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ケイクテイク デザイナーズノート

2022春のゲームマーケットで出品しました「CAKE TAKE(ケイクテイク)」がどのような過程で出来ていったのかまとめたいと思います。

ケイクテイクはこんなゲームです。

箱を開けたとき
プレイ中の様子

ケーキを持ち寄って、だれかとかぶらないことを目指すバッティングゲームです。流行のケーキを持っていくと得点が高いのですが、その分誰かとかぶる可能性も高くなっちゃいます。流行のケーキに便乗できるコーヒーもあります。

早いものでもうゲムマ秋も終わり、2022年も終わろうとしていますので、自分の備忘録という意味も込めて残しておきたいと思います。

興味がある方は軽い気持ちで読んでいただければ嬉しいです。

制作のきっかけ

ボードゲーム仲間のミナっちさん。
ミナっちさんは手芸がとってもお上手なのですが、以前から手芸のコンポーネットを使ったボードゲームをいつか作りたいと言われていて、そのことはTwitterでお見掛けして知っていました。

わたしはそれを見ながら「いいねぇいいねぇ(^^」と思ってはいたのですが、自分と一緒に作ろうとはあまり考えていませんでした。

そんな時、ミナっちさんがされているポッドキャスト「ちっち邸のゆるっとゲーム雑談」にゲストとして何回かお邪魔する機会がありました。

その時の収録外の雑談でゲーム制作について話しているとトントン拍子で話がまとまり、二人で制作することが決定。私としても、個人でゲームを制作してきたので「誰かとタッグを組んでゲーム制作をしてみたい」という憧れがあり、話は早かったです。決まった後のラジオがこちらです。
2021年12月頃のことです。

初々しいですね。今はもっと好きなことを言いあっていますが、この時はお互いにどんなゲームを作りたいかさぐりさぐりだったように思います。

いま思えば、もうちょっと初めの段階で具体的に役割分担とか費用のこととか色々決めておけばよかったかなと反省点はあります。でも、初めに言っておくと、結果としてコラボ制作はとても楽しく一緒に制作できたのは良い経験になりました。

では、具体的なルール制作の過程に入りますね。

ルールデザインとコンポーネントデザイン

まず、ミナっちさんの要望として『ケーキのコマを使ったゲームを作りたい』『ゲーム中に手に取ってコマを盤面の上で動かしたい』というものがありました。

持ち寄りパーティーを題材にしたゲームを考えたことがあったので、そのルールが使えるのではないか?と最初は思ったのですが、手にとってコマを動かすルールではないなと思い断念。

そして『出来る限り少ないコマ数』で遊べることが理想ということでした。なぜならミナっちさんのコマはとても丁寧な細かい造りで、1個のコマを作るのになかなかの時間がかかるからです。

さっそく困りました。せっかくのコンポーネントなので、コンポーネントを活かす、いや、ピッタリなゲームルールを思いつかないといけません。

「軽く引き受けたものの、これ作れるかいな……」と若干の不安を覚えながらも悩む毎日。

ミナっちさんも考えてくれていて、五目並べっぽいゲームなどアブストラクトなものもたくさん案が出ました。わたしは途中、コマを動かしながら、自分のお皿に多く運ぶことを目指すゲームを作ろうともしたのですが完全なアブストラクトでした。

「この可愛いコンポーネントを買う人が、アブストラクトしたいか?」

という疑問が当然わいてきます。たぶん、したくないだろうね…と、また話し合い。「相手が揃えたいコマを当てると逆転勝ち・外すと一発負け」というルール案も出てきて、その時作っていた盤面はこちら。

制作過程の盤面 なんだこのゲームは??

って、いまと全然違うやないかーい

というツッコミが聞こえてきそうな写真ですよね。

そうなんです。見た目はとてもおしゃれ(だと思う)で、ゲームとしては楽しそうなのですが……。この頃、色々な案を取り入れたことでよく分からないゲームルールになっていました。我ながらカオス状態だったと思います。

大変です。ルールの迷走です(笑)
いや、笑っている場合じゃありません。

でも時間がないし、ミナっちさんは良いルールだと思うけどと言ってくれていて、自分の変なこだわりのような気がして悶々。

さぁ次に、これをどうやって軌道修正したかです。

ルールの迷走から抜け出せ!

