【基礎から学ぶ人事制度│等級制度編③】等級制度設計の進め方とポイント
このコラムは、グローセンパートナーの人気セミナー「動画で学ぶ人事制度」の内容をまとめたものです。人事制度から人材育成・教育に関する全体像を理解し、人事制度設計で押さえるべきポイントを説明します。
動画で学ぶ人事制度とは
動画とテキストに沿って演習や事後課題を進めることで、人事ポリシーの設計、等級・評価・報酬制度の概要設計、教育体系などの概要設計ができるようになっています。より詳しく学びたい方は、ぜひテキストをダウンロードして動画をご覧ください。
今回は、実際に等級制度する際のポイントについて解説します。
等級制度設計のポイント
実際に等級制度を設計する際は、下記ポイントを考慮して設計します。
会社の業態にマッチした等級数にする
管理職の階層によって決めると良いでしょう。一般社員は、一般社員として過ごす期間によって等級数も変わります。キャリア・多様な働き方を考慮したコースを準備する
マネジメントコースは組織戦略に起因する
スペシャリストコースは、スペシャリスト・ライン不適格・役職定年・ラインプール人材を分ける
スペシャリストコースは、本当の専門性を持ったスペシャリスト、ライン不適格者、役職定年を迎えた人、次のラインプール人材、この4つの概念があります。これらをどう整理して設計するかは、手間がかかり難しいです。
▼スペシャリスト(専門職)コース設置の留意点と解決策について詳しくは下記をご覧ください。
https://www.growthen.co.jp/column/20210601/役割の違いを認識できる等級数にする
一般社員が8等級もあると役割の違いを認識しづらいので、一般社員は4等級程度がよいでしょう。昇格機会を職業人生で何回提供できるか考える
昇格の機会が少ない製造部門などは、一生で1回しか昇格できないこともあり得ます。本人のモチベーションの向上のためにも、昇格機会を職業人生で何回提供できるのかも加味して設計しましょう。
キャリア形成の観点から整理しておくこと
従業員のキャリアを考える上で、下記のようなことも考慮してください。
若手社員(1〜2等級レベル)のジョブローテーション期間を設けるか?
1〜2等級の若手社員は一定期間ジョブローテーションをして適正を見極めるとよいでしょう。中堅社員(3〜4等級レベル)のキャリア選択期間を設けるか?
3〜4等級(管理職手前)はキャリア選択期間=専門性を磨く期間として考えた方がよいでしょう。マネジメント・スペシャリストの分岐をいつ/どのように選択させるか?
4等級から管理職に上がっていく中で、マネジメントコースかスペシャリストコースかの分岐をどこで設計するかも考えていきましょう。
最近は「マネジャーはやりたくない」という方がいますので、できれば4等級の期間でマネジャーを経験させてみたり、スペシャリストを希望する方には早期からスペシャリストの育成という形で支援ができればよいでしょう。
続いて、それぞれの会社の業態やニーズによってキャリアパスも考えます。等級制度は社員にどのようにキャリア形成をしてもらいたいかを示すことにもなります。
マネジメント重視でキャリア形成
営業会社、製造会社などは基本的にスペシャリストの方は少ないでしょう。営業とマネジメントができる方が管理職、製造部門でマネジメントができる方が管理職という形になりますので、マネジメント重視となるでしょう。専門家重視でキャリア形成
専門家の方がマネジメントできる方よりも価値が高い会社もあります。プログラマー・コンサルタント・マーケターなどが該当します。多様なキャリアを提示
多様なキャリアを見せることで社員のモチベーションを上げたいという会社もあります。
自社の等級制度設計の進め方
ここから自社の等級制度をどのような観点で設計をしていったらよいのかをお伝えします。
管理職クラスの等級制度設計のポイント
管理職クラスの組織階層を何段階で設定するか?
基本的に、管理職の組織階層と等級数は同じにした方が良いでしょう。執行役員を導入している会社は、管理職の最高位の等級を執行役員(雇用契約)にするのか、従業員とは別の等級にする(委任契約)のかの議論が必要になります。管理職クラスの役職と等級を合わせるか否か?
