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今日もまた 切り刻まれた 持参薬

PTPシートとは、press through packageの略のことで、薬をプチプチと押し出すタイプのシートのことだ。
このシート、1錠ずつに切り離せないように、あえて縦か横かの一方向にしかスリット(切れ目)が入っていないことをご存知だろうか。

昔は親切に縦横両方向から切れるようになっていて、ペキペキと容易にバラバラにできていた。

しかし、包装シートのまま飲み込み、食道を傷つける等の事例が発生した。いつからか(1996年以降)一方向にしかスリットが入っていない製品に変わって行くことになる。数年前(2011年)、再度通達があり、調剤する側もシートを切る方向に気をつける等切り離せないよう留意するようにとの文言もあった。このため、調剤する際、ハサミを入れる方向にまで気を使っているのだ。

そのような経緯を知ってか知らずか、結構な割合で、自分で1錠ずつ、あるいは1回服用量ごとに切り離している方がいらっしゃる。

製薬側は切り離せないように工夫をする一方で、いわゆる100均のような店では、薬を入れるのに向いた様々なケースが売られている。

みなさん、それぞれの立場で工夫し、お気に入り?のケースに、自分にわかりやすい方法でザックザクに切られた錠剤を入れて使っている。

あくまで自分目線で言わせていただくと、そんな方が入院して持ってきた薬、持参薬と呼ぶ、がバラバラにケースの中に入っている状態であるのを見たとき、「・・・」
何とも言えない虚無感に襲われる。

何錠持ち込んだか報告する、持参薬報告という、ことになっているので、単純に数えるのが大変。自己流でセットされているので、稀に間違えて入れられていることがある。

1錠ずつに切り離すリスクについて説明する。
するとほぼ全員から憤慨される。
「そんなことは絶対しない」
「そこまでボケてない」
「ずっとこれでやって来た」

その人のライフスタイル自体を否定しかねない状況。

今日も対応に苦慮する世渡り下手の薬剤師、私なのであった。

そして、こんもりと積み上がったザクザクのシートの角っこが鋭利に尖っているのを見て、これが食道に刺さったらえらいことになるだろうなぁ、と背筋を凍らせる薬剤師、私でもあった。


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