夜のおやつ

 産後、癖になっている習慣がある。
 夜寝る前のおやつである。
 おやつは決まっているわけではないが、スナック菓子が多い。

 昔は、見た目や体重を気にして、夜はおやつを食べないことに決めていたり、妊娠している間は、そもそも気持ち悪くて食べれなかった。

 体にあんまり良くないことは重々承知しているが、なぜ辞められないのか。
 その要因に大きく貢献しているのが、息子の夜の寝かしつけだ。

 大抵は授乳後すぐに、またはしばらくほっとけば勝手に夢の世界に行ってきますしてくれるが、寝つきがひどい時は3時間ほどかかり、そのひどい時が2週間近く続くこともあったりする。
 普段、日中は、息子の息子による息子のための、「ワールドイズ息子」な生活を送っており、育児休業中で仕事に行ってないにも関わらず、自分の時間なんてまともに取れない。
 息子が寝てから初めて自由となり、好きな本や漫画を読んだり、録画したドラマを見たりなんかして、夜をたっぷり楽しんでから、名残惜しさを感じつつも床に着く。

 が、その自由時間がどのくらい確保できるかは息子が寝つく時間による。
 寝つきがひどい時は、その私の大事な夜の自由時間は10時、11時以降までお預けされ、解放された時にはもう疲れ果てて、リモコンのボタンを押すことさえ気だるくなっている。
 しかし、このまま1日を終えるのはあまりにも虚しい。朝から夜まで、労働基準法ガン無視の育児をやり終えた私を、心から労いたい。だが、もうこれ以上何もしたくない。どうにか手軽に労れないものか…となると、一番早く私に満足感を提供できるのが、お菓子というわけである。

 うちの家の食器棚の一番下の引き出しには、主に夫がストックしているお菓子がわんさか入っている。
 そのお菓子というのが、ポテチやおかき、ハッピーターンといった、サクサク食べれるのに、脂質たっぷり中毒性の高いものが主だ。
 こんな夜にスナック菓子なんて高カロリーなものを食すなんて…と思ってても体は正直だ。口の中は過剰に湿り、お腹はクルクル音を鳴らし、いつのまにか袋は開けられ、手が中に侵入し、1枚…もう1枚…あと1枚…やっぱりもう1枚…と、塩けを纏ったサクサクの塊が、休むことなく次々に口に運ばれる。
 幼い時から慣れ親しんでいるスナック菓子だが、同じ商品のはずなのに、今までの中で1番美味しく、まるでシェフこだわりの料理をいただくかのように、味と食感を堪能する。
 こうして私は満たされ、やっと今日を手放すことができるのであった。

 さて、今夜、息子から寝息が聞こえ始めた時間は、23時30分。
 そーっと寝室から抜け、キッチンに直行し、食器棚の前で屈む。
 カロリーや食後に発生する後悔は頭から追い出し、1日頑張った自分に1袋分の幸福を与えるため、今夜も引き出しを開ける。 
 
 
 

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