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【What's Up greenz!】greenz.jp編集長の鈴木菜央に、最近の仕事と暮らしのことを聞いてきた

こんにちは、グリーンズ広報スタッフの日菜子です!普段はあまり聞けないけっこう深いところまで聞いちゃうnote限定企画「What's Up greenz!」。

グリーンズのメンバーって、どんな風に暮らしているの?
日々、どんな仕事や挑戦をしているの?
グリーンズに”いたい”と思う理由とは...?

などなど、ぐいぐいっと聞いていきますよ!「いかしあうつながり」とともに歩き始めているグリーンズを知ることができる内容もたっぷりなので、お楽しみに。

まず最初にお話を聞いたのは、greenz.jp編集長/NPOグリーンズ代表理事の鈴木菜央です。

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ー まず、最近の菜央さんの暮らしを教えてください。リモートワークになって、どんな風に過ごしていますか?

色々やっていて、まずはヨガですかね。体が固まっちゃうので、1日に2〜3回しっかり目にほぐしています。あと、ずっと忙しくてできていなかった庭の整備を毎日ちょっとずつ。いつも家にいなくてできない家事も、一日一回はお皿を洗う、部屋の掃除などしているかな。

あとはね、まだ買ってすぐなんだけれど、マウンテンバイク。海辺の方にある気持ちいい道に行ったり、近くの山に走りにいったりしていますね。

ー 改めて、菜央さんがグリーンズでなにをしてるのか教えてください!

肩書き的には代表と編集長になるんだけど、何してるのかなあ(笑) まあ、みんながのびのびと楽しくできるようにサポートすることかな。

何かをグリーンズとして表明するという時は矢面に立つし、組織が続いていくように植原正太郎くんと一緒に仕事をしてますね。

でも、大きく言えば、みんながのびのびとできる環境づくり、土づくりだね。

グリーンズ全体は森みたいなもので、その中で伸びていく人は邪魔しないし、自分で制限をかけちゃってる人がいたら背中をちょっと押すようなイメージかな。

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ー 菜央さんって「どんな人」だと周りから言われますか?

昔ね、家族ぐるみで仲良くしているライターさんがいて、ある時ライターさんが娘さんに「今日は誰に会いたい?」って聞いたの。そしたらその娘さんが、「ムーミンか、トトロか、菜央さん」って(笑)

マスコットぽいというか、妖精ぽさがあるのかなあ。

ー 最近、感謝したことはなんですか?

家族と一緒にいれることかな。僕は家で仕事ができるので、リモートワークの選択肢がない人に比べたらよかったなと思ってます。

新型コロナウィルスの状況は気になるけれど、忙しい日常を考え直すきっかけにもなったとも感じています。

うちの子どもたちも、学校でテストをたくさんやって点数で評価されるプレッシャーがなく過ごしていて、たまにはいいなと見ていて思います。もちろん、いい学校なんですけどね。

きっと今、ひとりで暮らすことを考えるとちょっと寂しいだろうなと思うので、家族が元気で一緒にいられることがありがたいです。

「いかしあうつながり」を広く伝えるために、学び方を学ぶ

ー いま、勉強していることはなんですか?

いっぱいあるなあ。まず全体的としては、たくさんの人が、「いかしあうつながり」をどう学び、実践するか? という「プロセス」についてですね。

まだまだかたちになっていない、「いかしあうつながり」という考え方を、枠組みに落としこんでいくチャレンジです。だからいろんな分野の学び方のプロセスを勉強していて、たとえば「〇〇ガイドブック」があると、〇〇に興味がなくても、読んでみる。

ボードゲームの説明書とか、イケアの家具の説明書とか、レゴの説明書とか、すごくおもしろいんだよね(笑)

ー確かに、いかしあうつながりをどう学ぶかって、まだ誰も形にできていないですもんね。

うん。本当に今は、関係性のデザイン全般を学んでる。

今までの人たちがどう新しい概念をつくって、社会に広げていったかを歴史から学ぶこともしたいと思っていますね。

あとは、マウンテンバイクでバニーホップっていうジャンプをする方法を学んでるよ(笑)

グリーンズは、全国の実験している人たちを見える化しつなぐ場所


ー菜央さんが、グリーンズに「いたい」と思う理由は何ですか?

