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渋谷

渋谷横丁で一杯ひっかけた
この「ひっかけた」この言い方が好きだ
何となく呑んべぇプロ、な、感じが妙にイカしてる。「イケおじ」と同義語くらい格好いい
そんな格好いいイメージを持ちながら日曜日の蒼暗い空と対照的な提灯に彩られた一軒の居酒屋の暖簾をくぐった。
ひとりの渋谷の居酒屋は冷水をひっかけられても過言ではない。
その一軒は、たまたま若い女の子がメニューを持って落ち着かないように立っていた。通り過ごしたものの、特段お目当てのお店や食べたいものもなかったので、ススススッと後戻りしてお姉さんに「ひとりでもいいですか?」と、きいた。駄目ですって断る飲み屋なんてない事を知りながら。
接客に慣れていないのだろう、ぎこちない笑顔と同格の案内でちょうどよく空いていた入ってすぐの一席をみつけ「ここでいいですか?」と言われた。隣にはこれまた若い女の子が二人恐らく相談話と思われるような内容で盛り上がっていた。逆にここでいいのだろうか?そう思いながら座りMENUを眺めた。
目をあわせようとしない店員と、全く動じない私との攻防戦は私が勝利した。チューハイは得意じゃない。でも、きっと、面倒なものは頼んでほしくないだろうな、と妙に気を使いながら一番無難なグレープフルーツサワーを頼んだ。ツマミと適度にそこそこの値段で凝ってないもの、簡単なものを選ぶ。
ここの時点で、わたしはひっかけてない。イケオジっぽくもない。

目の前に広がる飲み屋の風景は
私が思い描いた
ひっかける 世界ではなかった
若者がお洒落を装い
はたまた外国からの観光客がただの飲食店代わりに座り ついでに酒を飲む
そんな空間に身をおいてただ壁紙の
「オススメ甘えび200,円」
ばかりが目についた

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