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【14年ぶりのベスト8進出!】Arsenalマッチレビュー@CLベスト16vsPorto(H)/24.3.13



マッチレポート

試合結果

ARS 1-0 POR
pen 4-2
41' トロサール(ウーデゴール)

https://www.sofascore.com/

ハイライト映像

スターティングイレブン


 依然離脱中のマルティネッリに代わりトロサールが左WGの先発出場、キヴィオル、ジョルジーニョもこの大一番で引き続き出場と現在のベストメンバーを揃えたアーセナル。1stlegでは痛恨の失点から敗北を喫したが、ホームで14年振りとなる悲願のベスト8へ辿り着けるか。

試合トピックス

ポルトの戦い方に苦戦も結果を出すトロサール

 エミレーツスタジアムにポルトを迎えて行われたこの試合、0-1ビハインドとはいえ勝ち越せると思われたがポルトはアウェイでも自分達のサッカーを展開する。

 保持の基本的なプランは後方でのタメ→陣地回復のサイクルを回す事。CBペペとオタヴィオがペナルティエリア角まで開きGKとのパスコースを形成。これによりウーデゴールとハヴァーツのプレスが到達するまでに余裕が生まれるのでタメを作ることができ、その間にロングボールを主体とした長めの球を使い、セカンドを拾うなりスローインに逃げたりとこちらにハイプレスの成功感覚を掴ませないいなし方を行ってきた。

 対するアーセナルはサカが独力で何度かサイドを突破したりライス-トロサール-キヴィオルのトライアングルで一度左奥深くまで侵入出来たりと散発的に良いシーンがあったが、ポルトの4-5-1守備ブロックのライン間がタイトで楔を差し込めず、前述のハイプレスの手応えの無さもあり苦戦していた印象は否めなかった。

 それでもここ最近の好調の一端となっているセットプレーは何度か獲得。ゴールまであと僅かの瞬間もあった。

 ポルト側も中盤がボールを持った状態を作れるものの、アーセナルは4バックを中心にポルトの前線に前向きでボールを渡させないよう奮闘。サリバ-ガブリエル-ホワイトは勿論のこと、キヴィオルはCLベスト16という大舞台でも対面やかけっこのシーンで前節活躍していたコンセイソンを相手に互角以上に戦い殆どチャンスを作らせていなかったのが素晴らしかった。

 こうして互いに良い所と悪い所が見え隠れする試合はスコアレスのまま推移していったが、41分、突如個の力で手繰り寄せた得点が生まれる。後方からハヴァーツへのフィードこぼれをウーデゴールが回収、ドリブルでボールを晒している間にトロサールが大外からポケットへ走り込みそこへ3人を置き去りにする絶妙なスルーパス、最小限のトラップを挟み右足で振り抜いたシュートがゴールへ。

 ピッチ中央でショートパスの前進が難しくサカやトロサールの単独での押し上げが望まれる展開の中で、ある種ポルトを踏襲したような長い球での前進×ハヴァーツという試合を通して空中戦を制していたターゲットを掛け合わせて得点のきっかけを作った機転の良さ、そして前半1の決定機を取りこぼさずキッチリ決めきったトロサールの勝負強さが光るゴールに。直前にサリバにイエローが出て不穏な空気が流れていた事、そして結果としてこれが決勝点になった事を踏まえればあまりに大きすぎる得点となった。

 こうしてアグリゲートスコアで試合を振り出しに戻し、改めてホームの地の利を背に残り45分を戦うことに。

停滞と判定にあえぐ後半戦

 エンド代わって後半、この45分は前半の戦術がメインな試合とは少し異なり、ポルトの狡猾さが前面に出た時間となった。

 ポルトはビッググラブではないもののCLにはコンスタントに出場しているチーム。つまりどう笛が吹かれるか分かっているためか、グレーなプレーは殆どお咎め無く逆にアフタータックルを連発してもカードを貰うどころかファール判定すら無し、アーセナルの選手を過剰な競り合いで痛めつけるも偏りを感じるジャッジによって守られる始末。

 後半中頃には抜け出したボールに対しハヴァーツがGK、CBと3人で潰れウーデゴールが無人のゴールに押し込んでセレブレーションまでするも、謎の一呼吸を置いてからファール判定。不可解な判定が殆どで、不信感を抱きながらも前半同様の鍔迫り合いのような試合展開であった。

