父母と先生の会のあり方について(一九六七 社会教育審議会)

 本審議会は、父母と先生の会(PTA)のあり方について審議を重ね、とくにその目的と性格について一応、下記のようにまとめたので報告する。
 なお、このほか組織、運営についても重要な諸問題が残されているが、今回は、その基本問題である目的、性格を中心に検討を加えた。

      記

 父母と先生の会(PTA)は、昭和二二年から二五年頃にかけてけてほとんど全国の小、中、高等学校において結成され、今日ではわが国でもっとも普及した成人の団体となっている。
 従前の父母と先生の会(PTA)の多くは、学校後援的な事業に重点がおかれ、その面での役割を果してきたが、この会結成の趣旨である児童生徒の幸福な成長をはかるための会員相互の学習活動や社会活動等は、必ずしも十分に行なわれてきたとはいえない。これは、結成当時の社会情勢や、父母と先生の会(PTA)のあり方に対する理解の不足等によってもたらされたものといえよう。しかし、この会発足後二〇年余を経、社会情勢もいちじるしく変化した今日においても、なおこの傾向が多分にみられ、あらためてそのあり方、とくに基本的な問題である目的、性格を明らかにする必要がある。

1 目的、性格について

 「父母と先生の会(PTA)は、児童生徒の健全な成長をはかることを目的とし、親と教師とが協力して、学よび家庭における教育に関し、理解を深め、その教育振興につとめ、さらに、児童生徒の校外における生活の指導、地域における教育環境の改著、充実をはかるため会員相互の学習その他必要な活動を行なう団体である。」
 父母と先生の会(PTA)の目的は、「児童生徒の健全な成長をはかる」ことにある。児童生徒の健全な成長をはかるためには、学校と家庭と社会とが、それぞれ教育の責任を分担し、協力しあうことが大切であるが、とくに、児童生徒の教育に直接責任をおう学校と家庭の協力体制が必要である。この協力体制は、さらに、地域社会における児童生徒の教育についても重要な役割を果すものである。
 父母と先生の会(PTA)は、この目的のもとに、学校および家庭における教育の理解とその振興、児蛮生徒の校外における生活の指母、地域における教育環境の改善などを促進するために必要な諸活動を行なうものである。
 「学校および家庭における教育の理解とその振典」については、学校と家庭とが、それぞれ教育の責任を分担し、密接な関連を保ちながら児童生徒の指導が十分に行なわれるよう学校における指導方針や、家庭における教育のあり方等について相互の理解を深めることが必要である。この相互の理解にもとづいて、(ア)学校の教育計画の実施上必要な、家庭と学校の協力活動をすすめ学校教育の充実に寄与し、(イ)学校とならんで教育の基本的な場である家庭の意義、機能、およびその教育的役割等について理解を深め、家庭教育本来の機能を果し得るよう家庭教育に関する学習活動等を行うことが望まれる。
 「児童生徒の校外における生活の指導」については、学校の教育方針にもとづく校外の生徒指導に協力するとともに、健全な遊びや規律ある集団活動などを通して、児童生徒の心身ともに健全な発達をうながすよう、適切な指導を行なうことや、少年団体等の健全な育成をたすける役割が期待される。
 「教育環境の改善」については、児童生徒が生活する地域環境を、教育的に改善し、また、児童生徒の校外における生活の安全を確保することが重要であり、たとえば、遊び場の整備、交通安全施設の設置、危険地域の改善などを促進することや、出版物、マスコミ等に対処する活動などがある。
 以上の諸活助を効果的にすすめるためには、会員相互の話しあいや、組織的な学習や実践が必要であり、さらに、父母と先生の会(PTA)相互の連絡協調や関連する諸団体等との連携をはかることが望ましい。

2 構成について

「父母と先生の会(PTA)は、学校に在籟する児童生徒の親および教師によって、学校ごとに組織される。」
 父母と先生の会(PTA)は、各学校ごとに、その学校に在籍する児童生徒の親およびその学校に勤務する教師によって構成される。
 なお、この会の目的達成のためには、会の趣旨に賛同する親と教師が自主的にできるだけ多く参加することが望ましい。

3 運営について

 「父母と先生の会(PTA)は、会員の総意によって民主的に運営され、特定の政党、宗派にかたよる活動や、もっばら営利を目的とする行為を行わない。」
 父母と先生の会(PTA)は、会貝の総意にもとづき、親と教師が会員として同等の立場で運営されなければならない。したがつて、会の運営や会務の処埋等を一部の役員や学校の関係者のみにゆだねることは適切でない。
 また、この会は、その目的、性格のうえから特定の政党や宗派を支持、支援したり、もつばら営利を目的とする行為を行なってはならない。

4 相互の連絡提携について

 父母と先生の会(PTA)相互の連絡を緊密にし、その発展をはかるとともに、共通の目的を達成するためには、その協力組織として、市町村、都追府県および全国的等の各段階における連絡協議体の果す役割が重要であると考えられる。

 「付記」

 小学校父母と先生の会(PTA)参考規約(昭和二九年二月社会教育審議会父母と先生の会分科審議会決定)は、当時における父母と先生の会の規約の参考として、その役割を果してきたが、こんごは、この報告の趣旨にもとづいて父母と先生の会の運営に留意することが望ましい。

社会教育推進全国協議会 編『改訂 社会教育ハンドブック』1984 エイデル研究所 pp.793-5 より

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