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3月28日 総理会見全文と感想

はじめに
総理の会見は20分のところまでです。全文は下にありますので、文字情報のほうが良い人はそちらをご覧ください。(首相官邸ホームページより)

安倍総理の会見が先ほど行われていた。その内容について前半として会見の内容について私の感想を記しておこうと思います。(長文です)

 会見の内容としては、前段において新型コロナの感染に関する現状認識と感染防止に向けた国民へのお願い。中段では治療薬開発に向けた取り組みと経済対策について。そして最後はオリンピックの開催に向けた決意で国民への共感を求めるといった内容で構成されています。下に全文を掲載しており、総理から国民へお願いしているところや、理解を求めているところ、また具体的な取り組みへの言及については太字にしました。こうしたリーダーの言葉に耳を傾けることなくして安易に批判することがないように、皆さんもぜひ一読していただきたいと思います。

 総理の会見についてですが私は動画のほうは見ていません。文字情報から得られる情報についての感想です。言葉は語り方によっても印象が変わりますので、語り方のニュアンスは分からず書いていることをご了承ください。

 さて、会見の内容についてですが新しい情報はなかったのではないでしょうか。私としては治療薬の具体名については初めて知るものもありましたが、それとてすでに公表済みのものと思われます。したがって新しい情報を提示するのではなく、これまでの情報をもとに政府の取り組みを示し、国民の活動の制限についてお願いし、今後の可能性を提示するというのが会見の目的ということになります。
 しかし、この会見ではその目的は十分に発揮されないのではないかと思います。その理由をいくつか書いておきます。
まず、一番最初のお願いの部分(太線参照)の「それぐらいの期間」がどの程度の期間なのか?「最大限の警戒」にもとずく生活としてどのようなことを想定しているのか?が不明瞭です。後に出てくるいわゆる「三密(密閉密集密接)」を避ける行動が最大限の警戒を指しているとは思えませんが、文章からはそう読み取ることができてしまいます。自治体ごとに状況が異なりそれぞれの地域によって「不要不急の外出制限」のレベルが異なるのはしょうがないと思いますので、自治体の呼びかけに従うようにお願いするのは妥当でしょう。一方で国とすべての都道府県に対策本部を設置して連携し「最悪の事態」も想定して全力を尽くすとありますが、最悪の事態がいかなるものかの説明はありません。これを明らかにしておくことがこのような会見において本来重要なことであると私は思います。会見からは政府の現状認識がいかなるものでそれに基づいて国民に何を求めているかがわからないと感じました。
 さらに国民に向けたスピーチでは見るものが納得し共感する言葉が必要だと思います。比較するのが正しいかどうかはわかりませんが、ドイツのメルケル首相はこの危機を乗り越えるために「連帯」と「感謝」を大切にしたいと述べていました。自己防衛だけでなくコミュニティの力を信じているというポリシーが彼女にはあったと思います。「連帯」や「感謝」は日本においても暮らしの中に根付いてきた大切な伝統です。住民同士だけでなく政府と国民の間にも連帯が求められている状況において、私たちがその感覚を失いつつあるのではないかということをリーダーの言葉から感じさせられました。
 薬の話はよく分からないので割愛します。で、経済対策の話です。国民生活の維持と経済対策として「国税・地方税の減免も含めたかつてない強大な政策パッケージ」「無利子融資の民間金融機関での取り扱い開始」「中小企業者向けの給付金」「思い切った生活のための給付」をやるということが表明されました。基本的にはどれも必要な措置だと考えられますので、こうした取り組みを積極的に進める姿勢を表明したことは良いとおもいます。ただし本来はこれらの取り組みの期限と規模が概略であっても明らかでなければならないはずです。実際の取り組みは出来るところから順番にということになったとしても、情報まで逐次投入では効果が薄いのではないでしょうか。いつまでにどの程度の規模でやるかを明言し、足りない場合は躊躇なく上積みするという姿勢を見せることが重要でした。また、ここで消費税のことに言及しなかったことは後の質疑の中で「消費税減税には消極的である」ことが明らかになるように、このまま10パーセントでいくのではないかと感じました。もしもそうなら残念です。財政出動についても会見自体からは十分なインパクトが伝わらなかったというのが私の感想です。

最後になりますが、会見の中で総理は経済のV字回復を宣言していましたが、コロナの前からすでに深刻な状態だったのですからV字にもどってもスタートラインにすら立ったことにはならない。さらに成長しそれを維持するという意味では(ルート記号)のような対策が必要であると付け加えておきます。

さて、みなさんはどのように感じたでしょうか?