部長=7等級、次長=6等級、課長=5等級のように役職と等級を固定させるか否かを検討します。この場合、部長のポストから外れて課長になった場合、降格して年収水準も大きく下げていいかどうかを議論する必要があります。年収水準をあまり下げたくなければ、役職と等級を切り離す職能資格制度を導入することをお勧めします。スペシャリストコースを導入するか否か?
一般的にスペシャリストコースには、4つの処遇があります。
ⅰ)スペシャリスト
この人がいれば会社の業績が上がる人、社外でも活躍ができる人
ⅱ)ライン不適格者
マネジャーに向いていないのでラインから外した人
ⅲ)役職定年者
ⅳ)ラインプール人材
ラインに登用したいがまだポストが空かない人、優秀ではあるが2番手の人
ⅰ)〜ⅳ)を分けてコース設計した方が、メッセージは社内に伝えやすいです。ただし対象者のモチベーションを考えるなど、多面的な意思決定が必要です。スペシャリストの審査方法なども設計が必要です。スペシャリストコースにⅱ)〜ⅳ)の人材を入れてしまうことで、スペシャリストコースの魅力がなくなり、いわゆる名ばかり管理職を生み出す仕組みになってしまいます。スペシャリストコースとⅱ、ⅲ、ⅳを分けて制度設計することをお勧めします。
▼スペシャリスト(専門職)コース設置の留意点と解決策について詳しくは下記をご覧ください。
https://www.growthen.co.jp/column/20210601/役職定年制度を導入するか否か?
役職定年制度は役職から外れる年齢を決めて次世代にポストを譲る制度です。制度にしてしまえば役職を外すことが楽になります。比較的人材が豊富な企業では導入できますが、中小企業ではなかなか難しいでしょう。役職定年制度を導入した場合、どう処遇するのかも決定しておく必要があります。ライン以外の管理職の処遇をどうするのか?
管理職から外して一般社員にするという選択肢はなかなか採用されないでしょう。管理職のまま年収水準を少し下げるのか下げないのかなどの検討をしていく必要もあります。
一般社員の等級制度設計のポイント
新卒採用することを前提とするか?
新卒採用を実施する場合には、採用してから2年もしくは3年程度の等級を準備した方が良いでしょう。その等級の給与の水準は、初任給と連動します。また、高卒・短大卒(専門学校卒)・学卒・院卒採用がある場合は、それらの初任給を想定した等級の設定が必要になります。学卒は2年で2等級に昇格、高卒は6年で2等級に昇格する仕組みにすると、2等級以降の整合性が取りやすくなります。新卒社員が一人前になるまでの期間は何年か?
新卒社員が一人前になるまでの期間を等級制度に反映させます。2等級は一人前レベルという設定が良いでしょう。一人前になるまでが早い職種、一人前になるまで時間かかる職種を考慮して、おおよそ2等級の昇格期間を決定してください。役割の違いを定義できる等級数はどのくらいか?
一般社員の等級数は、役割の違いを認識できる段階で設計することをお勧めします。一般的には、半人前・一人前・中堅・管理職一歩手前の4段階程度が良いでしょう。定年まで一般社員で終わる社員が滞留する等級は?
定年まで一般社員で終わる社員が滞留する等級というのも設計をしてください。最も遅い昇格のケースでは、何等級まで昇格するのかを決定します。また最も遅い場合、どれぐらいの年収にするのか/どこまで生活の保証をしていくのか、ということを検討する必要があります。昇格機会を何回提供できるか?
定年まで一般社員で終わる社員に、昇格の機会を何回与えるのかを設計をしてください。地域限定社員のコースの導入は必要か否か?
同一労働同一賃金の観点、男女共同参画の観点から、女性だけの一般職のコースの導入は困難です。全国・地域限定の差、職務の差などで処遇の格差を設けてください。地域限定社員を導入する場合は、全国⇔地域限定社員へのコース転換ルールを設計する必要があります。年収水準は、全国社員の85%から90%程度で設計することが多いです。
より詳しく学びたい方へ
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