心の囚人
こんにちは、川西長人です。
今日は所属している団体が企画する「哲学ウォーク」というイベントで、自然の中を歩いて来ました。
自然の中を歩くことで己の中の心と改めて向き合い、他者や己と対話し、考えを深めようという試みです。
昨夜の雨を吸い、泥濘む地面。
枯れて尚真っ赤に燃ゆる、紅葉の絨毯。
大人になるにつれて見つからなくなった、どんぐり。
花開く日を夢見て待つ、紅梅の蕾。
路傍に凛と咲く、スイセンの花。
久しぶりに触れた冬の自然には確かな息遣いと体温があり、「死と再生」のサイクルを感じさせられる空間でもありました。
……私はもともと、冬という季節が嫌いでした。
それは身を切るような寒さ故ではありません。
鬱という病気をやる前から私は太陽光信者であり、日照時間が短くなる冬は、どうしても精神的に不安定になることが多かったのです。
ですが、この間の授業で一つ面白い考え方を聞きました。
人は古代より、いろんな周期の中で生きている。
週という周期、月という周期、一年という周期。
それは単なる区切りではなく、考え方によっては、人の精神にも当てはめて言うことができる。
冬は静的であり、意識や感覚を自分の内に向けるのに適した期間。
春は新しい考え方の芽吹きが多くあり、
夏はそれが外に向かって大きく伸びていく。
秋はそうして育ったものを収穫しつつ、余分なものを刈り取り、
そうしてまた冬は、来るべき春に向けて自分の内部において対話を重ねる……
そう考えれば、決して冬は死や不毛の時期ではなく
むしろ一番、自分と向き合うのに適している時期かもしれない、と。
目から鱗というか、少し心の中で凝り固まった考えの一つが、解きほぐされていくような感覚でした。
知らず知らずのうちに、人は自分の“考え”で、自分を縛ってしまっている。
“物事はこうあらねばならない”
“その物事の本質とはこういうものだ”
認知の歪み、とまで言わずしても、人は誰しも自分の持ちうる価値観以上の物の見方ができないものなのでしょう。
だからこそ、より深い真実が知りたくなる。
マトリックスの作中では
“You are the prison of your mind”
“Free your mind”
という有名な台詞が出てきます。
私の好きな一節ではありますが、それはなかなかどうして難しいことでもあります。
「晴れの日は気分良く、雨の日は憂鬱」
「そう教えられたらそう思い込んでしまう」
いつだって僕は、結論を急ぎ過ぎているのだとは思います。
それはきっと、僕が自覚している以上に。
今日は哲学者の名言を一つ選び、自然の中を歩む中でその言葉について考えを巡らせ、最後にその内容について話し合うというイベントだったのですが
僕はソクラテスの「よりよく生きる道を探し続けることが、最高の人生を生きることだ」という言葉について話しました。
“最高の人生”というと言葉の持つパワーにやや気恥ずかしくなってしまいますが
生きる道を探し“続ける”というところが、哲学の本質に触れているようで僕は心惹かれたのでした。
旅はきっと死を迎えるその瞬間まで、一生続きます。
僕はこれからも歩むような早さで、一歩一歩地面の感触を確かめながら進んでいこうと思います。
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