<以下は総理会見 全文>
新型コロナウイルス感染症が世界で猛威を振るっています。感染者は50万人を超えました。最初の10万人に達するまで60日以上かかりましたが、直近ではわずか2日で10万人増加しており、まさに爆発的なペースで拡大しています。いくつかの国々では連日、数百人規模で死者数が増えており、増加する重症者に十分な医療を提供できていない、まさに医療崩壊ともいうべき事態も発生しています。これは決して対岸の火事ではありません。日本でも短期間のうちに同じ状況になっているかもしれない、それぐらいの期間をもって最大限の警戒を国民の皆さまにお願いします。
 これまでわが国では、専門家の皆さん、保健所をはじめ、現場の医療関係者の皆さんの努力によって、いわゆるクラスターと呼ばれる集団での感染のつながりを早期に発見し、しっかりとコントロールする、そうすることで何とか持ちこたえてきました。しかし足元では、感染経路がわからない患者が東京や大阪など都市部を中心に増加しています。感染のつながりが見えなければ、その背景にどれぐらいの規模の感染者が存在しているのか、知ることができません。そして制御できない感染の連鎖が生じれば、どこかで爆発的な感染拡大が発生しかねません。
 このいわゆるオーバーシュートの可能性について、東京では25日、小池(百合子)知事が、重大局面にあるとし、夜間・休日の外出自粛などを都民の皆さんに要請しました。千葉、神奈川、埼玉、山梨の4県知事とともに、イベントの自粛、人混みへの不要不急の外出自粛などについて、協力を呼びかけています。大阪や熊本でもこの週末の外出自粛が要請されています。私からもこうした自治体の呼びかけにご協力いただくよう、深く、お願いいたします。ひとたび爆発的な感染拡大が発生すると、欧米の例から試算すると、わずか2週間で感染者数が今の30倍以上に跳ね上がります。そうなれば、感染のスピードを極力抑えながら、ピークを後ろ倒ししていくとのわれわれの戦略が一気に崩れることとなります。
 まだ欧米に比べれば、感染者の総数は少ないと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私たちが毎日見ている感染者の数は、潜伏期間などを踏まえれば2週間ほど前の新規感染の状況を捉えたものにすぎません。つまり、今すでに爆発的な感染拡大が発生していていたとしてもすぐには、察知することができません。
 2週間経って、数字となって表れたときには、患者の増加スピードはもはや制御できないほどになってしまっている。これがこの感染症の最も恐ろしいところであり、私たちはこの恐ろしい敵と不屈の覚悟で戦い続け抜かなければないのです。その強い危機感のもとに、自衛隊も動員して水際対策を抜本的に強化しました。一昨日には改正特別措置法に基づいて、政府対策本部の設置を閣議決定いたしました。これにより全ての都道府県にも対策本部が設置されたところであり、自治体との緊密な連携のもとに、最悪の事態も想定しながら、感染拡大の防止に全力を尽くしてまいります
 国民の皆さんにも、不要不急の渡航の自粛をお願いいたします。そして集団による感染のリスクを下げるため、いわゆる三つの条件をできるだけ避ける行動を改めてお願いいたします。第一に換気の悪い密閉空間、第二に、人が密集している場所、そして第三に、近距離での密接な会話、密閉密集密接、この三つの密を避ける行動をお願いします。
 新学期からの学校再開にあたり、今週、文部科学省がガイドラインをお示ししました。教室の窓を開けて換気を徹底するなど、三つの条件を回避する対策をそれぞれの教育現場で徹底的に講じていただくことで子供たちの感染防止に万全を期す考えです。再開にあたっては、来週にも、もう一度、専門家(会議の)会合を開き、専門的な見地からご意見を伺う考えです。
 専門家の皆さんが、瀬戸際だという見解を示してから、1カ月余りがたちました。この間、三つの条件のように、わかってきたこともありますが、大規模イベントの中止・延期、規模縮小等を要請するなど、国民の皆さまには大変なご苦労をお願いしてまいりました。ご協力に心から感謝申し上げます。
 中にはこの1カ月でいわばコロナ疲れ、自粛疲れとも呼ぶべきストレスを感じておられる方も多いかもしれません。しかし、オーバーシュート(爆発的患者急増)が発生した欧米各国では、都市を封鎖したり、強制的な外出禁止、生活必需品以外の店舗封鎖など、強硬な措置を講じざるを得なくなっています。現在、大変ご不便をおかけをしていますが、それは、一層厳しい、このような強硬措置を回避するためのものであることをまずご理解いただきたいと思います。
 繰り返しになりますが、日本は欧米とは異なって、現状ではまだギリギリ持ちこたえています。しかしそれ故に少しでも気を緩めれば、いつ急拡大しても、おかしくない、幸いオーバーシュートを回避できたとしても、それはまさに、水際の状態がある程度の長期に渡って続くことを意味します。この戦いは長期戦を覚悟していただく必要がある。そのことを率直に申し上げ、感染拡大の防止に引き続き、国民の皆さまのご協力を賜りますよう、お願いいたします。
政府としても1日も早く皆さんの不安を解消できるよう、有効な治療薬やワクチンの開発を世界の英知を結集して、加速してまいります。先般、テレビ電話で実施されたG7サミットでも、G20サミットでもそのことを強く主張し、世界の首脳たちから賛同を得ました。
