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夏に生まれて、夏に去って


当初は父に手伝ってもらい敷地内で眠らせてあげよう
と思っていたのですが、早朝でもこの暑さの中ですし
体の大きいやつでしたから
かなり深く穴を掘る必要もあって
時期が時期なのも相まって、あんまり悠長にしておくと
折角綺麗な顔で休んでる猫太夫にも悪い事になりますから
朝食後、市内にあるペット葬儀の会社に連絡して
荼毘に付してもらうことにしました。

どんなもんなのかなと、ホームページを見ながら連絡をして
見知らぬ由縁もない土地で眠らせるのはなあ、と
個別で荼毘に付してもらいお家に連れて帰る事にしました。

12時半に予約をし、病気になる前から愛用していた
フカフカの猫ベッドによく使っていたタオルを敷いて
幸い眠っているような体勢だったので、そっと寝かせて
寝床に使っていたタオルをかけてやり
長らくの闘病生活ですっかり細くなった体を撫でながら
それでもずっしりとした体を綺麗にブラシをして
まるで眠っているような顔を撫でながら
13年間いつも一緒に過ごしていたリビングで
時間が来るまでゆったりとした時間を過ごしました。

出発の時間になり、同じくらい一緒に過ごしていた
両親も行くとの事だったので、運転をお願いして
私は助手席で猫太夫が眠っているベッドを膝の上に抱えながら
思い出話をしつつ葬儀場へ

到着すると12時だったのですが、時間を前倒しにして頂き
用意して貰った棺の中へ、そっと寝かせてあげました。

最近は食べる事の出来なかった沢山のご飯に
病気になるまでずっと食べていたカルカンのウェットフード
最後の最後まで食べてくれたちゅーるに
子供のころから大好きだったかつおを、山のように周りに。

棺の蓋が閉められ炉に入る瞬間まで不思議と涙は出ず
やっと楽になったね、お疲れさまと言う気持ちでした。


思い出話をしながら気付けば一時間ほど経って
葬儀場の方に御骨を骨壺に入れるため呼ばれました。
正直な事を言うと、体が大きく、体重もある猫だったので
立派な骨が…と思っていたのですが、
疎らに散らばるだけの「骨?」と呼べる状態で愕然としました。
葬儀場の方に話を伺うと
「腎臓が悪い子は骨が脆くなって形が残りにくい」
と、確かに7月の終わりに検査をした時は数字は悪めでしたが
そこまで悪くはなく、想定の範囲内と言う話だったので
壮絶な闘病の、ある種の勲章のような形だった訳です。

小さな欠片ばかりになってしまった体を、なんとか判別しながら
骨壺に収めていき、もはや粉のようなものしか残っておらず
そこで蓋を閉じ、すっかり小さくなってお家に帰ってきました。

寝床だった座椅子を綺麗に整え、骨壺と遺灰と遺影とを
いつも寝ていた場所に用意し、お水とご飯を用意して
もう遮るものはないですが、それでも好きなように動けるよう
家中の扉を開けてやって、先ほどようやく一段落です。


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