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シオンとアベ。(後編)

無事車検取得。いざ公道デビュー。
おめでとう。良く出来ました。あとは好き勝手にお楽しみください。

とは言え、壊れます。
だってトラだもん。と、言うか70年以上前のバイクだぞ。
ちょっと壊れる位当たり前だろ。
『ちょっと』の度合いは個人の感覚に依るところではあるけど。
免疫の無い人には『重度の故障』だとしてもそれを『かすり傷』だと痩せ我慢する為の乗り物なので、何が起きても『苦労自慢話大会』優勝を目指して歯を食いしばって下さい。自然と思い出沢山詰まります。

先週末に遊びに来た時はダウンチューブ下の1番太いボルトとギアボックスのマウントボルトが抜けかけて、もうちょいでエンジンとギアボックスを落とすところだったね。
バイクが炎上したり、フロントフォークが折れたりは聞いた事あるけどエンジンとミッション両方落っことすヤツはまだ居ないだろう。前人未到の領域にリーチかけたね。
流石!見どころアリ!やるね。シオンやるジャン!
トラってそう言うモンだから。ロッカーキャップ無くすのなんて挨拶みたいなモンだから。この際ドンドン落として、ドンドン注文してくれよな。

そうなんです。この若おじさん、見かけの通り、センスが良い。

イカすライディングフォームを研究し、導き出したイカすライディングフォームの極意が『つ』。

『つ』とはイカすライディング時に背中のカーブが作り出す究極の美シルエット。それが『つ』。

鋭角に鋭い『つ』こそ究極の『つ』。

『つ』を極める事に夢中になるあまり、背骨を痛めて通院生活を送った過去を持つ。常に声が小さいし、基本ネクラ。工場長に心酔してるので、俺と話す内容なんて「ウチボリさんがこう言ってました!」とか「ウチボリさんならこうですね!」と二言目にはウチボリさん。もちろん小声で。

うーん。独特の感性。若いとかジジィとかじゃないシオンの世界。

陰キャのシオンではあるが、彼のメカニックとしての資質はホンモノだ。好奇心のツボや仕組みを理解する鋭い洞察力。道具の使い方や外したパーツのサバき方が上手。独学のオリジナルな答えの導き出し方も好感が持てるし、事前にパーツブック開いてイメトレしてから実戦に臨むところもデキるオトコに見られる共通点だ。
『つ』磨いてないでもっと作業スキルを磨くべきだ。
彼には今後もスポット参戦のアルバイトスタッフとして当店をサポートして貰いますので皆さんもどうぞご贔屓に。

本人の頑張り次第じゃ、この世代のトライアンフビルダー1番乗りかもね。

君には期待してっから。頼むぞ!
と、そんなシオンが連れて来たのがアベ。
シオンもシオンだが、アベもアベだぜ。

グリズリー浅間山にて。

アベって、シオンの友達だからバイクに乗ってるだけ
ま、趣味の入り口なんてそんなもんで良いのだ。
ハマる奴はハマるし、ハマらなくても誰も困らんので、それで良い。
アベったら全然ハマってませんから。ウチみたいなトラ好きには堪らん環境に遊びに来ても(シオンの付き添いで)店の外(国道17号バイパス沿い)で海パン姿になり、日焼け(タンニング)してんだもん。トラなんて興味ありません。って顔して焼いてるオトコです。
それで良いのよ。わざわざ乗らんでも良いじゃん。乗りたい人は勝手に乗るから、アベみたいなタイプは乗らなくて良い。心底好きじゃなきゃしんどいだけよ。やめとけ。やめとけ。
アベにはその辺について事前に厳重注意してあるからコイツは心配ないな。満面の笑みで「オス!大丈夫っす!自分には無理であります!!」って言ってるし。 それで良い。

キャラはあるよね。


「よう!アベ!元気か?バイクには深入りするなよ!おまえにトラは無理だからな!」って。会うたび言ってた。だから俺、悪くないからな。
お前が言い出したんだからな。俺はちゃんと止めた。なのにお前、、、、

実はとってもピュアボーイ。


「俺も仲間に入れてくださいよぉ!」だってさ。バカだ。シオンの付き添いとは言ったってさ、一緒に千里浜遠征したりグリズリー行ったりしてんじゃん。もう仲間だろ?バイクが何であれ友達には変わりねえのに。俺の気持ち、全然伝わってない。

まぁでも。言い出したからには徹底的にやって貰います。
聞く話じゃどうやらバイク乗るのドヘタらしいので、スパルタ色の闘魂注入で完璧に仕上げてやる予定です。2022年が楽しみでなりません。鉄拳制裁イヤーの幕開けです。暴力とchopperは相性が良いですね。赤黒い血みどろのchopperが出来上がりそうです。うふふ。

あいつが言い出した事ではありますが、コッチも乗り掛かった舟です。
ワタクシ1ミリの妥協も無しで運命の1台に仕上げる所存です!
心血注いて作りますから、アベも頑張ってくれ。その価格たるやお前の年齢からすれば信じられない程の大金だ。
まかせろ。最高にcoolなchopperをキメてやるから期待しててくれ。
だけどそれだけのcoolなchopperを手に入れるのならドヘタのままでいられては困る。台無しにもほどがあるからね。

それじゃトラは振り向いてくれない。自分で選んだ相手なんだから振り向かせる為の努力なら苦じゃないだろ?なんだか分からない事ばかりで、散々ふりまわされたり、そっぽを向かれたり。フラれる事もあるだろうけど、オトコ磨いてればいつか振り向いてくれるから。トラってそんな感じのイイ女みたいな要素あるから。コッチの男っぷり試されてるからね。
いろんなトラブルとか苦労を楽しめるオトコになっておけばイチコロ。
そこはゼニカネの話しじゃなくない。ロマンとスリルが漂っているか否か。
どんな苦難もそれがロマンだと楽しむ姿勢で、リスクという名のスリルを味わってるうちに自然と漂っちゃうから。何かが確実に鍛えられるバイクだから。鍛わってくると備わって漂っちゃう。それがトライアンフ。

皆も若いうちに買っとけ。つまんない大人にはならないと思うぜ!俺んチの客が面白いのは、つまりそう言う事だから。それがトライアンフだから。
おれからは以上だ。またな!

本名スズキ。

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