見出し画像

【ベスト16の壁再び?】Arsenalマッチレビュー@CLベスト16第1節vsPorto(A)/24.2.22


マッチレポート

試合結果

POR 1-0 ARS
90+4' ガレーノ

https://www.uefa.com/uefachampionsleague/

ハイライト映像

スターティングイレブン


 3試合連続同じスタメンを採用のアーセナル。プレミアリーグでの好調をそのままに、7季ぶりチャンピオンズリーグ、鬼門のベスト16に挑む。

試合トピックス

ポルトのねこだましと停滞する保持

 アーセナルにとって大の苦手とするCLベスト16第一節。そもそもCL自体7季ぶりの出場だというのに、その前の常連時代ですらも決勝トーナメントの初戦にめっぽう弱いという始末である。なんとベスト16を最後に突破したのは09/10シーズンにまで遡る。そして、ヴェンゲル長期政権が終わり紆余曲折を経てアルテタの元成熟した新生アーセナルも、一筋縄ではいかない雰囲気の漂う立ち上がりとなった。

 ボールを保持してゲームに入るアーセナルに対し、ポルトガルの名門ポルトは4-4-2のミドルサードにセットするハイライン守備を展開。好調の一番の要因ともいえるホワイト×ライスの2CHケアとサイドへのダブルチェックを両立した形である。試合序盤ウーデゴールが降りてビルドの安定化を探るシーンでも、外に開くホワイトは置いておきウーデゴールとライスにプレッシャーをかけるという意味では、こちらの多少の調整に動じず徹底した守備隊形と言えるだろう。

 更に少しでも取れると判断した際の決め打ちに近いスプリントプレスは立ち上がりのアーセナルを苦しめる。2分というあまりに早い時間帯で、ビルドミスを挽回しようと遅れてボールに飛び込んだライスにカードが出されたのはかなり痛かった。プレミアリーグにはあまり居ない独特のテンポ感でプレススピードを操るポルト。かつ久しぶりのCLという事もあり選手の間に緊張感があった事は否めないだろう。

 しかしアーセナルもただ甘んじてプレスを受けていた訳ではない。10分も経つ頃には、トロサールが降りたり、大きなサイドチェンジを駆使したりでハイプレスを脱出し、そこからはほとんどの時間アーセナルが保持を行った。

 だがポゼッションが効果的だったかと言われるとかなり微妙だったと言わざるを得ない。まず後方でのパス回しに対して飛び出すという選択肢を持っていたのが相手のCFとOMFの2人である。それ以外の8人は恐らくブロックを大きく崩さない事が最優先で、パスコースの封鎖を意識していた。

 すると、中央でライスやホワイトが持った際ウーデゴールに楔を差したり、後方で剥がして生まれた時間とスペースをサカやマルティネッリに直接届ける事が出来なくなる。また、守備→ショートカウンターの場面でも、繋ぎで良いイメージを持てないアーセナルはチャンスを生かせずゴールに迫る事が出来なかった。

 こうなるとポルトは一定の手応えを感じ始める。基本的に耐えつつ、22分のようにロングカウンターを発動し決定機を作ればよい。このシーンのガレーノの至近距離シュート2連発がポスト→枠外と逸れてくれたのはアーセナルにとって幸運だった。

 保持で相手の綻びを探るアーセナルと、奪取の瞬間をスイッチにコンセイソンを中心とした馬力あるカウンターを仕掛けたいポルト。アーセナルファンの筆者から見てもプラン通りのゲーム運びをしていたのはポルトの方だっただろう。

ファールで流れを更に堰き止められる

 保持では望む結果の生まれないアーセナルだが、サカの居る右サイドから散発的にセットプレーを生み出し最低限の決定機は作り続ける。前半の時点で右コーナーは5回と、1点くらいなら生まれそうだという空気はあった。

 しかしここでもポルトが強かだったのが、少し大げさに見えるレベルのファールアピールである。高さとデザイン性が共存したアーセナルのセットプレー戦術に対し、選手を捕まえきれないと判断した際すぐに倒れこんでファールをもぎ取り勢いを殺してきたのだ。

 そしてこれはアーセナルファン目線のバイアスもあると思うが、ポルトはセットプレーに限らずオープンプレーの中でも審判を味方に付けファールを沢山貰う事に成功していた。五分のボールへのプレーはほとんど全て相手フリーキックになり、少しでも体を当てるとこれまた相手ボール。プレミアリーグのフィジカルレベルに慣れてしまい適応が出来なかったアーセナルが悪いのか、演技力の高く狡猾だったポルトが悪いのか。何れにせよ保持でも上手くいかないアーセナルはファール連発によって頻繁にゲームを止められ、更なる停滞へと陥っていった。

 もう一つ付け加えると、コーナーの時のホワイトの動きには次の一手が必要なのではなかろうか。前節バーンリー戦に続いてキーパーへマークに付けず完全にブロックされており、そうなるとファーに高い選手を並べそこを狙うという対策が比較的容易な選択肢しか無かったのが非常に痛かった。

巻き込まれるトランジション合戦、痛恨の失点

 流れの中からもセットプレーからも得点の生まれない前半が明け、後半に入るとポルトペースは更に加速する。決定機こそ作れないものの落ち着いていた保持が、得点の匂いがしない焦りからか引っ掛けるようになり、オープンな展開に移り変わっていく。そしてトランジション合戦になるとポルトの決定機はより生まれるようになり、すんでのところでサリバ、ライスらが掻き出すような時間帯が続く。

 だが正直なところ、国外アウェイ戦で週末にはニューカッスル戦が控えるアーセナルにとってはこの試合はドローでも及第点である。前半よりかはマルティネッリにもボールが渡ってシンプルな縦突破から敵陣に侵入するシーンも作れるようになり、後方でリスクを負って得点を狙いに行くというよりは繋ぎもそこそこに前でのプレーが増えるように。だが時計の針を進めるという共通認識が終盤にかけて生まれてきたのも、トランジション合戦を招く要因となっていたように思う。

 だがその方針が最後の最後に牙をむくことになってしまう。94分、カウンターの応酬の中、低い位置からサカへ向けたマルティネッリのロングフィードをかっさらわれ、ガレーノのミドルで痛恨の失点を喫してしまう。ドローでも良い気持ちと最後に1点でもという気持ちがマルティネッリの中でせめぎ合った結果運の悪い方に転がってしまった感は否めず、ポルトに最低限の結果を献上する形となってしまった。


あとがき

 特に前半は安定した保持からセットプレー主体でアウェイを意識した戦い方を遂行するも、頼みのCKは決まらず、ポゼッションからの得点の匂いはほぼ無し、そして0-0でも良しという雰囲気の漂う中迎えた後半ATに少し焦った所を不運にも決められてしまい敗戦。非常に煮え切らない、後味の悪い試合となってしまった。アーセナルの枠内シュート数は0だったそうだ。

 だが個人的にそこまで悲観する必要はないと思う。今節のスタメンはハヴァーツ以外はCLの経験が無く、次節はグループステージで圧倒的強さを誇ってきたホームでの試合である。インパクターとして送り出せない層の薄いベンチとこれ程までに経験値が必要な試合にジェズス、ジンチェンコ、トーマスらが何故揃って不在なんだという不満はあるが、3週間の内に怪我人も多く戻ってくる。とにかく引きずらないことが一番大事である。ホームで落ち着いて得点を重ね、ベスト16の壁を突破してくれる事を願っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?