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量子アルゴリズムを、「今」開発する理由

グリッドはAI開発事業の一方で、量子コンピュータソフトウェア開発にも取り組むテクノロジーベンチャーです。

2017年より量子コンピュータソフトウェア開発を開始し、2019 年 4 月には量子コンピュータ向けアプリケーション開発フレームワークとして ReNom Q をリリースし、2019年7月より、IBM Q Networkに参加し、IBMが提供する最新の汎用近似量子コンピュータを利用しながら、毎年数本の論文発表とともに新たなソフトウェア、アルゴリズムの開発を行っています。

 量子コンピュータの実機開発には乗り越えなければいけないハードルが幾重もあると言われている中、何故グリッドでは量子コンピュータ実機に先駆けてソフトウェアの開発に進めているのか。

今回は、量子コンピュータソフトウェア開発を進めるR&Dチームの斯波さんにその理由を聞いてきました!

08_斯波

ー 量子コンピュータって今どのような状況なのでしょうか? ー

斯波:「量子コンピュータの実機開発完成に向けて世界中で凌ぎを削っているところです。量子コンピュータは文字通り、量子の特性を活かして計算するハードウェアで、古典コンピュータ(従来のコンピュータ)とは全く異なる構造で動きます。

量子は、原子よりもさらに小さい物質です。その極めて小さな量子の特性を表現し維持し続けるのは、非常に難しく現在の実機ではまだまだエラーが発生してしまう状況なのです。 完全にノイズが発生しない状態の実機完成にはまだほど遠く、現在の実機はノイズも発生するN I S Q型と呼ばれています。」


 斯波:「量子コンピュータのハードウェアには量子ビットを動作させるために様々な手法があります。超伝導やイオントラップ、光などですね。
それぞれ特性があるのですが、グリッドが使用しているI B M Qの超伝導では、物質を冷却することで量子ビットを動作させる手法を用いています。その冷却具合は絶対零度に極めて近い値まで冷却して初めて量子ビットが動きます。」 

ー全然従来のコンピュータとは違いますね!グリッドはその中でもアルゴリズム開発を進めていますね。ー 

斯波:「はい、実機が完成してからソフトウェア開発をしては、到底遅いからです。量子コンピュータは古典コンピュータと異なる回路で構成されます。そのため、古典コンピュータで使用していたアルゴリズムは量子コンピュータ用に設計し直さなければいけません。その技術が非常に難しいのです。また、量子コンピュータが得意な計算についても研究開発がされています」 

ー量子コンピュータの得意分野ですか? ー

斯波:「皆さん量子コンピュータに、どのようなイメージをお持ちでしょうか。古典コンピュータの計算を全て量子に置き換えるという印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、業界内では量子コンピュータはあくまでも高度計算に特化したコンピュータとしての位置づけです。

例えば、会社から渋谷まで行きたいとしたら、どのような方法で皆さん渋谷まで行きますか?徒歩、自転車、タクシーなど思いうかぶかと思います。
でも、誰もロケットで行きます!という方はいませんよね。
確かに性能だけ見ればロケットが一番速く高性能ではあり、宇宙に行くにはベストですが、渋谷までいくのには相応しくありませんよね。

 目的に併せて適切な手段を選択するのと一緒で、何もかも量子コンピュータで解けば良いということではなく、量子によって計算させることによって効果的なものが一体何なのか見極めて計算する必要があるのです。」 

ーそれでは、量子コンピュータの得意分野は一体何なのですか?ー 

斯波:「実はそれも研究中なのです。量子コンピュータで計算することで、古典コンピュータよりも高い効果を発揮することを「量子超越性」と言いますが、この「量子超越性」の実証は殆どされていないのです。

もちろん、研究によって量子コンピュータで、この計算をすると効果的かもしれないという論文はたくさんあります。古典コンピュータ以上の性能を発揮する可能性は秘めているし、期待もされているのですが、それを理論的に証明できていない状況なのです。
なので、量子コンピュータを使ってどういった計算ができそうか、そしてどのような計算で量超越性が実現できるのか。こうした研究がソフトウェアでも実機開発と並行して世界中でされています。

ですから、量子コンピュータの実用化にはハードとソフトの両輪で進めていかなければいけません。」 

ーそのような中で、グリッドが行うアルゴリズム開発は具体的にはどのようなものでしょうか? ー

斯波:「グリッドでは主に量子シミュレータ、量子機械学習、量子最適化、量子モンテカルロ、量子動的計画法といった分野での開発を進めています。その中でも特に、グリッドがこれまで培ってきた機械学習の知見を生かした量子機械学習での研究に注力をしています。」

ー有難うございました!次回はグリッドが開発しているアルゴリズムについて教えてください!ー

 具体的な開発アルゴリズムについは次回に続く・・

グリッドの量子コンピュータ開発についてhttps://gridpredict.jp/our_service/quantum-computer02/






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