昭和二十三年四月十五日現在のPTA 実態調査報告 (一九五〇年七月 文部省社会教育局PTA研究協議会資料)

一、結成率

      PTAのみ   旧来の団体  両者併存   なし
小学校    68%     15%     16%    1%
中学校    67%     17%     13%     3%
高等学校   43%    35%     16%     6%
平均     65%     17%     17%     1%

二、結成の動機並びに経過の概要

結成の動機と考えられるものは

 1 、県の指令によるもの。
 2 、後援会、保護者会への反省に因るもの。
 3 、学校と家庭との協力の必要を痛感してのもの。
 4 、民主教育に対する熱意に基くもの。
 5 、児童青少年の不良化への憂慮から出発したもの。
 6 、児童青少年の福社を希求してのもの。
 7 、時流に便乗して簡単に作ったもの。

などが考えられ、実際にこれらの夫々の動機に基いて色々の場合に色々の形でPTA が作られているようである。動機が真に新教育の観点に立って児童青少年の福祉を考え、且旧来の封建的ボス的後援会に対する反省憂慮から出発したものであれば、その結成過程も教育民主化の線にそつて真に民主的な教育的団体としてのPTA の誕生を見ているが、動機が曖昧なものは、その結成過程も、形式的であって、出来上ったものが実質的に見てPTA とはいえないものが多い実情である。
 発起人となったものは、学校側及び旧後援会、父兄会の役員が圧倒的であり、本当に各父母が、PTA というものを理解した上で、民主的に皆の合意と協力とによってできた場合は少なく、一部のものの主導的振舞から生れたものが多いことは、好ましくない事柄だと思う。
 会員の決め方も概ね自由参加を立前としているが、その場合個人単位であるよりか保護者単位乃至は世帯単位が多く、その比率は、

保護者単位 20%  個人単位 71%  世帯単位9%

である。その他は概ね在来の父兄会後援会の会員が自動的に会員になっている状況である。

三、役員の問題

 役員は会長、副会長、書記、会計の四名であるべきところを、顧問、相談役、世話役等の名儀で、非民主的勢力をとどめているもの約55%である。役員の選出方法は、形式的には直接選挙が大多数であるが、中にはまだ間接選挙、推薦形式のもがある。特に指名委員会を作っているものは極く少数であり、この点大いに改めなければならぬと思う。
 婦人の進出状況は、会長に婦人が就任しているものは僅々十指を屈するに足りない現状で、副会長に30%、書記に20%、会計に25%を見る程度である。

四、旧後援会との関係

 結成状況から見ると、約17%の学校が旧後援会父兄会とPTA を両立さしており、尚旧来のもののみで、新しいPTA を結成していないものが、

小学校15% 中学校17% 高等学校 35% 平均17%

である。
 尚旧来のものをPTA に切り替えたものでも、真にPTA であるもの極少なく、概ね後援会的性格を払拭できないで、単なる看板のぬり替えに過ぎないものが多い

五、経理の問題

1 、収入であるが、これは、

       会費     寄附金     事業収入    其の他
小学校    54%     25%      16%       5%
中学校    71%    18%      9%      2%
高等学校  69%    16%      11%       4%

の通り会費に依存しているものが圧倒的で、従つて会費の額もいきをい高額とならざるを得ず、月額最高100―300円というものがあって、これは決してよい傾向とは思われない。

2 、支出は、

       本来の使途   公費の補助   教員補助   其の他
小学校      68%      15%      11%      6%
中学校      67%      4%     24%     5%
高等学校    70%     8%     15%     6%

の通り、公共費で賄われるべき性格の校費を、PTA で援助支弁しているものや、教員に対して特に補助金を支給していのが相当多数あることは、この会として好ましいことではない。尚全PTA中、先生が会費を出していないものは約70%ある。
る。


六、活動状況

 大体どんな活動が主に行われているかを見ると、

1、家庭と学校の連絡
2 、医療、施療
3 、給食
4 、学校施設の充実、美化、営繕
5 、図書
6 、PTA 精神啓蒙のための資料刊行
7 、不良化防止策
8 、各種講演会
9 、母親学級
10、幻灯会、映画会、紙芝居
11、学芸会、演芸会
12、バザー
13、旅行・遠足
14、展覧会、運動会
15、其他

の通りである。活動方法は大抵の場合、部を作ってその部の活動としているが、今委員会を作っているものの数を見ると

プログラム委員会    29%
保健衛生委員会     19%
厚生営繕委員会     28%
給食委員会       17%
新教育研究委員会    21%
児童校外生活指導委員会 16%

の通りである。

七、エヴァレエーシヨン(効果判定)

1、現在どんなところが隘路となっているか。(300のPTA についての調査)
イ、父母の無関心——集りがわるい  32%
ロ、財政難             12%
ハ、PTAの本質が判らない      11%
ニ、会員の相互接触が困難      10%
ホ、生業による活動の中絶      6%
ヘ、なし              6%
卜、新教育への関心の不足      6%
チ、父母及び家庭の封建性      5%
リ、旧父兄会、後援会と混同     4%

2 、現在とくに苦心を払つて実施している点
イ、PTAの本質啓蒙         21%
ロ、会員の出席をよくする      16%
ハ、新教育の理解——教育民主化   12%
二、部落(地区)活動        11%
ホ、校舎施設の充実         8%
ヘ、父母の新教育への関心      8%
卜、家庭との連絡          7%

3 、将来とくに重点をおきたいと考えている点
イ、PTA本旨の普及徽底       20%
ロ、新教育の理解——教育民主化   18%
ハ、会員の積極性          16%
ニ、父母の教養向上ー家庭生活の水準向上 12%
ホ、学校の施設           7%
ヘ、生徒の校外生活の指導      7%
卜、経理の円滑           7%



PTA史研究会『日本PTA史』2004, 日本図書センター pp.427-33

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