【今季一淡泊な消化試合】Arsenalマッチレビュー@CLGS第6節vsPSV(A)/23.12.13
試合前トピックス
・スミスロウ全体練習復帰、直近の悪い雰囲気を拭う救世主となれるか
マッチレポート
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試合トピックス
PSV優勢に左サイドの機能不全
アーセナルは1位通過、PSVも裏のRCランスvsセビージャでRCランスが大量得点での勝利を挙げない限り2位通過でそれぞれグループステージ突破がほぼ確定している状況。欧州大会のグループステージ最終節では決して珍しい状況ではないが、どこか消化試合感の拭えない試合前の雰囲気であった。
勝ち点12ptと2位に4pt差を付け圧倒しているアーセナルはアルテタにしてはかなり珍しい大胆なターンオーバーを施す。ホワイトや両WGにジェズス、中盤の核ライスやウーデゴールといった特に疲労の蓄積が不安視されるポジションを順当に変え、セドリック&エルネニーが超久々に先発しラムズデールがCLデビュー。出場が期待されるアカデミー組はベンチで出番を待つ格好。対するPSVはロサーノがサスペンション、ベラコチャプやラングといった選手も怪我で離脱と共に台所事情の厳しさが垣間見える選出となった。
試合序盤はホームPSVが優勢。攻撃では前線から降りてくる選手のポストを2列目が受け取る準備が出来ており、サイドに散らし縦に速い攻撃から開始5分で既に決定機を作られる。このシーンはサリバとガブリエルの神クリアで難を逃れるも、控え組の練度不足からかその後も中央に位置する選手を捕まえきれず、前進のきっかけ作りを継続してやられていた印象が強かった。
また右WGバカヨコの強烈な技術力と彼を中心としたスピーディなパスワークもアーセナルにとっては悩みの種。左SBに入ったキヴィオルは前後半通して突破されることもしばしばあり、ポケットを取られたところからの鋭く多様なクロスでチャンスを作られた。
守備時もアーセナルが突破しなくてはいけない壁として立ちはだかる。2トップがボールホルダーのCBへのプレスとアンカージョルジーニョのカバーシャドウ役を代わる代わる行い、SHがSBを、CHは中央に降り受けに来るエンケティアやハヴァーツといった前線を咎める整備された形でアーセナルの前進を阻む形。ただここに関しては序盤こそ窒息させられていたものの、30分が経過する頃にはピッチ中央での細かなワンツーで視線とマークをかき集めてからの展開が可能になり、エルネニーとジョルジーニョのダブルピボット的立ち位置も見られた。
こうして試合が落ち着くと両者の敵陣への侵入方法は確立していく。前節はあまり目立たなかったネルソンはグループステージでは流石といったところか、持ち前のアジリティとドリブル力で低い位置からでも縦への推進力を発揮。エンケティアも含めて球離れも良いので程よくテンポアップした攻撃が展開される。
ひとつ気になったのがアーセナル左サイドの立ち位置において、キヴィオルがあまり押し上げなかった事。こうなると、ポジションチェンジで相手のマーク基準をずらす為にトロサールがハーフスペース、ハヴァーツが外へ流れるといった役割分担になってしまい、本来クロスをボックスで待っていて欲しいハヴァーツがゴールから離れてしまうという事態が散見された。またゴール方向への細かなドリブルと高精度のクロスを持つトロサールにプレースペースを与える意味でもキヴィオルの助力は必要だったように思う。
リードの確立だけは怠らない姿勢と放置された課題
そんな左サイドと比較するとよりシンプルにネルソンの煌めきが見られていた右サイドから先制点が生まれる。42分、ネルソンの持ち運びに合わせ幅を取ったセドリックがパス交換、中央へネルソンがラストパスを送りエンケティアがポストギリギリの良いコースへ流し込んでゴールをゲット。若手2人のテクニックは勿論、エルネニー以上に出場しておらず試合勘の鈍るセドリックが適度なスピード・距離感でネルソンをサポートしてくれたのも見逃せないポイント。ゴールへの最短ルートをネルソンがカウンターの旗手として狙い撃ちした先制点となった。
