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次世代ガバメントへアップデートせよ!

はじめにコロナ対策関連のニュースを紹介しよう。

もはや虚構新聞のほうが見劣りするような議論がされているようである。本当に大丈夫なのだろうか、この国は。

インバウンド観光が不調で訪日外国人の減少により和牛や高級魚の消費が減ったのでそれぞれ専用の商品券を配るんだとか、、、外国人が食わないからその分日本の皆さん食べようってことなんでしょうか?日本人の胃袋にも限界というものがあるので、その券で肉や魚を食べたら他の食料品の消費に影響するから次々にその影響の埋め合わせをするための商品券を出していかなきゃならなくなりませんかね?お米券、お豆腐券、お卵券などなど。

国民の暮らしを支えること(生活のための消費を維持すること)を通じて経済の下支えをすることは医療体制の維持とともに最重要課題です。そして、様々な産業を守ることも重要だと思います。こうしたことを多面的に同時展開するために日本には巨大な官僚組織があるわけです。ただしリソースが限られている場合にはその優先順位を国民の意志に基づいてつけなければなりませんからここは政治の仕事になります。その重要な任にある人が特定の産業を守るためにお肉券やお魚券の発行の是非を論じているようでは危機を乗り越えることができないのではないかと心配になります。

こうした事態に即効性があるのは何といっても(お肉券ではなく)日本銀行券です!そして即効性の面では若干劣るもののやはり地方の経済循環が止まらないようにするためには特定の物品を対象とするのではなく、特定の地域を対象とした商品券が妥当です。家賃や光熱費に充てられないという指摘もありますが、たいていの場合は収入がゼロになるわけではないはずですからそこは現金と商品券を使い分けて家計を回してほしいと思います。

とまあ、今回のメインテーマはこの話ではありません。

今回はこの危機に際して、政府がこれまでマイナンバーカードの普及に本気になってこなかったことが非常に悔やまれるという話をしようと思います。今日の写真は「Next Generation Government」という本の写真で、何度かFacebookでも紹介しているのですが、行政関係の方々にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
この本の中で紹介されている国の中で一番注目したのはインドです。インドにもマイナンバー制度があるのですが、日本のそれとはレベルが桁違いといっていいでしょう。インドのマイナンバーは「Aadhaar」という名称で国民全員に12桁の番号が付与されるとともに、それに顔、指紋、虹彩のデータが紐づけされています。その個人認証をベースとして10歳以上のインド国民で他に銀行口座を持たない人にはベーシックな普通預金口座が与えられたそうです。なんとその数3億1400万口座!(日本の人口の3倍近く!)今回のような事態となりインド政府から国民に現金給付がされる場合はかなり短期間で入金されるのではないかと想像できます。そして確実に届きます。
あわせてペーパーレスも進めていますから、おそらくインド政府には印鑑が必要な書類や高機能シュレッダーなど必要ないでしょう(笑)。
さらにインドは「India Stack(インディアスタック)」という政府が束ねるオープンAPIにより、国内の様々な課題を解決するためのビジネスやサービスの開発を促しています。しかもインディアスタックの運営は民間であり、国民すべてがそれを通じて金融、教育、ヘルスケアなどのベーシックなサービスを受けることができ、かつそのコストを低くセキュリティレベルは高くすることに成功しています。
深夜特急で沢木耕太郎が訪れたインドとはもう別の国家にバージョンアップしているのだ!!

もしもこのレベルのインフラが日本に整備されていれば、今回のコロナ対応も随分と違っていたはずです。かりに現金給付や商品券の配布を行うために所得制限を行ったとしても、その処理や入金のための労力はずいぶんと抑えられます。そんなものにかかるコストすら国民に還元できるというものでしょう。また、こうした手続きに必要な公的なリソースを適正に配分することで一部の部署や人間に責任とタスクが偏ることも防ぐことができます。そして、感染の実態を把握するためのデータを集めることも今よりは容易にできていたのではないかと考えられるのです。

マイナンバーカードの普及のために、免許証や保険証をマイナンバーカード一枚に統合するなど効果的な普及方法をなぜしなかったのか残念でなりません。いろいろできない理由はあるでしょうが、それをクリアするのが政治家や官僚の仕事というものだと思います。インドにできて日本ではできないというのであればなお残念と言わざるを得ません。

今回のコロナショックはそれぞれの国の弱点を明らかにしています。総じて日本は医療のレベルが高く衛生的な暮らしをしているため、今のところ相対的には落ち着いているといえるでしょう。しかし弱点も明らかになりました。株高一本足打法が国民の豊かさとリンクしていなかったために危機に対応できない家計世帯が少なくないこと。政府の意思決定がオープンかつ検証可能なものでなかったことにより意思決定が迷走してしまうこと。またワイドショーと報道番組の境が曖昧になってしまっているためにマスメディアが情報ソースとして信頼に足らず、国民がこの状況を冷静にとらえるための情報チャンネルが少ないことなどがウイークポイントとして明らかになりました。

コロナ終息後の話をするのはいささか早すぎるとは思いますが、後々こうした弱点を放置せずにこの危機に何ができなくて何ができなかったかを検証し、必要に応じてどんどんシステムをアップデートしていくことを決して忘れてはいけないと思います。これほどの危機的状況はなかなかないとしても、不確実性が高まる時代の中で、高度化するテクノロジーを政治行政の分野でも積極的に取り入れていくことが重要です。そしてそれを怠るならば、こうした危機に際して「正しく恐れ冷静に対処する」ための国民の精神の基盤もまた壊れてしまうということになるのではないでしょうか。

一斉休校のみならず外出の自粛等で家にいる時間が長くなったわれわれ大人もまた、これをきっかけに日常に学びを取り入れていかなければなりません。

読みものとしても十分面白いのでお勧めの一冊です。

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