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猫と私 #4 僕らの居場所は言わにゃいで(前編)

コロナが猛威を振るう少し前、私はウェブメディアで連載を持たせていただいたことがある。タイトルは「#僕らの居場所は言わにゃいで」だ。

タイトルに#(シャープ)がついている事からお分かりいただけるかと思うが、「#僕らの居場所は言わにゃいで」は、SNSで用いられているハッシュタグであり2024年2月現在、各種のSNSで50万件ちょっとの投稿が行われている。めちゃくちゃ多いかと言われればそんなことはないが、猫好きの人にはある程度認知されるレベル。
そんな「#僕らの居場所は言わにゃいで」には、以下のようなメッセージが込められている。

・外猫の写真を撮る時には、カメラやスマホの位置情報をオフにしよう
 (そして場所が推察できるオブジェクトを写真に入れないようにしよう)
・外猫の写真をSNSにアップするときは、具体的な撮影場所の明記を避けよう

SNSに投稿された外猫の写真に具体的な地名や、位置情報が含まれていた場合、それを参照した人が猫好きなら「よし、会いに行ってみよう」とポジティブな気持ちを抱くかもしれない。しかし参照する人が、動物を傷つけることに悦びを感じる種類の人間や、何かしらの事情で猫を捨てようと思っている人だった場合はどんな感情を抱くのか、想像してみてほしい。

「こんなに人馴れしてるなら、簡単に傷つけることができそうだ」
「健康そうだから面倒見てくれる人がいるのだろう。一匹くらい捨てても…」

傷つけてもダメだし、捨ててもダメである。
倫理的にだけではなく、法的にも禁止されている。

ただ、何かを攻撃したり、あるいは自身の責任を放棄している人は、その時点で倫理観や法令遵守を期待するのが難しく、正論を説いて聞かせたところで意味がないだろう。であれば、それらが参照するであろうインターネット上に溢れた外猫の写真に付されている「〇〇市の〇〇町で出会ったにゃんこ♫」とかGPSから取得された精緻な位置情報など、外猫にたどり着ける情報を制御することで、よからぬことを考える人間を路頭に迷わせる方が効率が良いのではないか。
そのような考えの元、このハッシュタグは猫ブームが加熱し始めた2016年の2月に始まり、私はこのハッシュタグを世に出した者のひとり、もっと言えば主導した中心人物であった。

まあ、中心人物といっても別に特別なことはなく、自身のInstagramでそれ以前から「場所に関する記載はリスクがあるよね」と訴え続けていたところ、同じ考えの方が集ってくるようになり、ある出来事をキッカケに「もっと効率的にこのリスクを伝える方法はないものか」と意見交換する中で、ハッシュタグというツールを選び、どんなハッシュタグにするか意見を集め「じゃあ皆さん、これから#僕らの居場所は言わにゃいで を使いましょう!」と言い出したに過ぎない。

ただ、言い出しっぺということで、たびたびウェブメディアで紹介され、故に連載を持つこともあったというだけの話だが、別にアイデア自慢をしたいわけではない。このタグを作ろうと思ったキッカケが原因で、私は大切な家族を失うことになる。

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