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隠蔽捜査3【疑心】 今野敏
やはり”○○2”とか”○○3”とかのようにシリーズものを続けていくことは映画でも小説でも難しいということだと思う。少なくともスターウォーズのように最初から完結までのグランドストーリーがあって、それを分割してエピソードを仕立てていくならともかく、一作目が好評だったから二作目もというのは難しいのだろう。二匹目の泥鰌はいないという格言の通りというべきか。
隠蔽捜査3も残念だがその例に漏れない小説だったと思う。主人公の竜崎は警察官僚として現場で起こる犯罪と警察組織そのものと対峙しながら、自身の正義感と官僚としてのプライドをかけて闘う男である。しかし本作で彼が闘うのは若き女性警官への恋ごころであり、それに心奪われるあまり判断力の低下のみならず不眠に食欲不振から仕事の精彩を欠いていく。アメリカ大統領訪日の警備を任されているにも関わらずだ。
さらに残念なことが二つ。一つは序盤に出てくるやや軽微なアクシデントが決定的な意味を持っているという筋書きが隠蔽捜査2のそれとほぼ重なってしまうことだ。しかもその複線の描き方やクライマックスの展開が遠く前作に及ばない。さらに二つ目は竜崎の恋ごころの行方について、たまたま書店で買った禅の本を読んだら解決したというのだ、、、。
だいたい、前作もそうなのだが一作目とは異なり捜査は隠蔽されていない。隠蔽捜査というタイトルで書き続けるならば竜崎の役職は監察官あたりにして警察機構の中で隠蔽されるあるいは隠蔽されつつあるものを次々明らかにしていかなければならないが、所轄の署長では隠蔽することがないのだ。
やっぱりシリーズ物はむずかしい。タイトルとストーリーにずれが生じることもあるからだ。
その点で深夜特急は6巻まですべてで完結する構成とタイトリングにおいて秀逸だったんだなと思わされる。沢木耕太郎はほとんど長距離バスを乗り継いでおり深夜特急は”特急”列車ではないが深夜バスや高速バスというタイトルではなく深夜特急だからこそ読み継がれる小説になったのだろう。
しかし、私はあきらめの良いほうではないのでもう一冊ばかり読んでみようと思う。手軽に読むことができるし、刑事ドラマを見るのが好きな私にとってテーマは悪くない。また警察組織における官僚主義の弊害を破っていく竜崎の仕事ぶりが面白いのは本作でも踏襲されており、そこは楽しく読み進むことができるからだ。
金閣寺で時間とエネルギーを消費した私にはちょうど良いボリュームだったので、まあ良しとしよう。
今日は本の内容に比例してやや短めの感想となりましたが、読んでくれてありがとうございました。
次回もお楽しみに~
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