古今亭志ん朝



また夢の話です

わたしにはいくつかの夢があります
その夢の一つが「植木鉢業界の古今亭志ん朝になること」でした
落語が好きな方しか理解できないとは思いますが、とても大きすぎる夢であることは確かです

志ん朝が亡くなって20年、彼のことを知ったのはほんの数年前ですがわたしにとってはこの上なく大きな存在です
自分の生涯に後悔は一つもありませんでしたが、彼を知り初めて後悔というものを経験できました
生前に一度でいいからお会いしたかった
夢でもいいから会いたいと潜在意識で思っていたのでしょうか
先日夢で初めて、憧れの志ん朝にお会いすることができました


場所はどこか地方の駅ビルの
地下のレストラン街
列車が来るまで時間を潰している師匠のところにご挨拶をさせていただけるということになりました

ビール片手に煙草をふかし、周囲の人達にとても大きな笑顔を振りまく師匠がそこにいました

「焼き物屋の田島と申します
わたしは植木鉢を作っているのですが
植木鉢業界の古今亭志ん朝になるのが私の夢です
師匠にお会いできて本当に光栄です」

と言うと
志ん朝は急に厳しい顔つきになり、眉間に皺を寄せあからさまに私を睨みつけました

最も尊敬する人を怒らせてしまったと、動揺を隠せず即座に謝ろうとした瞬間
厳しい顔つきから一変 
にかっとまた優しい大きな笑顔に戻り
ビールを私についでくれました

そこで目を覚ましました


寝ぼけまなこで、たとえ夢でも志ん朝に会えた嬉しさと
あの睨みにはどういう意味があったんだろうと
嬉しいような悔しいような妙な気持ちでぼーっとしていました

でも徐々に目が覚めてくるとハッとしました


志ん朝は俺になりたいなんて言うなと
言いたかったんじゃないかと思います

俺になりたいなんて言わないで
お前はお前として、どこまでもお前らしく
芸に精進しなさいと

背中を押してくれたような気がしています


夢の中の
向日葵のように大きい、志ん朝の笑顔が忘れられません

夢でもいいから会えてよかった
死ぬほど嬉しいです

もう志ん朝になるなんて言いません
己をどこまでも深く徹見します



有難う志ん朝!
あなたと同じ時代に生きたことが私の誇りです!

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