話すだけで幸せで、心が浄化される。

深夜、終電を逃して歩いていたら
恋人が自転車で迎えに来てくれて、
ひと気のない道をワーワー言いながら二人乗りして駆け抜けた。
10代のカップルみたいでちょっと楽しかった。

14.
フジワラと話す時間は自分自身の整理整頓。
だからこの時間はわたしにとっては想像以上に大切で、最近はめっきり減っていたからフラフラしちゃってたんだと気づく。久々に二人でゆっくり過ごした日曜日、自分の散らばったピースが埋まったみたいな感覚でほっとした。

21.
一緒にいればいるほどどんどん自分の一部みたいになっていくんだね。家族でも友達でもない、でも恋人とも違うような一心同体感。

22.
もっとこの仕事がしたいって思うことも沢山ある。またちょっとデザイン上手くなったんじゃないかって、そんな風に思えると楽しくなって、ああ私も続けていけばもっともっと上手くなるんじゃないか、もっと一人前になれればずっとデザインを続けることだってできるんじゃないかって思う。だけど、そう思えない時間が多すぎて、その苦しさはずっとは抱えられない気がしていて。
私はいつ、新しい環境に飛び込めばいい?
いつの間にか社会人として言い訳のきかない歳になってきている。

24.
クリスマスケーキを受け取りに、ケーキ屋にずらっと並ぶおじさんたちがかわいかったって、フジワラに話したいなって思いながら帰路。
どうでもいい日常のことを話せる相手がいるって幸せだな。


2021.January

4.
フジワラと夜におしるこをつくって食べた。
2人でいたずらするみたいな気持ちで何かしらしていけるのが、そんな日常がすごく尊いのだ。こういうことをあと1年半もっともっと積み重ねていきたい。恋人とは何かない限りこの先何十年も一緒に生きていけるだろう。
だからフジワラと一緒に生きられるこの時間も、私は大切にしていかなければいけないね。この時間は今しかない。望んでも今しかない、取り返すことはできない時間なのだ。年末年始、すごく楽しかった。恋人と、こんなにずっと一緒にいても苦にならないんだって分かったのもよかった。

5.
仕事のことどうしていこう。
1月に辞めるって言いたかったのに言えそうもない自分。勇気がないのだ、ただ単に。転職することが怖い。自分で人生を動かしていかなければいけないのに。
現状維持ほどぬるい人生はないよ。
変化を続けなければ生きてる価値が半減する。
ちゃんと自分の人生を生きていける自分でありたい。

6.
写真集の仕事を振ってもらえた。
正直めちゃくちゃ不安だけど、久々に仕事でドキドキしている!ドキドキというかワクワク。焦って転職するのではなく、今いる場所で、満足いくようにここでのベストが出せるように努力して、仕事はもっと楽しんで、ちゃんと次やりたいこと、どう生きたいのかを考えてから行くべきところに移っていきたい。もう少し前向きな気持ちでこの会社にいたいなって思いました。

仕事も恋愛も友人関係も趣味も全て諦めたくない。全部我慢や妥協をせずに生きていきたい。

9.
フジワラと洗面台の前であーだこーだだべる時間がすごく好き。
ドーナツ16個も買って、家でポテトを揚げて、
フジワラと恋人と3人で家で映画を観た。
そのあと2時間以上しりとりをした。
ふたりがどう思っているかはわからないけれど、
わたしは3人で過ごす時間がとっても好きだ。
みんなほどよく自由でなんだか兄弟みたい。

11.
初めての撮影同行。単純に、俳優の撮影同行が初めてだったからドキドキしたというのはあるけれど、初めてちゃんと、「同じ媒体を作るチーム」というものを見て、ああ、私はずっとこれが足りていなかったんだなと気づく。自分はこのチームが作ろうとしているものを責任もって形にしなければいけなくて、今日撮った素敵すぎる写真たちを生かすもころすも私次第で、それってすごく一大事で、責任重大で、正直めちゃくちゃ怖くなった。でも同時に、私はずっとこうなりたかったんだと分かった。
10代の自分に自慢したいって思うミーハー心と、
もっと気を引き締めて仕事頑張るぞ!って気持ち、どっちも湧いた。

