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既設水力発電100%の電気は、再生可能エネルギー拡大に寄与するか?

昨年末に、東京電力エナジーパートナー(東電EP)と神奈川県が協同して、水力発電100%の電力料金プラン「アクアdeパワーかながわ」をリリースしました。

神奈川県内の県営水力発電所の電気100%で供給されるため、CO2排出係数もゼロとカウントされ、需要家側はその環境価値を謳うことが出来ます。

東電EPは、2017年に「アクアプレミアム」という水力発電100%を電力料金プランを既にリリースしています。こちらも、CO2排出係数をゼロとしてカウントでき、電力料金は4~5円/kWhほど上乗せされると見られますが、大手企業を中心に利用が広まっています。

水力発電を切り離した電力料金プランの課題は何かを考えると、まず同じ電力会社と契約する他の需要家は、切り離された水力発電分のCO2排出係数が増加します。よって、こういった電力料金プランがスタートすると、他の需要家にはしわ寄せがいくのです

また、水力発電は季節によって発電量が大きく変動すること、火力発電のような負荷追従運転を行わないことから、通常は需要家が使う電力のベース部分(1日を通じた最低ライン)のみの供給となります。従って、ベース部分を上回る電力需要には、従来の電力が供給されます。

そして何より、多くの大規模水力発電所は既に建設から相当期間が経過しており、発電コストはかなり低くなっています。そうした発電所からの電力に付加価値をつけて販売したとして、その付加価値分を何に使うかが特に重要視されるべき点です。

再生可能エネルギーの電力に付加価値をつけて売るならば、その追加収益は再生可能エネルギー拡大への再投資に使われることが期待されるべきです。しかし、投資回収がとうに終わっている既存の水力発電所の場合は、そういった事業者側のインセンティブが働きにくくなります。

アクアプレミアムの際は、まさに上記のような批判が出ました。これを受けてか、今回の「アクアdeパワーかながわ」は、神奈川県が保有する県営水力発電の電気を使うことを利用して、付加価値分が県の環境政策に使われるとしています。

県に入る収益が環境政策、特に再生可能エネルギーの普及拡大に使われるのか、「アクアdeパワーかながわ」による付加価値分がしっかりと県に支払われているのかは、今後注視していくべき点です。

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