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【CL史上初の前半5者5得点】Arsenalマッチレビュー@CLGS第5節vsLens(H)/23.11.30



試合前トピックス

・今節勝てばグループリーグ首位通過確定


マッチレポート

試合結果

ARS 6-0 LEN
13' ハヴァーツ(ジェズス)
21' ジェズス(サカ)
23' サカ
27' マルティネッリ(冨安)
45'+1 ウーデゴール(冨安)
86' ジョルジーニョ(pen)

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スターティングイレブン


試合トピックス

やりたい放題の快進撃

 長期離脱組に加え出場停止のヴィエイラも軽度な怪我が確認されアカデミーからルイススケリー君とヌワネリ君がベンチ入り。それでも完全復帰していないホワイトの代わりには絶好調の冨安を右SB起用し、前線はマルティネッリ-ジェズス-サカにハヴァーツ-ライス-ウーデゴールの逆三角形と、現状のアーセナルにおいて最強と呼べる布陣を敷く。

 さて前回対戦時辛酸を舐めさせられた、リーグアンでも6位につける曲者RCランスはアウェイという事もあり果敢なプレスは控え守備時5-4-1セットが基本の迎え撃つスタイルを取る。だが流石にこちらのCBが持ち運びハーフウェーライン付近まで来ると流石に奪う姿勢を見せ、シャドーの2人もそれぞれ絞るジンチェンコと冨安を一定以上は咎める形といった感じに。

 勝率が低い試合では低く迎撃し耐え後半のセットプレーで一発、というのがフットボールの定石。今回のRCランスも似たような作戦を練ってきたであろうが、13分という序盤にアーセナルは早速先制する。スタートから攻守両局面で素晴らしい活躍を見せていた冨安のアーリークロスをジェズスが競り合いで残しハヴァーツが詰めて得点をゲット。遂に開花したかハヴァーツといった嗅覚を見せるポジショニングの功であった。

 早々に先制点を挙げたこともありアーセナルは攻撃のダイナミックさが加速。CLのマッチレビューでは何度か触れたことがあるが、プレミアリーグに比べ両WGへの対策が甘いこともありプレースペースを与えられたサカとマルティネッリは解き放たれたかのように躍動。更に2人が暴れることで陣形がかき乱され、右ならウーデゴールや冨安、左はハヴァーツやジンチェンコといった相棒たちも解放される。結果両サイドの連携は活性化しサイド攻撃が主となってRCランスの敵陣を切り裂き続ける。

 2点目もそんなサイドが起点となって生まれたもの。連携を気にするあまり完全には寄せに来ないRCランスの守備陣の様子を確認し大外から何人も引き連れつつ単独でバイタルまでサカが切り込み、ルーズになったボールをジェズスが拾って細かなタッチでフェイントを織り交ぜつつ流し込む。ジェズスはCL4戦4得点と大舞台での勝負強さをまたも見せつけた。

 遅攻で得点を奪った数分後に今度はラヤのロングボールから得点。マルティネッリの落としを拾ったハヴァーツがリターン。数人のプレスバックを受けるも間を縫い放ったシュートはGKに阻まれるが詰めていたサカが流し込み得点。4点目ではウーデゴールの嵌めパスをセーフティなクリアに逃げたかのように見えた冨安のキックはマルティネッリへの超遠距離・超高精度なサイドチェンジに。そのまま対面のディフェンダーのタイミングを外す縫ったシュートで今度こそ自ら得点を獲得する。オーバメヤンを彷彿とさせるペナ角45°ゾーンからのシュート精度が素晴らしかったのは勿論のこと、安定感だけでなく決定的なアシストを残す冨安の万能ぶりもまた見逃すことの出来ないポイントだろう。

 なんとここまで30分足らず。27分間で4得点の大爆発は、ブレントフォード戦でじりじりとした試合展開をした腹いせからか、はたまた前回対戦時に今季初黒星を付けられたRCランスへの仕返しからくるものなのか。冗談はさておき、いずれにしろここまでスコアを広げられると最早RCランスの作戦は完全に瓦解。2、3得点目のあたりからプレスを強めては来ていたが、それはジンチェンコやライスといったプレス耐性の高い選手にとっては逆に餌食。ボールを隠すように持ちケアの薄いサイドへ散らしても良し、間延びした中盤へ差しても良しと伸び伸びとプレー。

