【ショートショート】『立方体の思い出』
星月の口づけはキャラメルの香り。僕を虜にする。真っ白な丸いコンパクト鏡のようなケースから、彼女はコロコロの小さなキャラメルキューブをひとつ摘まんで口に放り込む。
「食べちゃう前にしちゃいやよ」
漂う甘い香りに我慢できず、横に並んで寝転がっている星月の顔に自分の顔を近づける。鼻の頭が触れ合う寸前、ピシャリと頬を叩かれる。ほんわかした見た目によらず内面は固い金属で作られた小さなキューブのような女の子。迂闊に触れたりすると鋭利な角で傷を負う。
「もう食べちゃったよ」
いきな