自分の中でモヤモヤを抱えていたそんな時、福岡ボードゲームフリーマーケットがありました。そこで、試作品としてケイクテイクを展示していて、何人かの友人に試遊もしてもらっていたんです。

するとその日のイベントの後、試遊をしてくれた友人の一人がゲームについてDMをくれました。直接的に悪い点を言うわけではないけれど、やんわりとこのままで良いのか?と思わせてくれるDMで

「そうだ!!このルールじゃいけねぇ!!こんなの私が作ったゲームルールじゃない!!!」

目が覚めたようでした。
自信をもって自分が作ったルールと言えるならまだしも、色々な意見が入っていったい何を目指しているゲームなんだ状態になっていたんですね。

と、我に返ったのはいいものの、問題は進捗です。
この時は1月末。

「ミナっちさん、話が進んでいるこのルールだけど、ずっとモヤモヤしていて、根本から変えて良いでしょうか……」

驚きの提案だったと思います。その時点ですでにたくさんテストプレイをしていたからです。ミナっちさんは「このルールで良いとは思っているけど、みどりさんが気になるならみどりさんが納得するようにして」と言ってくれました。本当にありがとう。

友人が率直なDMをくれていなかったら、また、ミナっちさんが作り直したいという私の我がままを許してくれなかったら、あのルールのまま販売していたのかな?と思うと怖いですね。本当に感謝しています。

ルールデザインとコンポーネントデザイン(改)

2022年2月
私が作りたいゲームってなんだろうと改めて再構築を始めました。
ゲムマは4月23日。時間はないです。

目指したいゲーム
・可愛いコンポーネントをお目当てに買う人も分かりやすく楽しめてすぐに遊べる簡単ルール
・コマが少なくて済む
・アブストラクトではなく心理戦が楽しめる
・ケーキコマを活かす。

色々と考えた結果、結局もともとフワッと考えていた、持ち寄りパーティーを題材にしたルールを採用することにしました。このルールだと、ミナっちさんが理想としていた『ゲーム中に手に取ってコマを盤面の上で動かしたい』が叶えられないのですが、そこは許してもらうことになりました……。
ミナっちさんごめんとしか言いようがない。

『出来る限り少ないコマ数』で遊べるために第1ラウンドでケーキをお持ち帰りして、第2ラウンドではそのケーキを使うというルールを追加。コマ数節約のために考えたものでしたが、ルールとしても良い感じに考えどころが増えました。

ルールを根本から変えてからは、もともと考えていたゲームだったのもあり、以降の制作はとてもスムーズに進んだと思います。ケーキコマを活かすためにコマを隠すための衝立、ケーキボックスをお手製で作ることにも挑戦。

ケーキボックス試作1号。
ミナっちさんに送った画像。懐かしい。
衝立試作1号。
右奥のみかんがこの頃の季節感を出しています。

試作1号は衝立の高さが大きくて、ちょっと低くしたり微調整。

原色にしすぎてボツになった色。

コーヒー駒もどうするかも相談を重ねて、木コマにコーヒーのパッケージをデザインする方法を採用。

たくさんのコーヒー。豆かな?粉かな?
ケーキボックス大量制作

ゲーム箱の選定も、実際にお菓子の箱に使われているものを使用したり、裏面をお菓子の製品説明にあるようなデザインにしたり細部までこだわりました(ケイクテイクを持っていて、裏面見てない方は見てみてね)