そうですね。まずグリーンズは、「いかしあうつながり」を見える化をするための場所だと思っています。ちなみに「いかしあうつながり」を、「関係性のデザイン」と言い換えられると思うんだけど。

関係性のデザインという考え方は、古代ギリシャ哲学でも語られていたりしつつも、社会的に注目されるようになってきたのは、人間同士の孤立化、伝統文化との分断、自然との断絶が加速度的に進んだ、ここ50年くらいだと思うんだけど、その流れの中でパーマカルチャーのように体系化されたのものあるし、医療や教育の分野でも、「関係性のデザイン」と呼べるようなかたちで発展しているものもある。そして今でも、さまざまな分野で「関係性のデザイン」の試みがされていっていると思うんです。。

例えば、医療の分野では健康・未病のためにはコミュニティが極めて大切だという話で地域看護学という分野があったり、教育の分野では、教科を分けて、一つ一つ記憶させる教育から、全体をつなげて考えて、答えがない問題(環境問題など)を考える方向に進みつつあったり。

どちらも「関係性のデザイン」「いかしあうつながり」として見れると思っていて、これらを学び、つなげて「こんな動きがあるんだよ」って見せて、「一緒にやっていこうよ」って言うのがグリーンズなんです。

同じ目線を持っているんだけど知り合えていない人同士の声をつなげて、同じ場所に招待するような。物事を体系的に学べる場所になったり、社会が前に大きく向かう場所であったり、そうなれる可能性をグリーンズに感じているんだよね。

ー菜央さんにとってグリーンズは、人や考え方をつないでいく場所なんですね。

そうですね。

一方で暮らしの拠点である千葉のいすみは小さな街だから、見える化をしなくても農家も漁師も行政もすぐつながっていくんです。

都会だとイベントをやっても「30代半ば、IT系」とかって輪切りになるよね。でもいすみでは、ザクっといろんな分野の人が集まってくるし、協力もしやすい。

だから地域では、全体性があって実際に「いかしあうつながり」を実験する暮らしができると思っているんです。

例えば子どもが小さかった頃は、打ち合わせやイベントにも一緒に来ていました。そうすると、イベントに行くことは僕にとって友だちと会うことであり、地域の未来をつくることであり、子どもへの教育にもなっている。

妻も、彼女自身が地域の人たちと仕事をしていると僕と一緒にプロジェクトをやっている人に出会ったり話したりして、夫婦仲も立体的になっていく感じがするんです。これがね、夫婦関係には極めて重要なんだよね。

家族や友だちや仕事やイベントなど、全部に個別に時間を取っていたら大変だけれど、それがひとつの行動で全部叶うっていうところが、田舎で暮らすことのいいことなんだよね。

それが、全体性だと思っているんです。

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いすみは狭いがゆえに全体性があって、地域のことと未来のことを重ねながら暮らしていくことができて、一方グリーンズではもっとメタな動きをできる。現場と、つなぐ場所と、両輪が必要なんです。

どっちもあることで、グリーンズで得たことを現場に持って帰ってやってみて、その結果をまた全国レベルに戻すことができる。

だから僕は、グリーンズにいたいと思ってます。

20年前に出会った言葉から、「いかしあうつながり」が生まれた

ー「いかしあうつながりがあふれる社会」というビジョンについて、どうやってこの言葉にたどり着いたのかを聞きたいです!

これはすごく長い話になるのだけれど(笑)

ものすごく元をたどると、小学校2年生くらいの時に『風の谷のナウシカ』を観て衝撃を受けたことから始まっていて、その頃から自分の疑問とか環境問題とかに敏感な子どもでした。

そもそも僕は喘息持ちで、小さい時になんでこんな苦しい思いをするんだろうと思っていたんです。その時にきっと親からも、車とか工場とかの排気ガスが引き起こしていると教わっていたんだろうね。

ナウシカを観た時の衝撃は、作品中に描かれていた、「人間が出す毒が、人間自身にも還ってきている」「自然は人間の出す毒を引き受けて浄化しようとしている」というところにあったかなと思う。当時は明確に意味はわからなくて、大人になってからようやく言葉にできるようになったんだけど。

そこからちょっと端折ると、大学を卒業したあと、アジア学院という学校で、60人のコミュニティでほぼ自給自足、あらゆることをDIYする、地球の循環を感じる1年間を送りました。

それまで、食べ物がどこから来ているのかも知らない世界にいて、生きている意味もわからなくなっていたから、循環の中に生きる幸せをはじめて知った経験だったんです。

栃木の山奥では、季節ごとの風が吹いて、自分の体がどうやって生きているかを知って、生き物がどう生まれるかを知って、そこで育った作物を自分たちで食べるっていう暮らしをしていました。

ああ、「生きてる」っていう感覚がありましたね。自分は一人では生きていけない。仲間が必要だし、自然が必要。アジア学院のモットーは「共に生きるために」というもので、心底うなずけました。

ー「共に生きるために」ですか。

そう、今は共に生きていないわけですよ。自然を破壊して蹂躙(じゅうりん)して搾取して、それでも自然が優しく返してくれたから、今たまたま生きていられるんです。

自然と人だけじゃなくて、人と人もそうです。途上国からの搾取があるから、享受していることがありますよね。

だから、「共に生きるために」ということを考えていきたいと思ったんです。

でも、一方でこれをどうやって社会に伝えていけば、実践していけばいいのかさっぱりわからなくて、3〜4年してから今のように伝える側の仕事を始めました。

greenz.jpを立ち上げた時はポジティブニュースサイトから始まって、やがてグッドアイデア紹介サイトに変わり、素敵なストーリー紹介マガジンになってという道を辿ってきました。

