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見た、見た、読んだ 2023年11月~12月

「気付けば何もしてないのに年の瀬になる」という言葉をよく聞くが、そのときの「何もしてない」は、いったい何をしてたら満足して、「何かした」になるんだろうなあ。

ということで、何かしたことを忘れないために、見たり読んだりしたもので、書き留めておきたいもののメモです。


映画

犬神家の一族

角川チャンネルで無料公開していたので、日本の古典ミステリにして、一族を築きあげたフィクサーの死から始まる遺産跡目争いの最中の殺人事件ものの大家なのに実は見たことがなかった。なので見た。

図らずもこの後に見たゲゲゲと、少し前に見たゴジラと、戦後直後の時代設定のものを3本連続で見てしまったわけだが、こちらは戦後の混乱の影は薄く、普通に遺産目的でバリバリ殺人が起きる(ゲゲゲの予習になってしまった)。
古典だから後世の作品のオマージュの知識で謎が先読み出来てしまうかな?と少し心配になってしまったが、そんなことはなかった。展開が早く、登場人物も多かったので、整理しているうちに新事実がぽんぽんと出てきて、最後まで楽しく見ることができた。

有名な足が水面から出ているシーン、「崖から落とした」と説明があったが、あの状態になったのはだいぶ面白くないか。


鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

公開された途端、TLがざわつき始め、因習村ものとしてよいと聞いたので見に行った。

濃かった。こんなに詰め込んで映画って作れるんだなあという感想がいの一番に出た。
バディもので見たいシーン全部詰め込んだみたいなカットの数々と、平成アニメを彷彿とさせるベテラン声優陣と、盛りすぎの設定と展開と超絶アクション作画とセリフ回しと。途中のゲゲ郎の戦闘シーンで線がぐにゃっとしたままバトル始めたのには本当にびっくりした。
物語としては分かりやすくする工夫を随所に仕込みながらも、速度以外の方法で濃く、面白くしているところが令和のアニメという感じがした。
これだけ詰め込んでおいて、初期の来場者特典がIFの世界線を思わず想像してしまうものだったと聞いた。それはズルですよ。

個人的には、主人公の戦争体験のシーンが繰り返し描かれているのに、おっとなった。水木しげるの戦争体験を描いた漫画のオマージュも含まれているタッチで、戦争が終わろうがどこまでも地続きであり続ける感覚が作品にきちんと落とし込まれていてよかった。
その辺りを深掘りしたい人は同じテーマを扱っているゴジラ-1.0と合わせて見るのがいいと思う。

トットちゃんも見なければ。


リング

角川チャンネルの無料公開キャンペーンで見たやつ。前回見たのが10年前くらいだったのでだいぶ覚えてなかった。

謎解きパートが半分以上を占めていて、今見てもホラーミステリとして面白い。しれっと霊感持ちが出てくるあたり、90年代前半の流行を感じる。井戸でヒロインが貞子を抱きしめるパートは聖母のニュアンス強そうだなという気付きもあった。
やっぱり画面から出てくる貞子の絵面は、第四の壁を超えてくることを彷彿させる仕掛けとして発明品だなと思う。

個人的に、Twitter(現X)で流れてきた「ビデオとかダビングとかわかんないからピンとこなかった」という若者の感想が好き。


返校

実は日本で公開当初、仕事休んで映画館に見に行った作品。アマプラの有料枠で配信開始していたので400円払って再視聴。

本作はゲーム原作で、台湾の国民党統治下における言論弾圧と民集の相互監視と密告の恐怖をテーマに、サイレントヒル形式の、己の罪悪感がクリーチャーとして襲ってくる世界観の中で、隠された人間ドラマを追っていく作品。個人的にサイレントヒル形式が好きなのでとても楽しめた。
この映画見るまで台湾映画を見たことがなく、ゲームを知るまでは「国民党の統治下は酷かったらしい」という文字情報しか知らなかったため、結構ぎょっとした覚えがある。そういう意味でもよかった。

原作からの変更は私は筋が通ってる範囲だと思いうし、映画としてもちゃんとまとまってて面白いので、角川系列のホラーいける人にはおすすめです。


マンガ

ブルーピリオド 15巻

2年の夏休み、広島編の後半。
八雲たちにとっての1年前の身近な人の死、そのぽっかり空いてしまった空白とどう向き合うのか、それを間近で見ている八虎が己の感情をどう扱うのかを真正面から描き切っていて、非常に読み応えのあるエピソードだった。本作で一番好きなエピソードかもしれない。

これまでも結構そういうシーンあったが、今回の広島編通して世田介くんの頭の良さが爆発していた。自分の感情を否定しないことは、一見難しくないように見えてその出来事の中心にいたり、近くに寄ってしまうだけで簡単に揺らいでしまう。そこに一歩引いて多角的な視点を失わない世田介くんの言葉が刺さる。

当事者だからこそ、自分を粗末にしてしまうこともあるのでは、という指摘の鋭さがとても現代的だなと思った。


アニメ私塾流 最速でなんでも描けるようになるキャラ作画の技術

前から、この本はいいぞと聞いていたのをついに購入。
個人的に昔から、イラスト技術の話はアニメーターさんの言ってることの方が腑に落ちることが多いなと思っていたが、もしかしたら動かすことが前提の、動くと身体が伸縮すること時間経過を一枚の絵で表現すること、そして線のみでそれらを表現することが主体になって語られているからかもしれないとこの本を読んでふと思った。やっぱ私は絵を止まってるものだと思ってないのかもしれない。いや動かせるほどの技術は私にはないのだが。練習しましょう。

本書で面白かったのは、背景をわざと均質に描写せず時間と奥行を表現する手法が紹介されていたこと。
以前、竹宮恵子のマンガ技術本で、同じコマ内でもカメラが動くから、必ずしも背景のパースが人物と合うわけではない、という話を読んでとても納得がいったことを思い出した。

他にも視線誘導の話など、知りたかった話が出てきたのでちょっとずつでも見ながら練習したい。


Landreallガイドブック

ここ15年以上イチオシマンガであり続けるLandreallの20周年記念ガイドブック。
2月に出たのにあまりにも好きすぎるのでもったいながってちまちま読み進めていたため、今頃読了した。

おがき先生は勿論、関わった人間みんなだいぶランドリ好きだなということを感じる最高の1冊だった。コミックス40巻分、1冊ずつにオーディオコメンタリーをつけるようにおがき先生にインタビューとったの偉すぎる。思いついても普通せんのよ。
インタビューにて、本作が少女漫画としてかなり意識して書かれていることがわかって密かにびっくりしていた。だって娼館とか主人公をアレな意味で買うマダムとかロマンス要素ではない身分差の話とか、結構シュガーコートされきってない骨太めなネタがバリバリ出てくるし……(私が少女漫画を読んでないからかもしれないが)

ランドリの奥行がとにかく広大な世界観と様々な価値観の人々が画面の外でも生きてる感覚のすごさが堪らなく好きなので、おがき先生には無理しすぎず、書ける限り描き続けてほしいなと思いました。


色々作らなければいけないものがある中で、うっかり忙しくて放置していた三体を読むのを再開しました。これを読み終わったらプロジェクトヘイルメアリー読みたいです。あと他にもうっかり本を積み増してしまっているので、来年はそこを読んでいく時間をどうするかを考えつつ、自分の創作にも力入れたいです。それとそろそろ、去年練習用に買ったクロッキー帳も来年いい加減使い切りたい。やりたいこと一杯。ピカチュウも大爆発。

それでは、良いお年を。

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