 わが国では、4つの薬について、すでに観察研究としての投与を開始しています。このうち新型インフルエンザの治療薬として承認を受け、副作用なども判明しているアビガンについては、これまで数十例で投与が行われています。ウイルスの増殖を防ぐ薬であり、すでに症状の改善に効果が出ているとの報告もあります
 『アビガン』には、海外の多くの国から関心が寄せられており、今後希望する国々と協力しながら、臨床研究を拡大するとともに、薬の増産をスタートします。新型コロナウイルス感染症の治療薬として、正式に承認するに当たって必要となる治験プロセスも開始する考えです。エボラ出血熱の治療薬として開発されていた『レムデシビル』については、日米が中心となった国際共同治験がスタートしています。
 そして、5つ目の有力候補として膵炎(すいえん)の治療薬に承認されている『フサン』について今後観察研究として、事前に同意を得た患者の皆さんへの投与をスタートする予定です。さらには現在、治療薬やワクチンなどの開発に向けて、大学や民間企業でもさまざまな動きが出てきています。
 これらを政府が力強く、後押しすることにより、あらゆる可能性を追求します。日本だけでなく、世界中を未曽有の不安と恐怖が覆う中で、日本は持ち前のイノベーションの力で希望の灯をともす存在でありたいと願っています。
 これまでになく、厳しい状況に陥っている現下の経済情勢に対しても、思い切った手を打ってまいります。
 昨日、来年度予算が成立しました。これによって、医療や介護など社会保障の充実、高等教育の無償化など、予算を切れ目なく新年度から執行することができます。
 加えて、この後、政府対策本部を開催し、緊急経済対策の策定を指示いたします。リーマン・ショック以来の異例なことでありますが、来年度予算の補正予算を編成し、できるだけ早期に国会に提出いたします。
 国税・地方税の減免、金融措置も含めあらゆる政策を総動員して、かつてない強大な政策パッケージを練り上げ、実行に移す考えです。
昨日まで7回にわたり、現場の声、地域の声を直接伺ってまいりました。さまざまな活動の自粛などに伴って、日本経済全体に渡って極めて甚大な影響が生じています。来月のバス予約は前年比で9割減。航空業界もすでに年間の営業利益が全て吹っ飛ぶぐらいの減収となっています。
 宿泊や飲食といった業界でも売り上げが8割、9割減ったところが多い。音楽業界ではイベントが中止となり、売り上げはゼロどころか、マイナスだという話もありました。
 先行きが見通せない中で、中小・小規模事業者の皆さんからは、まさに死活問題であるとの悲痛な声がある一方で、歯を食いしばってこの試練を耐え抜くよう頑張っていくという決意も伺うことができました。政府として、こうした窮状を徹底的に下支えし、地域の雇用、働く場所はしっかりと守り抜いてまいります。
 そして、こういうときだからこそ、人々の心を癒やす文化や芸術、スポーツの力が必要です。困難にあっても、文化の灯は絶対に絶やしてはなりません。
 ただ、どうしても感染拡大の防止が最優先となる現状では、まずこの難局を乗り切っていただくことに重点を置いた対策を進めます
 中小・小規模事業者の皆さんには、すでに実質無利子・無担保、最大5年間、元本返済据え置きという大胆な資金繰り支援策を講じてきたところですが、この無利子融資を民間金融機関でも受けられるようにいたします。
 さらに融資だけではなく、皆さんにこの困難を乗り越えていただくために新しい給付金制度を用意いたします。現下の厳しい現実を踏まえ、これまでにない規模で、前例のない中小・小規模事業者支援を実施いたします。
 仕事が減るなどにより収入が減少し、生活に困難を来すおそれがあるご家庭には、返済免除も可能な小口資金支援、税や公共料金の支払いの猶予などをすでに進めてきましたが、これに加え、思いきった生活のための給付を実施してまいります
 政府を挙げてさまざまな境遇の方の声に耳を澄まし、きめ細かな支援を行う考えです。そして感染の拡大が抑制され、社会的な不安が払拭された段階では、一気に日本経済をV字回復させていく。全国津々浦々、皆さんの笑顔を取り戻すため、旅行、運輸、外食、イベントなどについて、短期集中で大胆な需要喚起策を講じるなど、力強い再生を支援する考えです。
 世界が協調し、強大な経済財政政策を実行する。これが先般のG20サミット(20カ国・地域首脳によるテレビ会議)における合意です。世界の協調をリードするわが国としては、リーマン・ショック時の経済対策を上回る、かつてない規模の対策を取りまとめてまいります。
 国民の皆さんが、この夏の開催に胸を躍らせてきた。東京2020オリンピック・パラリンピックについては、やむを得ず延期し、遅くとも来年夏までに開催することとします。この夏に標準を合わせて頑張ってきたアスリートの皆さんには大変申し訳ない気持ちでいっぱいでありますが、世界の現状を踏まえ、ご理解をいただきたいと考えています。
 先週日本にやってきた聖火は、人類の希望の象徴として、わが国でその火を灯(とも)し続け、来るべき日に力強く送り出すことにしたいと思います。この聖火こそ、今まさに私たちが直面している長く暗いトンネルの出口へと人類を導く希望の灯火(ともしび)であります。人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして、国民の皆さんとともに、来年のオリンピック・パラリンピックを必ずや成功させていきたい、そう考えています。私からは以上であります。

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