東日本大震災が起こって「ほしい未来はつくろう」というコンセプトが広く受け入れて、さあ次はどうしようかなという時に、「共に生きるために」という言葉を思い出したんです。

ちょうどそのころ、90年代から知ってはいたけれど改めてパーマカルチャーを学び直していました。そこで気が付いたのは、パーマカルチャーは関係性のデザインをする、いかしあう関係性をデザインするものだということ。

まさに、共に生きることでした。

それを方法論にしてみんなができるようにしたパーマカルチャーって、本当にすごいなと思いましたね。でも、グリーンズのビジョンにすることを考えると、パーマカルチャーと言ってしまうとイメージが限定される気がしたので、パーマカルチャーをベースにしつつも、より開かれた「いかしあう関係」という言葉にしています。

先人が知恵をパーマカルチャーという方法論にしてくれたのだから、それを受け取って次の段階に高めたいという気持ちですね。

サステナブル(持続可能性)の次はレジリエンス(しなやかな強さ)とか、リジェネレーション(再生)とかって言うけれど、本当に世界がよくなっていく生き方とか文化を広げていくことがやりたいと思っています。

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菜央さんが担うのは、みんなが「いかしあう〇〇」をつくれるような、土づくり

ー菜央さんはこれから、どんな「いかしあう〇〇」をつくりたいですか?

僕自身がひとつの分野に特化すると言うより、「いかしあう〇〇」に当てはまる〇〇をみんながつくれるような環境をつくりたいですね。

誰かが成長することで、他の誰かを引き上げるような状況をつくりたいなって思ってます。


ーグリーンズでこれから何にチャレンジするんですか?

まずは、「いかしあうつながり」のメソッド化や、わかりやすいフレームの提供ですね。

あとは、みんながいかしあうつながりを学べる場づくり。成果を持ち寄ったり、ぶつかったらお互いに聞けたりする場所をつくりたい。

だから、「いかしあうつながり」について共に学び合いができるようにするというのがチャレンジかなあ。そのためのツールのひとつがいかしあうつながりデザインカードだし、greenz peopleのような共に学べる場もそうだし、greenz.jpの記事もそうです。

これからgreenz.jpも、読んで素敵だと感じる話だけじゃなくて、「やってみよう、使ってみよう」と思って体験に結びつくような記事が増えていくと思います。読んだ経験よりも、使ってみた体験が本質になるんです。

学ぶためのメディアですね。


ー 最後に、この記事を読んでくれた人におすすめしたい、本や映画はありますか?

難しいな〜。

絵本だと、『おおきなき』や『旅の絵本 ⅷ』はいいです。時々読み返して、ひたすらぼーっとながめて、楽しんでます。

あと以前に僕があとがきを書いて、greenz.jpでも紹介した『壊れた世界で“グッドライフ”を探して』もいいかもしれないね。

この本の筆者(マーク・サンディーン)は、オフグリッドや自給自足を試みる、3つの家族やコミュニティに住み込んだり滞在していくことを通じて、地球の破壊に寄与しない「グッドライフ」を探していきます。その中で見えてきたものは、なにかひとつの結果(たとえばここでは自給自足)を求めることが、結局のところ、他の課題を生み出してしまう、っていう難しさ。

でもこれって、幸せな生活を求めて働きすぎて家族と離れ離れになってしまうとか、誰にでも起きることだよね。この本が言おうとしていることは、「世界は全部つながってる」ってことと、「一つの結果を求める」ことが、幸せを遠ざけているんじゃないか、という視点。

その答えになりうるのが「いかしあうつながり」だと思ってるんですね。一つの答えだけを求めるんじゃなくて、参加する人々、関係する人々がニーズを満たせるかたちってなんだろう?そのためのデザインってどんなだろう?って考えて、つくっていく。

たとえば、グリーンズでは会議の冒頭に各自のその日の心と体の状態をシェアする、いわるる「チェックイン」をするんですが、なぜそうするかというと、会議のデザインをみんなのニーズを満たすものにできるから。限られた資源(ここでは時間)を活用して、できるだけ関係者の幸せを創り出すのが「いかしあうつながり」の考え方です。全体を考えながら、シンプルにしていく。そのほうが、結局のところ効率がいい。

たまたま、ここ50年くらいは、何かひとつ(多くの場合は経済)を追求することが幸せとされてきたけれど、そういう社会の形は限界を迎えていますから、あらゆる分野で、「いかしあうつながり」のような考え方が求められるようになると考えています。

ー全体を考えながらシンプルに、ですか。考え方のコツがつかめたら、いろんな場面に応用できそうですね!

菜央さん、ありがとうございました。


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鈴木菜央
NPOグリーンズ代表理事 greenz.jp編集長 ソーシャルパーマカルチャーを中心に実践してきたが、ひさびさに庭造りを再開。趣味はDIY。子どもの頃からのクルマ好き。音楽の趣味はナチュラル系かと思いきや、テクノ、アンビエント、ハウスが好き。

▽いかしあうつながりデザインカードについてはこちら!


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