建設機械化史総論27 第4期(建設機械整備費の意味するもの)
1.5.2建設機械整備費
9.建設機械整備費の意味するもの
建設機械整備費設定を主張した時の大義名分はあくまでも建設省直轄事業の合理化であり、その重要な一環としての機械化であった。しかしながら筆者の本当の狙いは、建設事業全般の機械化と国産建設機械工業の振興にあったのである。以下筆者の考えを述べて見たい。
(1)建設事業の機械化
既に述べた如く筆者は内閣技術院時代に航空基地の急速設定の研究にタッチして建設機械の必要性及び機械化施工の重要性を認識して以来非常に興味を持ち、研究組織のみは敗戦後も温存し、細々ながら時の到るのを待機していた形だった。たまたま経済安定本部が設置され、公共事業全般を運営し、予算を扱う立場に立った時、何日かは建設機械化を推進しようと心に誓っていたのだった。
ようやく河川事業の遅々として進捗しない原因が建設力、特に建設機械のほとんど皆無に等しい状況にあることを知り、この事実を大義名分に樹てて建設機械整備費の設定に成功したのである。河川及び道路については予算化することに成功したが、筆者はなにも河川や道路の機械化施工のみで満足するつもりはなく、公共事業では他に港湾、農業等の建設の機械化をもいずれは推進するつもりだったし、また来るべき電源開発事業の機械化施工をも推進して行きたいと考えていた。建設省の直轄事業を採上げて先ず建設の機械化の第一歩を踏み出し、これを挺子として他の建設事業の機械化を推進するつもりであったし、当時の状況としてはこれ以外に建設機械化を進める途が無かったから、この方法をとったのである。くれぐれも断っておきたいのは、我々は建設事業全般の機械化を目的としたのであって、決して一建設省の建設機械化のみを目的としたのでは無いことである。
(2)建設機械工業の振興
敗戦の結果日本は国土の半を失い、この貧弱な資源と狭小な面積に8千万の人口を養って行かねばならなくなった。しからば日本人は何をもって生活してゆけるであろうか。筆者はこう考えた。わが国に豊富にあるのは天与の資源である水である。すなわち水力による発電事業を起し、得たる電力を以て化学工業を振興して化学製品を輸出することと、機械工業を振興して、たとえ原料は外国に仰ぐとしても機械の加工により、技術を海外に売ること以外には我々の生きて行く途は無いと確信した。建設機械工業は今の所見るべきものは無い。しかし建設機械化の推進と共に建設機械工業も漸次振興され、その製品が充分使用に堪えられる様になれば、東南アジアの開発に一役買うこともできようし、輸出品目としても有望である。
これは日本の生きる道とも一致するし、従って国産建設機械の育成はやり甲斐のある仕事である。 建設機械整備費の意味は以上の2つの目的を以て設定されたのである。
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