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元カノから届いたネクタイが御守りだった。
始まりは大学二年の春だった。講義の合間にホールで悪友に捕まったのがきっかけだ。 「美佐子の相手しててくれないか これから授業があるの忘れてた 頼むよ」 シスコンの清原から彼の妹の”接待”を頼まれたのだった。 美佐ちゃんは、大学同期の清原の妹で春から都内の短大に通っている。 何度か会ったことがあった。ちょっと生意気で苦手かもと思っていた。 まあ、この際しょうがない。 神保町の駅で美佐ちゃんと落ち合い、裏通りの喫茶店に行く。 この辺は、街の裏手にあって後楽園遊園地や野
逃げる夢? 夢なんて持ってたかな、わたし。 三作目です。よろしくお願いします。
誕生日をあの娘と過ごすことにした。 それは絵に描いたような幸せなある日。 美佐子と付き合い出してからもう一年たった。 前の彼女とは半年で関係が自然解消していた。人には相性というものがあるということを理解し始めている。 ケーキが並べられたガラスケースの前で美佐子が振り返った。 「大きな蠟燭を二本と小さな蝋燭を二本にすればいい?」 「うん。二十二本立てるのはさすがにきついだろ」 「ふふふ。言われるとやってみたくなるんだけど」 ケーキに蝋燭で祝って貰うなんて、いったいいつ