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音楽が売れるとコンタクト屋が儲かる

 私は普段メガネをかけている。

 しかし20年近くメガネであっても、自分に似合っているとはとても思えない。音楽活動にあたっては、メガネではサマにならない(私は)と思っているので、コンタクトレンズをする。当然毎日コンタクト、とは比較にならないほど消費が遅い(ワンデイタイプの話)。

 そんな私の消費スピードなど露知らず、某コンタクト会社から、値引きのクーポンメール(20%オフ)が毎日送られて来る。そんなに送られてはかえって逆効果である。とにかく毎日届くので、実質いつでも割り引くのに変わりなく、会員なら常時割引が効き、普段は全く知らせがない方がよほど好印象である。実際は私の前回購入履歴からあり得ないほどの歳月が経っているので、「あんさん、もうコンタクト切れとるやろ?はよ買いに来てやぁ」と、メールが送り続けられているものと考えられる(なぜ関西弁かは不明)。
ただそんなことを言われても私のコンタクト使用頻度は急に上がったりしない。音楽がバカみたいに売れてツアー。クセ強キャラでお茶の間引っ張りだこ。かわいい彼女が出来て、コンタクトを所望される…どれも清々しいくらい見通しゼロ。生活変化の気配が微塵もない中、私にさらなる追い討ちをかけるよう、コンタクト買え買えアピールがメールに留まらなくなってきた。

 ある日商店街を歩いていると、例のコンタクト屋の白ジャンパーを着たお姉さんがいる。あぁと思い、軌道修正して距離を取り通り過ぎようとしたのも束の間、お姉さんはメガネの私をすぐ見つけ、あっ!という顔をしてスルスルスルーッと人ごみをすり抜け、「クーポン券お配りしてまぁーす!!」と私の前にクーポン券をヌッ!と突き出してきた。「君いま、あっ!ちゅう顔したな?!」と思わず水曜どうでしょうの大泉洋氏のごとく追及したくなったが、「いえいえ、私コンタクトしませんので~」という愛想笑いで、会釈してやり過ごした。他にもメガネの人間は沢山いたではないか。なぜピンポイントで私なのだ。こいつならクーポンを否応なく受け取る、またはこいつはコンタクトをズボラで買いに行けてないのだろうと推察したのだろうか。メガネをしていれば誰でも対象になるということで納得して済ますが、話はこれだけで済まない。

 よく行くスーパーで毎回Tカードを出すのだが(公言するのは恥ずかしい)、レシートの後にクーポンが発行されることがある。頻度で言うとひと月に1〜2回ぐらいだろうか。レジの回転率を落とし、レシートロールを消費してまで発券されたそれは、残念だが使用する機会のないものばかりである。
最近クーポンが出て、いざ渡されて見れば『コンタクト、20%オフ』と書いてある。一瞬目を疑ったが、どう見てもコンタクトレンズが20%オフ…
毎日スワイプして消しているメールと同じ20%オフ。これが30%オフ等であれば、私も戸惑うことなく懐にそれを納められ、購買意欲も多分に刺激されるというものだが、いつもの20%オフ。もう最初から20%オフで売れや!と呆れながら、袋詰め台下のゴミ箱にシャッとそのクーポンを投げ捨て自宅に帰ると、おや?ポストにDMが届いている。皆さん、もうお分かりだろう。
取り出して見れば、『コンタクト20%オフ!(ご家族も)』のDMであった。
ここまで来るとD(大)M(迷惑)である。

 読者の方には、スーパーのクーポンやDMぐらい我慢して、メールを配信停止すれば良いと思われる方もいるだろう。一理ある。しかしいまさらそんなところには引き返せない。これで仮に停止措置を取ったとして、メール配信設定こそが割引を受けられる権利という場合がある。いざコンタクトを買いに行き「メールの設定がされていないので、割引はご利用頂けません」などという事態は絶対に避けねばならぬ。その場で設定し直すのも恥ずかしく、無性に手間取る可能性もある。しいてはそのまま割引なしで買って引き上げ、帰って来てから延々と激しい悔恨に苛まれることが想定される。いままで何億と消えてきたクーポンメールの犠牲さえもが無駄になってしまう。
考えただけで恐ろしい。

 そんなこんなで気を煩わせながら、亀のような消費のコンタクトストックも、いよいよ底が尽きた。眼科に行き、買って来なければと思いながらこれを書いている。私だってこれまで好き好んでコンタクトを使用していなかったわけではないし、コンタクトを使うリアルの充実を望んではいた。これでまたまとめ買いした後の未来は…であるが、初詣で賽銭を投げるような気持ちでコンタクトを購入して来たい。

追伸、ドンキで処方箋なしに買えるコンタクトを見かけた。あれはどういうカラクリだろう。法律に背くのだろうか。ドンペンの陰謀か。詳細求ム

#エッセイ #偏屈で怠惰な社説

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