建設機械化史総論29 第4期(ブルドーザ)
1.5.2建設機械整備費
10.建設機械化の重点
(1)ブルドーザ
ブルドーザは三菱重工業のBBII型9tを10台、小松製作所D-50型を10台、及び小倉製鋼KTC型14tを4台を購入することとなった。戦争中はブルドーザを航空基地急速設定用として陸海軍がその製作を奨励したのでメーカーも、小松製作所、久保田鉄工所、新潟鉄工所、羽田精機、鐘ヶ淵ディーゼル、加藤製作所等があった。戦後農林省の開拓5ヶ年計画の機械開墾の華々しかった時代にもこれらのメーカーはトラック並びにブルドーザメーカーとして活躍していたが、例のブラウン旋風のためこれらメーカーの大部分は非常な傷手を受け、小松製作所以外はすべてトラクタの生産を中止してしまった。小松製作所すら、一時はトラクタを中止して紡績機械その他に転向せんとしたのである。昭和22年の9月頃小松の山本房生君が訪ねて来て、ブルドーザを続けて行きたいが、ブラウン旋風で潰滅に頻している、何とかトラクタ工業を存続し得る措置を講じてもらいたいと真剣になって口説かれ、筆者としてもトラクタ工業の中止は日本の将来にとって不幸だからできるだけの努力をして見ようと約束したが、これも筆者が建設の機械化を強力に推進しようと決心した有力な原因の1つであった。 三菱重工業は戦後、機械開墾のためBBI型を製作していたが、同じくブラウン旋風で打撃を受けた。しかし元来中戦車製作の体験を豊富に持っていたので、その技術を活し得るトラクタ工業に進出するため、ブルドーザの製作を希望していた。我々は三菱の技術を信頼しブルドーザ10台の製作を注文した。これがBBII型9tブルドーザである。
小松製作所はブルドーザについてはわが国における草分けのメーカーであるので、やはりD-50を10台を注文した。他にブルドーザの製作に熱意を有する小倉製鋼のKTC14tブルドーザ4台を注文した。我々はこれら24台のブルドーザの性能、成績について多大な期待をかけたのである。小倉製鋼のKTCが最も早く現場に入った。2台は大過なく使用に堪えたが2台は大故障を起し、製品としてはまだまだ不安定なことを示した。次で小松のD-50が現場に入った。D-50は一般に使用に堪え、故障はあったが、修理しながら使えば辛うじて稼働を続けられ、当時の製品としては一応及第点をつけることができた。
BBIIができ上ったのは昭和24年3月頃と記憶する。漸く23年度内に現場に入り、その成績について非常な期待を抱いていた。然るにBBIIは何れも100時間と稼働しない中に全部、大故障を惹起(じゃっき)し使用に堪えず枕を並べて討死したのである。昭和24年5月筆者は高木、中岡両君と一緒に九州地建の現場に行き、修理も利かすに堤防の下に半ば分解されて放置されていたBBIIを見た時は茫然とし三人共堤防に腰を下したまま暫くは口も開けなかった位であった。何か根本的なミスがあるのでは無いか、と気を取り直し精密な調査を行い、その原因らしいものを見当つけた。帰京後、三菱の関係者に苦言を呈し、三菱として今後ブルドーザを続けて製作するや否や、続けるとすれば単なる戦車の経験のみを誇り建設機械の特殊性を認識し、謙虚な心で根本的にブルドーザと取り組まねば、成功は覚束なしと極言し、覚悟を促した。期待が大きかっただけに、それを裏切られた我々の気持は憤りと悲しみに打ちのめされ、強い言葉になったのである。また建設機械整備費そのものが猛烈な反対を排除して成立した経緯があり、失敗すれば我々一蓮托生で身を退く決心を固めた上で始めた仕事だし、我々が身を退くのはいとわぬが、せっかく緒についたばかりの建謝機械化運動が挫折するのは日本にとって不幸だと感じ、ブルドーザは建設機械化の主役でもあるからその受けた打撃は大きかった。当時、三菱本社機械部にいた猪瀬道生氏はそもそも初めに建設省に対しブルドーザの製作を希望し、それを実現せしめた最も熱心な技術者だったが、今回の事態に対して深く責任を感じ、三菱本社と協議の結果、三菱としては今後あくまでもブルドーザの製作を続けていきたい意志を明にし、故障したブルドーザに対してはすべてこれを工場を引取った上、全面的に修理することを申し入れた。その頃、三菱は労働争議の傷手未だ消えやらずブルドードを製作した下丸子工場はジープの修理工場に接収されて苦しい中を、大井工場を建設機械専用工場に切替え、大きな犠牲を払ってBBIIを苦心の末充分使用に堪えるまでに修理し、流石大三菱の名に恥じぬ再生ぶりを見せた。この間における猪瀬氏の物心両面にわたる苦心、設計陣の必死の努力に対しては私達も深く敬意を払っている次第である。その後、BBIIIが生れ、BBIV及びBFの製作に迄発展したことは既に周知のことである。
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