苺と円安
皆さんご存知の通り、円安が止まらない。
洋菓子屋的には、ドル高もそうだが、それ以上にユーロ高が酷いことになっている。
商社の決済がドル建てかユーロ建てかは各社違うだろうからなんとも言えないが、ヨーロッパからの食材を多く使う洋菓子屋にとってはもうお手上げ状態だ。
チョコレートの価格高騰が言われているが、もちろんカカオ豆の不作が一番の原因だろうが、チョコレートのメーカーはフランスやベルギー、スイスなどヨーロッパ諸国が多いので、円安ユーロ高というのも大きな原因だろう。
でも、今回はいちごの話。
夏場にはケーキ屋からいちごが消える?
これから夏から秋にかけては、基本国産のいちごは市場に出回らなくなる。というより、品種の関係で収穫できないからだ。
国産の夏いちごを使ったケーキを出すお店もあるが、もともと生産量が少ない上に、だいたい大手が押さえてしまうケースが多いので、一般向けに良質なものはなかなか流れてこない。
試しに数回、国産いちごを使ったこともあるが、正直値段と味が見合ってないという点と、供給が不安定(入ったり入らなかったり)だったこともあって、今はアメリカ産を中心に使っている。
「アメリカ産」となると、そう。先に述べた「円安」がモロに降りかかってくるわけだ。
今年が特別高いというわけでもなく、ここ2年前位から上昇基調になり、今年がMAXといった感じだ。
価格の感じからすると、クリスマスのピーク時に比べても高いというイメージ。この価格がおよそ11月中旬位の国産のいちごが出回ってくる頃まで続いてくる。
夏から秋に、ケーキ屋さんでいちごのケーキが減ってしまうのは、「国産のいちごでないものは使いません」というこだわりもあるのだろうが、第一はこの価格だ。
毎日がクリスマス並みじゃあやってられんよ、というのが偽らざる本音だ。
デコレーションケーキでの苦い思い出
ウチも夏場には一度、いちごを全く、というかほとんど使わないでやってみた年もあった。もう、20数年前だろうか。
この頃はアメリカ産のいちごも今ほどおいしくもなく、よく「きゅうり食ってるみたい」と揶揄される位固くて美味くなかった。
デコレーションケーキにもいちごを使わず、他のフルーツで飾るなどして販売していた。
ある日、一組の子供連れのお客様が来店して、デコレーションケーキを注文されようとした時、その子供さん(女の子だったかな)が、
「どうしてお兄ちゃんの時のお誕生日にはいちごのケーキで、私の時はいちごが無いの!」
と思いっきり泣かれてしまった。
お母さんは、「今の時季はいちごが無いから仕方ないよ」となだめておられたが、子供さんにしてみればそんな事はわからないし、ある意味「大人の都合」だから理解しろといっても無理だろう。
この時はそのデコレーションケーキに、ストックであったいちごをのせてあげて対応した覚えがあるが、この一件以降、夏場でもデコレーションケーキにはいちごを使うようにはしている。
昨今の話題の氷山の一角
昨今、「洋菓子店の倒産」のニュースが話題になっている。他人事ではもちろんないし、知っている人でもその憂き目にあった人もいる。
今回のいちごの話もほんの氷山の一角だ。またこの件についても書いてみたいが、一般に書かれている事、言われている事はほんの表面上の事だ。
近いうちに、夏場に「いちごのショートケーキ」は食べる事は出来なくなるか、食べれてもとんでもなく凄い金額で、それを提供できるお店で買う未来がもうすぐそこに来ている事は間違いないだろう。
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