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石神井川上流地下調節池は本当に計画規模が必要か?(その1)ー南町調節池は溢水したことがない ー

 東京都は、石神井川の上流に1310億円の事業費を投じ約30万立方メートルの地下調節池を建設しようとしています。
 しかし、この地下調節池の取水口が設置される予定の南町調節池は、1980年に建設されてから1度も溢水したことがありません。
 東京都が公開した調節池の過去の貯水履歴を確認したところ、南町調節池に河川の水が流入するのは、年間に1.3回程度であることが分かりました。南町調節池は上の写真のとおり、河川の水位が堤防の半分くらいに達すると調節池に水が流入する構造となっています。つまり、年間の約1日を除き、河川の水は堤防の半分以下の水位で流れています。
 また、本事業の計画雨量(時間雨量65ミリ)を超える時間雨量75ミリの降雨があった時にも、貯水容量には余裕があることが分かりました。
 
 東京都建設局は、都内の観測所で記録された降雨量を公開しています。南町調節池に近い、芝久保と田無の観測所で記録された1時間あたりの降雨量と南町調節池に流入した水量の関係を調べたところ、深い関係性があることが分かりました。時間雨量75ミリの降雨は、たいへん稀な豪雨でありサンプルが1つしかありません。2006年9月11日に75ミリの降雨(芝久保と田無の観測所の平均)がありましたが、この時でも南町調節池の貯水量は10000立方メートルであり、調節池には2割程度の容量が余っています。

南町調節地の貯留量と芝久保と田無の観測所の降雨量平均(mm/h)の関係


 南町調節池の貯留可能容量は、12000立方メートルです。将来、温暖化に伴って雨量が増加した場合であっても、南町調節池の25倍もの容量の地下調節池は過大な規模ではないでしょうか。 今後、さらに激しい降雨に向けた対策が必要であったとしても、上のグラフで示した過去の履歴から、2000~4000立方メートルの容量を増やせば、十分に溢水対策が可能ではないでしょうか。

 また、大規模な地下調節池が完成するまでの10年間は事業効果が得られません。さらに重大な問題と思える点は、南町調整池が工事中のときには、南町調節池の使用ができなくなり、河川のこの付近の治水レベルが低下することです。
 過大な規模の地下調節池を10年間かけて建設するよりも、河川上流域の治水性能を十分に確保し、工事中の治水レベルも下げることのない対策があるのではないでしょうか。例えば、南町調節池の路盤下に透水方式で雨水を貯められるようにする対策であれば工事期間は短期間で済みます。また、調節池周囲の柵を防水機能があるフェンスにするなどの対策を行う方法であれば、工事中の治水レベルを下げることがありません。
 過去の貯水量と降雨量との関係を見ると、そのような方法で65ミリの降雨には対応できるように見えます。その方が、はるかに早期に効果を得られる上に、コストは比較にならないほど安価です。

 計画されているトンネル式地下調整池は、超過確率1/10の65ミリの降雨の対策のために必要と東京都は説明しています。本当に超過確率1/10の65ミリの降雨で南町調節池は溢水するのでしょうか。過去の75ミリ/時の降雨(芝久保と田無の観測所の降雨量の平均)でも溢水していないことは、上で述べたとおりです。また、超過確率1/10の降雨が44年間(南町調節池が出来てから現在までの年数)にわたって降らない確率を単純に確率計算すると、1%未満です。

 やはり東京都は、計画中の地下調節池が適切な規模であるのか、十分に分かり易く都民に説明する必要があるように思えます。

※ 筆者は、正確で中立的な議論を望んでいます。
  このため、もし上記の執筆に誤りがあった場合やご意見がございましたら、是非、筆者(2024naturegreen@gmail.com)までご連絡下さい。



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