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ある納棺師さんのご経験を、巷によくある”葬儀を巡るあるご家族のイイ話”で終わらせないために…

普段はイベント事や
大切な人を亡くした方のためのプログラムの
ご紹介ばかりですが

今回ご紹介するのは
知り合いの納棺師さんが先日ご経験された
あるご家族の納棺にまつわるお話です

読んでいただくと
お分かりになるかと思いますが
こうしたお話はとかく”イイ話”で語られ
そして消費されがちです

ですが本当に大切なのは
どんな場所や状況であっても
こうした配慮やご遺族に寄り添うのことの出来る
納棺師さんや葬儀社さんとのとの出会いが
どこにでもあるように業界が変わっていくこと
だろうとわたしは思っています

そのために
ご紹介した納棺師の方は
ある葬儀関係のアカデミーにて
講師として技法だけでなく
従事者としての心の持ちようについても
丁寧に教えられようとされています

先日ご紹介した
死化粧セミナーの講師ををされている
宿原寿美子さんも
そうした方のお一人です

こうしたお話や死背にに共感して下さる業界の方々
そして宗教者の方々が少しでも増えて下さることを願って
こちらのお話をご紹介させていただきます

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先日40代のお母さんの納棺式のお手伝いをしました。
闘病期間も家族と自宅で過ごされ、小学生の娘さん息子さんともお母さんの死をしっかりと理解しているように見えます。

準備をしていると、子供達が時々お母さんのところに来ては、鼻を近づけ匂いを嗅ぎ離れて行きます。

何だろ??
見た目はいつもと変わらなくても亡くなってしまうと口や鼻などから匂いが発生してしまいます。

しっかりと処置したけど、、、と心配になり、『何かいつもと違う?』と聞くと

『お母さんの匂いがない』

お母さんの匂いってどんな匂い?
と聞くとすぐに『お化粧の匂い!』という返事。
じゃ、一緒にお化粧してあげようと提案するとお姉ちゃんは『化粧ポーチ』を弟は『ヘアーオイル』を取って私のもとに走ってきました。

お気に入りのファンデーションと口紅。顔色が悪いのを気にしてつけていたチーク。
ヘアーオイルは海外の高級品でココナツの匂いがする。子供達は必死に説明しながらお母さんにつけていきます。

亡くなったお母さんは子供達と最後までたくさんの会話を交わして、たくさんのものを残しました。

徐々に部屋中がお母さんの匂いで満たされていきます。

それまで電話や葬儀の準備で忙しくすることで無意識にお別れを避けていたお父さんも、奥さんのそばに近づてお顔を見ることができました。

子供達が長い時間必死にお母さんの髪の毛に顔を埋めて匂いを嗅いでいるのをみると綺麗に清潔にすることだけが私たちの仕事じゃないなと思うのです。

私達、納棺師の持つ処置などの技術は、ご遺族の想いに気づく事で、ご遺体に対する作業ではなくその人にとって必要な時間を提供できる技術に変わるんだなぁと感じます。

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デス・カフェ@東京主催。ヒトやペットの区別をしない、死別・喪失のサポート、グリーフケアのお話をしています