15.
健康診断、採血が苦手なので採血後にちょっと寝かせてもらった。
ベッドで横たわりながら、周りの時が進んでいるのに自分はじっと何もせず思考しない時間、最近なかったな。この感覚がすごく久々だった。
ぼーっと周りの音を聞いて、社会は進むのに自分はそこにいるまま。自分の体が回復する感覚があった。身体がじんわり、ちゃんと生きてるよって、久々に感じた。

体重が少し落ちたこと、右目がもう0.1しか見えていないこと、身長は160.7センチ。自分の身体、若いだけじゃもうないんだな。
健康に生きていかなければ。

16.
身体に悪そうな食べ物を躊躇なく食べる。

21.
自分の嫌なところがめちゃくちゃ出る。私はずっと本気でやってきたしもうアマチュアじゃない。そこの次元にもういないって分かってるのに、根本的に自信がないからまだ比べてしまうのだろうか。

何がなんでも今日はネイルを塗り直す。
恋人とダラダラ電話。平和だね。

24.
結局剥げた爪を塗り直せぬまま数日が経つ。バタバタと日々が過ぎていってしまう。恋人が、私に振られる夢を見たと言って落ち込んでいた。

初めて、普通にストーリーに恋人をあげたらめちゃくちゃ喜んでいてかわいい。こういう些細なことがこんなにも喜べて、感情表現ができる恋人を羨ましくも思う。見習わなければいけない。

湯船に浸かってほかほかふかふかの気持ち。
あったまった後の冷えたトマトジュースがうますぎる。幸せだ。

31.
土曜の朝、起きたらフジワラがホットケーキを焼いてくれていた。
フジワラと恋人とわたしの3人で食べた。


2021.February

1.
恋人が突然坊主にした。突然のことにびっくりしつつも、坊主が似合うことの方が何倍もびっくりした。坊主にして大正解。

会社の休憩中、
セレクトショップの前を通りかかったら、
ガラス越しに、ここ数日ネットで
血眼で在庫を探していたバッグが
こちらを見ていた。
完全に「目が合ってしまった。」
という感じだった。
一旦会社に戻り、仕事をしながら考えて、
今買わないと後悔するという結論に至り、
お店に舞い戻り買ってしまった。
大事にするし、一生懸命働きます。

4.
「誰も知らない」を久々に観た。いつ観ても素晴らしい映画だ。普通に生きてこれたこと、当たり前に感謝するし、子どもを産むという選択をすることに対しての責任の重さを考える。

10.
最後に会った日のことを思い出す。
私はあの日、同情しなくて本当によかったと思う。
あれくらいのお金払わせて当然だし、
一緒にいた時間に負った傷はそんなレベルではなかったから。
ざまあみろと思う。今になってもそう思う。
あんなに苦しかったことはない。
もうあんな気持ちになるのは二度とごめんだ。
今でもたまにこうやって思い出す。
ちょうど1年くらいが経つ。
1年前の自分に言ってあげたい。
今を見せてあげたい。
大丈夫、幸せになれるよ。
大丈夫、ちゃんとそこから抜け出せるよ。

12.
今、わたしはどこにも向かっていないのではないか。今の自分が「ゼロ」だとしたらここから何をやっていく?過去の自分に捉われないで生きていけるとしたら、まっさらだったら、ここからどういう自分になる?

18.
写真集の紙を選んで決めて、タイトルの文字を最終微調整して、ああ、わたし着実にちゃんとやれてるってやっと思えた。数年前、本当に何もできなかった。全然まだまだだけど、それでもこうして書籍を一冊作れるようになったんだ。
それに、まだ出来ないことがたくさんあって、勉強不足だ、もっと頑張らねばと思えることが嬉しい。

22.
誰かに必要とされてるかも!と思えることは生きる上でかなり必要な感情で、私にこれを話したい、とか、そろそろ会いたいな、とか、そうやって思ってくれる人が何人かいることはすごく幸せなことで、今までの自分が着実に作ってきた人間関係で、失いたくないな、ずっとあるといいな、そしてこれからも作っていきたいな。そう思う。

25.
自然の感覚を思い出したいな。
子供の頃に茶道や水泳を習ったこと、
10年以上黙々と書道を習い続けたこと、
両親に、川や海や山に
たくさん連れて行ってもらったこと、
隣の空き地で泥だらけで遊んだこと、
たくさんの動物を飼ったこと。
全部わたしが通れた道なんだ。
今は簡単にできないことだけど、
その世界を知れたことは自分にとって
宝なのだなと今は思える。


つづく

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