 また個人的にはハヴァーツの動きもかなり良かったと思う。今までと比較し決定的に違ったのはビルド時のいなす動き。彼自身身長もあり競り合いが強い部類に入るのは勿論だが、今節は背負って受ける際に奪われずタメを作って他選手へ時間とスペースを供給する動きが特に前半は抜群に効いていた。それとラヤ。どうしても前節のラムズデールと比較しての評価になってしまうが、ハイボール処理とキック選択の精度は特に素晴らしい。安定感がありゴールマウスが脅かされるシーンが少なかったこともあって手放しで安心して見ていられた。

 前半のATで生まれた5点目はロングカウンターからウーデゴール。今節のアーセナルは様々な形から様々な選手がゴールを決めとても良かったなぁ。ボックス内で跳ね返したところからピッチの半分以上の距離をサカが単独でラインの引き上げ。そこから抜群のタイミングでオーバラップしてきた冨安にボールが渡ると、ゴール前で待ち構えていたジェズスをフェイクに使い遅れて到着したウーデゴールへふんわりクロスのアシストを上げ、ダイレクトで合わせたキャプテンがダメ押しの5点目を獲得。ここまで目立った活躍が無く、代表ウィーク前後で奮わなかったウーデゴールもチームの好調の流れから得点をゲットする。

 前半大暴れのアーセナルは、CLにおいて前半のみで5点のリードを確立した史上初のイングランドクラブ、そして異なる5人の選手が前半で得点を決めたCL史上初のクラブという名誉ある記録を樹立し、100点満点の前半戦を締めくくる。

安全第一、安全第二、安全第三

 後半のアーセナルは前半と打って変わって安全運転に終始する。前述のアカデミー組が見られるかと期待したがお堅いボスアルテタはまずフルバックにお役御免の通達。コンディションを取り戻したいホワイトと、久々45分間出場のキヴィオルを投入する。5点のリードがあればそりゃそうかという感じだが、二桁得点といった大爆発通り越して超新星コースは狙わずあくまで試合を殺す方向にシフトチェンジした。

 今節負けるとGS敗退が決まってしまうRCランスは、既に試合はほぼ決まってしまっているが一矢報おうと前半よりも保持の時間を確保する。だがこれもアーセナル側がボールを持つことにこだわりを捨てたことによる部分が大きく、冷静にリトリートで対処しつつ機を見て前に出る今季の省エネスタイルで淡々と時計の針を進める。

 次いで66分にサカ→ネルソン、75分にライス→ジョルジーニョ、82分にジェズス→エンケティアと至極妥当性のある交代カードを逐次切りつつ、試合の落としどころを見つけに鎮静化させる試合運びを行っていく。

 点差を縮めたいRCランスの攻撃をいなしきりほとんどの局面においてシュートまで持ち込ませず上手く逃げ切っていた中、終盤の86分にはご褒美のPKを獲得。最後までパワフルにエリア内への侵入を企図していたマルティネッリがスローインを収める流れの中でエルボーを食らいPKの判定。ウーデゴールにキッカーを譲られたジョルジーニョが久々に職人芸を見せ得点。試合終了間際にはワイの至近距離シュートとこの試合1のRCランス側の決定機がもたらされるもガブリエルのシュートブロックでクリーンシートを死守。最後までかっちりと締め切ったアーセナルはこれにて最終節を残しグループステージ首位通過を確定。ミッション完了である。


ゲーム総評

 前半のうちに圧倒的な火力で試合を決定づけ、後半は主力を休ませつつ悠々と逃げ切ることに成功した今節。先行逃げ切りはいつぶりだろうというくらいに久々で、昨季のアーセナルを思い出したのと同時にライスやハヴァーツなど+αの戦力が合わさるとその火力も更に底上げされるのだなと今夏の移籍市場での功績にまで思いを張り巡らせた。

 これでアーセナルは首位通過が確定で最終節は消化試合。かといってアルテタが抜くような監督ではないのは最早わかり切っているのでそこそこのガチメンで臨むのだろう。それでも今節出場機会に恵まれなかったアカデミー組や、トロサールやヴィエイラの活躍なんかも見たい。

 またプレミアリーグもここから一か月、クリスマス~年末年始に向けて試合数が激増し苛烈な戦いになっていく。出来る限り怪我人を出さない為にも抜けるときは抜いて欲しい。CL/PL共に首位というアドバンテージを最大限生かすような采配をアルテタに期待するとともに、ハヴァーツやウーデゴールらの復調も継続されることを願う。


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