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Iustin Panțaの詩たち~その他の罪

Mircea Ivănescu ミルチャ・イヴァネスクの次に紹介するのはIustin Panța ユスティン・パンツァである。1964年に生まれた彼は当初電気工学を学んでいたが、1989年に革命が起きた後から文学の道を歩み始める。そして先進的な詩によって90年代最も有名な詩人としての名声を謳歌するのだが、2001年に交通事故でこの世を去ってしまった。今でも"永遠に若き詩人"と呼ばれ、ルーマニア国民から親しまれている。彼の詩の特徴は散文を多用するスタイルだ。私の師匠であるToni Chira トニ・キラさんによると、90年代にはprozopoemと呼ばれる散文詩が流行していたのだという。今回訳出した詩も正にその様式に沿ったものであり、詩と散文の融合から謎めいた雰囲気が醸造される様は魔術的だ。ということで拙訳ではあるが、ぜひ90年代におけるルーマニア語詩の響きを味わってほしい。

告白

彼女にひっきりなしに話していた、君はあまりに無邪気すぎるから僕は

実際よりも優しくあることを強いられていると;

彼女が何を言いたいのか 身振りで何が伝えたいのか分からない

ほとんど目立たない――

2階建ての家の向かいにある瀟洒な庭で 僕は瞬間に征服されてしまった;

重苦しい熱に、

拳を開いて鉛のボールの重さを感じる

手の甲で

墓石に刻まれた言葉が言うには、誕生の日と死の日、

2つの間には――中黒がある:それが生を意味する;

既に僕は言い終わっている 彼女の時計の反射が、

両腕の偶然の動きで、

目に入った時、黙らなくちゃならなかった

皆が席についていた、とてもフォーマルな恰好で、僕たちの間には大切な人々がいて、礼儀正しさにはキリがない、間違った雰囲気、かなり、重苦しい、巨大な家具、皮で装飾された座高の高い椅子たち、そこに座って何も話さない、特に嘘に関しては、出席する者たちへの賛辞と不在の者たちへの叱責。彼らは、おそらく、あちこちで僕たちの噂について話してるんだ。よく食べる、独特の貪欲さで以て、女たちも男たちももう仄めかすような官能の視線を互いに送っている、僕たちの中には上唇に玉のような汗が浮かんでいる者もいる。鳥が入ってきた瞬間。それはツバメだ、開かれた窓から入ってきて、コーヒーのポットに身体をぶつけた、幾つかのカップにも、大きな水晶の鏡にも、頬を越えて羽も当たってしまいそうだった。カーネーションの生けられた花瓶もひっくり返した。僕たちは皆その時黙っていた。動きもせず不穏な眼差しで互いを見ていた。鳥はしばらくもがいてから窓から出ていった。僕たちは少しの間そのままでいて、沈黙の中で互いを理解し、ある意味臆病に、何も起きなかったかのように自分たちの家へ戻った

そこでは瞬きもしなかった、だけど喋るのを止めた。

この輝きが僕から時計の文字の位置を隠したとしても

僕には手遅れで余計だと分かっていた

そこから立ち去り僕はここにいる、君の隣で、物語を紡ぎながら。

No.7と花々

彼ら2人は僕の右側で喋っていた、他の2人は僕の左側で喋っていた

そして2人は僕の前で喋っていた――

7人いる、彼らの肺からオーケストラが奏でられる

彼らは聞かれるために互いに叫びを向ける

そしてこれこそ彼らが食卓で黙る人に対するやり方なんだ

(何故ならそれが4つ目の素数だから)

もう1人が、皮肉にも、優雅に着こなすのは、ほとんど身体が隠れやしない服だ

耄碌した視線――7番目の隣に座り滑りこむ

そして言うには、今夜はもっとゆっくりラジオを点けてほしいと

笑う

彼らはやってきた沈黙の中で言葉を失う

(小休止はまるで切断された首から流れる血の筋

羊たちの――

もし僕がごろりと寝そべるなら花と同じ目線になるだろう。僕がそこに現れるまで花畑にはどれほどの素朴さがあっただろう;何て高貴な退屈……花畑はその真ん中にいるのがたった1人だった時よりは荒れ果ててはいない。冬:今日君は1本も花を送ってくれなかった、そう言った

彼らの血が流れるのは冒涜された場所だ。

まず血溜りは引き離された場所から形を成す

毛細血管の太い1本)

その他の罪

物象とは我が名の下に生まれた

そうでなければ世界は色を持たなかった、青もなければ、緑も、赤も、灰色も

そこここに橙か黄色の破片

もしくはカーキ色――

そして人々はコーヒーの代用品を飲み、着るのは

皮膚を模した服

クリスマスやイースターの日に

断食を行うというのは許されざる罪だ――

後ろから僕はその服を脱がせると、彼女は1つずつそれを落としていく、最初は公園に、次は僕が座っていたベンチに、他のは草の生えた路地に、そのせいで道が短くなっている、そして歩道にも、玄関の段差に、ホールと最後にはゼラニウムのある部屋に;全てを集めても、服を着ている以外の彼女を抱きしめられない、どんなに多くの愛への正体が官能的な動詞の分詞的名前がついた花の部屋で成されたことだろう。僕らが別れ、数日が経つその後に、君は椅子の手すりにプレゼントとして贈られたブレスレットを置きそれを忘れるだろう。僕が立ち去った時、椅子は僕を横目で見るだろう、四隅へ臆病そうに引っこみながら――君は完全に微動だにしない

あなたに羊の生肉の載った皿を渡す

それでも、もしブレスレットが椅子の手すりに置いてあるままだったら

繊細な手首と装飾の木材は同じものだ;

椅子と肘掛け椅子は同じものだ;

古い神が引退した後に残る王座と同じくらい空っぽだ、

その家来たちを罰しに行こう

善でも悪でもない者が許されることはない

原文:http://revista-euphorion.ro/iustin-panta-selectie-de-poeme/

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