こういうお手製の作業って本当に大変ですけど、振り返ってみると楽しいですよね。同人ゲーム作りの醍醐味の一つかもしれませんね。

そして完成した時のツイートはこちら。

いま見ても、カタチになって本当に良かったなぁ~と思います。

制作を終えて

●反省点


大きく2つあります。
今後に活かすという気持ちを込めて、ポジティブな意味で書きます。

・私は条件付きでルールを思いつくタイプではないことが分かった

ルールを考えてみて知ったのですが、私は条件があるうえでルールを制作するのがめちゃくちゃ苦手ということが分かりました。おい、なんでルール制作するなんて言ったんだよ…ですよね。許して、知らなかったんです。

条件があるほうが楽かなぁなんて思っていましたが、逆でしたね。ゲームマーケットチャレンジという企画もゲームマーケットさんでありますが、この経験をしていたおかげで安易に手を出さずに済んだな、と思っています。すでに考えていたルールが条件にピッタリだったら作ろう!くらいのほうが合っているようです。

・コラボ制作(チーム制作)のときは役割分担をしたほうがいい

ルールを提供する、から、気が付けばデザインとか箱とか色んなことを一緒に作っていました。これは決してミナっちさんから頼まれたとかではなく「いいよいいよ、考えるよ」と私が勝手に安請け合いしたんですね。自分で自分の仕事を増やしていた感じです。

はじめてのコラボ制作でしたが、終わってみてから「役割分担・大事・絶対」を心に刻みました。次回からもっと上手くできるはずと思います。(この反省のおかげで、実際に次のコラボ制作「エムエムブティック」はこの点上手くいったと思います。ミナっちさんありがとう!)

仕事を勝手に自分から引き受けることで、自分のボードゲーム制作のほうがおろそかになりがちで本当に修羅場でした。ちなみにその時自分個人のゲームとして制作していたのはこちら。

ホットケーキができるまで。試作。

盤面が缶を一周するアブストラクトです。
現実的な話として、ゲムマに出展するのに自分が売るものがないと「ブースもらったのになんでゲムマに出展するの?」状態ですし、旅費諸々もまるっと赤字に。(当たり前)なので何か個人でも絶対制作しなきゃと、こちらも以前から考えていたルールだったのもあり必死につくりました。が、樹脂粘土でコマを作っていて、よりによってなんでまたこんな手間がかかるゲームを同時に作ったんだ……我ながら意味が分かりません。楽しかったけど。修羅場は避けたいですよね。

●良かったこと

今回、コラボでゲームを作ることでよかったことがたくさんありました。すごくそのままなことを言っている気がしますが、ざっくりまとめると

・1人では出来ないことがたくさん出来る

これです。
まず、テストプレイがしやすい。これはとっても助かりました。思いついたら一人で作る時よりすぐにテストプレイができる。ルールを作るうえでこんなに助かることありますか?いや、ない。

次に、お喋り相手がいる。ゲーム制作中にお喋りできます。頭を使わない何か作業系のことをしているときに、お喋り相手がいるっていいものです。いままでチーム制作をしているサークルさんたちがお仲間と楽しそうにしているツイートをみて、そういうのも良いなぁと思っていましたがそれを味わえました。

そして、なんといっても自分一人では絶対に作れないボードゲームを作れたことです。私には到底できない可愛いコンポーネントのゲームを制作できて感謝しています。それぞれの得意なことを活かして制作って面白いなぁと思いました。

結果として、最初にも書いたように、コラボ制作ができてとても良い経験になりました。


ミナっちさんはこれからも手芸コンポーネントでゲームを作ることを続けられるようですので、何か我こそは良いルールを思いつける、とか、何か制作を依頼したいという方がおられたらミナっちさんへぜひご連絡くださいね。
ミナっちさんのケイクテイク制作についての記事も貼っておきます。

長くなってしまいましたが以上です。
役に立ったという方はおられるかな、さすがにいないかな。やっぱり自分のためのデザイナーズノートになったような気がしますが、読んでいただいた方ありがとうございました。

もし、これを読んで「ケイクテイク気になる!」と思ってくださるありがたい方がいらっしゃったら、良かったら遊んでみていただけると嬉しいです。

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