 勝ち切りたい終盤戦にはジョルジーニョに代えジェズスでライスとハヴァーツが一列ずつ降りる比較的攻撃的な交代を行う。前線がある程度活性化されたものの決定機をあと一歩のところで決められず、ウーデゴールのキレキレパス&守備貢献を上手く活かすことが出来なかった。

 結局得点は両者生まれず延長戦突入。交代で入ったのはジンチェンコとエンケティアでジェズスが左WGへ。元シティ組でCL顔馴染みの2人を左に固めるも、ジンチェンコが上手く試合に入りきれていなかったように思う。そうなるとやはり攻守に渡ってタスクを全うしそつなくこなせていたキヴィオルは本当によくやってくれたと再確認出来る。そして勝敗の行方はPK戦に委ねられることに。

ラヤ!ラヤ!ラヤ!!!!!

 勝負は運命のPK戦。120分守備で活躍していた41歳ペペがPK戦直前のエンド決めでにこやかに笑っているのを見て驚愕しつつ、アーセナルサポーターが待ち構える方のゴールへ両チーム歩を進めることに。

 結果から述べると、アーセナルは4者全員がゴールをマーク。そしてラヤが殊勲の2セーブで5番手に回す前に勝負を決めてくれた。

 まず褒めたいのはウーデゴール。14年ぶりのベスト8がかかった重要過ぎる試合での重圧、120分プレスの旗手&攻撃の要として走り回った疲労がある中で一番手を務めしっかり逆方向へ撃ち抜いたその能力と度胸は称賛に値する。公式MOTMはラヤだが、個人的MOTMはウーデゴール、試合を通し押される時間帯であっても彼だけは光り続けていた。

 2番手を務めたハヴァーツは飄々とした振る舞い通りきっちりとPKを決める。キャリアで任された全PKを外したことのない男は冷静に決めきってくれた。3番手サカもEURO決勝のPK戦から本当に大きく成長したなと。重圧をものともしない立ち姿、エースとして当たり前かのように勝ち取ったゴールは素晴らしかった。4番手ライスはPKを見たのは初めてだったが不思議とドキドキは一番小さかった(笑)。彼ならやってくれるでしょうという謎の安心感通り、4者連続ゴールでポルトに大きくプレッシャーを与えた。

 そして何といってもラヤ。本当に、本当によくやってくれた。ポルト4本目は言わずもがな読み切ったお手本通りのファインセーブだったが、ポストに当たり外れた2本目も良く見ると指先で少し逸らしているように見える。

 1stGKはどっちなんだ問題で未だにラヤorラムズデール論争が絶えない今季のアーセナル。両者魅力たっぷりで筆者もラムズデールが恋しくなる時はあるが、この試合で1stGKとして堂々と名乗りを上げたと言って良いのではないだろうか。PK戦に限らず試合中も決定機を防いでくれたラヤは足元の技術とハイボールやクロス処理、的確なビルドアップ能力を合わせ、この大一番でも全方面に渡って隙の無いパフォーマンスを見せてくれた。


ゲーム総評

 グーナーをやっていて本当に良かった。今はただその感情だけ。他チームからすると「たかがベスト8に進出しただけで」と思われるかもしれないが、アーセナルは14年もの間ベスト8に到達したことがなかった。しかも筆者がファンになった7年程前からはそのCLへの出場すら叶わずクラブ史に残るレベルで低迷していた。

 そんなチームが悲願のCL出場を果たし、あまつさえ決勝トーナメントを勝ち進んでいるのだ。これを喜ばずして何を喜ぶ???アルテタの下、若手を中心に据え戦術とクラブのスピリットを浸透させ再建された名門アーセナルは、これまで見られなかった新しい景色を今まさにサポーターに届けてくれている最中である。

 今はただありがとうという気持ちしかない。本当にありがとう。リーグも首位と、退任ブーストのかかるクロップリヴァプールと世界最強と名高いペップシティを相手に三つ巴の優勝争いを繰り広げている真っ只中である。リーグとカップ戦の両輪は難しいものではあるが、ここまで来たら最後まで全力でやり切って、今のアーセナルが出せる最高到達点をファンとして一緒に見届けたい。シーズン終了までの残り数か月をアーセナルと歩める事が嬉しくてたまらない。

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