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季節の変わり目を語りあう

昨晩の雨も上がり
夕方からの晴れ間に合わせて外気が冷たく感じた
おもえば、まだ六月、とはいえ月末

梅雨が始まっていないのはびっくりしたけれど
こんなもんか? 
これが普通だったか?
たしかに六月開始の梅雨は長い梅雨って報道されていたような……

はじまりは意識したことがなかった

だいたい長い年月を生きているなかで
梅雨明けは海の日くらいが平均的だった記憶がある
季節は体感よりも暦で判断する
昔に人が決めたのならそうなのだろう
っておもう

いくら暑くても、まだ夏はきていない
気候はあてにならない
いくら寒くなっても 夏はおわらない
暑さがぶり返してニュースも困るだろう。
風が変わり、空気の香りに季節の変化を感じること
と、暦上の季節の変わり目はだいたい合致する。

夏の終わりを感じることはできた
日差しと風の感じ独特に変化するんだ。

その微妙な加減を、「そう」と同意してくれた人がいた
たまたま仕事で一緒になった女の子だった
外回りからクーラーのきいた事務所にもどってきて
暑いあついと愚痴をこぼすなか
でも、風が……って話をちょろっと口にしてしまった
何言ってんの、とだいたい
私の意見は否定されるか、馬鹿にされて終わるので
あんまり本質は話さないようにしていたのだけれど
つい、口がすべった

「あーわかります」
え?
振り返った
他部署から研修にきていた子
ちょっとだけ年下なんだけれど
バッグや、鍵に、大きなぬいぐるみ的なキーホルダーをつけていて
先輩方からは、成人して結構な年齢なのにあんなのつけるか?
って揶揄されている

ご家庭では、ひとりっ子でだいぶ甘やかされてきてるらしい。
そんなんで学力はそこそこよくて、それなりの部署に在籍しているのだが
何分、社会経験になかなか乗っかれないらしく
わたしのいる、この部署に一時的にお預かりしている状態らしい

転職組なので、よくわからないけれど
ふるいにかけられている段階なのかもしれない

そんな彼女が
この訳のわからない言葉に敏感に反応してくれたのだった。

うだるような夏を浴びて歩き回り、帰社時間を記入したホワイトボードを思い出し、汗と焦燥感を感じつつ駅のホームで日差しを避けて電車を待つ。
気だるい夕方に近い時間帯
湿気のような夏を感じつつ、一瞬それが通り過ぎていくような風が髪をなびかせる。(夏が終わる)
それを感じたのが、ちょうどお盆を過ぎたころ。
海はクラゲが発生して波も荒くなる
幼いころ連れられた海水浴は、体中がヒリヒリとした
日焼けと、無数のクラゲがわたしのからだに感触を残した
あれもお盆過ぎだったと思う
そんな、微かな「夏の終わり」を風から感じ取れるようになったのはいつごろからだろう

その風の変わる瞬間を、肌で感じ取って「風が違った」を共感してくれたのが、だれからも「ダメ」とハンコを押され、厄介ばらいされるように回されてきた年若い彼女だ。

彼女を見る目が少し変わったかもしれない。
こんなふうに、感じることに共感してくれる人間はめったにお目にかかれないので大変貴重である

外れてしまうのは仕方ない。
多くの人は感性を隠して社会に適応しているのだろう
現実離れした世界はどこか遠くの世界の出来事だと思っている
画面を通した有名になった人の
限りなく空想の世界には感嘆して「いいよね」とか「すごい」とかいう癖に
全然関係ない、自分よりできの悪い人間が言う世界は
「あたおか」だったり、「いみふ」の世界になる

違いは、
認められるかどうか

認められるには多くの人の心へ残るような力と
その場所が必要なのかもしれない

少なくともわたしが居るこの場所では
きっとピカソすら埋もれてしまうだろうな

そんなふうに卑下して口をつぐんでしまう

自分が優れているとは思わないけれど
人の感性やら何やらを笑いものにする社会はどうかとも思う
他者を認めないのは優越なのか?
それとも単純に認めたくないだけなのか?
わからない

少なくとも、この職場では感性は必要ない。
あるのは「数字」現実。実績。
それが達成すれば、おそらく夢物語くらいは聞いてくれるだろうな。

居場所を求めて、ありとあらゆるジャンルのコンテンツが溢れる
探し出して其処に入り込んだからってコミュニティーが違えば
ここと大差ないと思う

だったら
わたしはひとりでいい
この彼女のような人が時々現れるのを待つのがいい

まるで肩をトンっと叩かれた時のような
さわやかな感動が心地よい
と、わたしは日々暮らしている。

夏の終わりを制覇したので
今年は夏のはじまりも意識しようとしてるが思うようにはならない
初夏は何となく感じるけれど、夏本番は難しい。
蝉がないたころか?
分かるようになる頃にはいくつになるんだろう?
まあ、その前に
梅雨の開始も意識してみよう。
まだはじまっていないのを気が付かなかったのだから。
わたしも、まだまだ。

そういえば、あの彼女だけれど
その後、頑張って現実世界を制覇し(か、どうかはわからない)
無事にもとの優秀な方々が集まる職場へ戻っていった。
その後も、名簿には名前が残っているので辞めることなく頑張っているようだ。季節変わりの風の違いをもっと語りたかったが、もう二度と会うこともないだろう。

次の誰かが現れるまで
わたしは、またひとりで季節を感じている。





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