直後逆にカウンター局面からバカヨコが切り込んでの強烈なシュートを放ってくるも、ここはラムズデールのビッグセーブ。ラヤとのスタメン争いにおいて大きなプレッシャーを感じ続けているだろうが流石ラムズデールといったプレーでチームのピンチを救う。どこか締まらず少々押される塩漬けされた試合でも、きっちり先制し守護神の活躍も相まってリードの確立だけは怠らなかった前半。省エネで良いアルテタにとってはある意味狙い通りの展開だっただろう。
両チーム交代なしのハーフタイムが明け後半。このまま試合を停滞させ無難に乗り切りたいところだったが、50分、GKからボールを受け取りに来た右IHティルマンに中央で持ち運ばれ一気に前線へ展開、サリバのインターセプトを抜けたボールはCFペピに渡り、追い越してきた左WGフェルテセンが受け取ってギリギリのコースを打ち抜き見事なゴールを挙げる。
この一連の流れは前半から見られたアーセナルの守備課題がそのまま浮き彫りになった結果生まれた失点だったように思う。中央に受けに来る選手を制しきれず自由にさせ、そこから撤退が間に合う前にペピとフェルテセンがそのままスピードに乗って攻撃を完結。やはり守備連携やマーク受け渡しの連動不足なのだろうか、PSVにとっては攻撃局面ではそれ程不自由とは感じなかっただろう。それにプラスして、サリバやガブリエルが前半からロングパスを前に出て処理する際に距離を見誤り入れ替わられピンチになるシーンが何度もあったのが痛かった。
こうしたサリバのミスを鑑みつつ、もも裏を痛めピッチに座り込んだエルネニーと同点に追いつかれた状況からアルテタは62分に一挙3選手の交代をを決行する。ウーデゴールとホワイトを順に投入は追加点を狙う為だろうが、サリバがライスに代わりそのままCBに入ったのは驚きだった。
だがその後も試合の主導権を取り戻せたという訳ではなく、どちらかというとPSV優勢の展開が続く。一人ネルソンだけはダイアゴナルランで陣形を切り裂き、後の2回目の交代後IHのような立ち位置に入ってからもその推進力を発揮し続けるなど気を吐いていたが、キヴィオルやエンケティアの目につく守備強度も重なりPSVはチーム全体で襲い掛かり定期的に決定機を作られる。連続しての治療で試合の流れが止まったところから食らった速攻はライスにディフレクトするという超絶難易度の処理になったが、ラムズデールがまたもビッグセーブで阻止してくれたシーンには本当に救われた。もし決まっていたらそのままずるずると瓦解していく可能性も大いにあったからだ。
最終盤にはジェズスと待望のスミスロウの出場もあったが残り数分程度の出場機会では結果を残せず、アーセナルが押し込む時間も前半と比較してそこまで増えない。最後の最後まで消化試合感が抜けない雰囲気で、緩やかにオープンな展開のまま試合は終了していった。
ゲーム総評
今季のアーセナルの試合において正直一番書くことのない試合といっても過言ではない、淡泊な味付けのゲームとなった今節。順位状況的に致し方ない部分もあるが、PSV側はホームサポーターの熱い応援の後押しこそあったものの死に物狂いで勝ちに来ているといった印象はなく、対するアーセナルも強いて言うなら「ネルソンが良かった」というコメントくらいで所謂塩試合というやつである。
ただ個人的は一つ。アルテタのスタメン選出に対して行った交代策がどこか食い違っているような感覚を感じてしまった。勝っても負けてもいいといような大胆ターンオーバーを行った割には、追いつかれるとすぐ主力組を大量投入。その影響でライスはオープンな展開の中負荷のかかるCBポジションで少なくない疲労が溜まっただろうし、どうも腑に落ちないカードの切り方だった。それに加え、こういった場面でないとアカデミー組の出場機会は訪れないにもかかわらずベンチ入りのみ。若手からするとこういう時に出してもらえないと自分のキャリアへの不安からクラブへの不信感に繋がってしまう。試合前会見では帯同するアカデミー組を称えるコメントをしていたアルテタが自身の発言と矛盾する采配を行った点のみ、私は気になるポイントであった。
それでもアーセナルは無事CLグループステージを首位通過。バルセロナやバイエルンといった古参グーナーにとってはトラウマもののベスト16はとりあえず避けられた。12月も中旬。週2ペースで次々に訪れる試合日程を可能な限り上手く捌いていって欲しい所である。
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