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毎週ショートショートnote【入浴委譲】

 「え?まじなの?」
  リサは高校生になってもまだ父親と一緒に入浴するという。
 「うちのパパ、お風呂嫌いなの。小学生の時から一緒に入ろって言わないと入らなかったから」
 「それにしても変よ、やっぱり」「そうかなあ?」
 リサは首をかしげている。やっぱり、リサは天然だわ、天然温泉だわとミサキは思った。

  その父親の方から、一緒はマズイんじゃないかと言い出したそうだ。
 「オレの入浴権をお前に委譲する」と宣言したらしい。オレは風呂には入らないから、代わりに入っておいてくれと。
 「代わりにって何よ?」「ああいい湯だったって言ってくれたら、オレも風呂に入った気になるからって」 
 リサの天然さは親譲りのようだ。
 「んで、どうするつもり?」「だからね、入浴サービスに頼んだの」
 「え? ディサービスの?」「そうなの」「リサのお父さんて何歳?」
 「80歳よ。65歳の時に出来た子なの、私」「わお。それは安心ね」
 「でしょ。私、足をすべらせてパパを湯船に突き飛ばしちゃったからね」 
 どうりで、一緒はマズイはずだ。

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