元気モリ子

ショートエッセイ!’96

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  • 食べ物がでてくる話

    お腹が空いている人も空いていない人も読んでください。

最近の記事

健康なお肉

わたしの父は獣医さんである。 と言っても、今では実家で腰をさすっているただの爺だ。もうしばらく会っていない。 父はよく、食卓で本日の食材紹介をしてくれた。 「このお肉は佐藤さんとこのやから美味しいぞ〜」 「この卵は嶋さんとこのやから新鮮や、ほら黄身の色がちゃうやろ」 わたしは何でも食べる子どもだったので、とりあえずふぉんふぉんと相槌を打って、目線はご飯から外さなかった。 「お前は俺のお陰で毎日こんなええもん食べてるんやぞ、分かってるんか?」 発泡酒をグビっといって

    • メニエール・ブラジャー

      先週の金曜日、メニエール病と診断され、 土曜日の朝、ブラジャーを盗まれた。 メニエールに関しては、思い当たることも多かったので、特段聞いて欲しい話もないのだが、ブラジャーに関しては、正直納得がいっていない。 そもそもブラジャーを表に干していた私も悪いのだが、いや、私は何も悪くないのだが、ちゃんとタオルの裏に隠したり、周りを主人のトランクスで囲ったりなど、小細工はしていたのだ。 にも関わらず、そんな盗りにくい私のブラジャーを、犯人はわざわざチョイスしたのだ。 これも犯人にと

      • 第一次豚汁論争

        皆さんは「豚汁」という存在について、いかがお考えだろうか。 先日親友と呑みに行った際、私は長年の悩みであった「豚汁の付け合わせに何を据えるか」について、ついに打ち明けた。 「晩ごはんに豚汁を作ったとして、お米とそれを並べるとあまりに見た目が簡素やんか?やからそれにお浸しとかお漬物を添えるんやけど、それでも何かが足りひん。やからいつも焼いた厚揚げを並べてそれとなくスペースを稼ぐねんけど、あまりに茶色いねん。かと言って、仮りに焼き魚を添えたとすると、その瞬間それは“焼魚定食”

        • 振り返ると #書き初め20字小説

          振り返ると靴跡がなかった。ポチは泣いた。 おしまい

        健康なお肉

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        • 食べ物がでてくる話
          13本

        記事

          大丈夫?今どこ? #呑みながら書きました

          呑みながら書きました 後夜祭! 参加させていただきます! マリナさんいつもありがとうございます! 今回は、いつも頭の中でひとりで喋っていることを、そのまま書きだそうと思います! ハイボール!乾杯! はい!!! 今年も新しい友達がひとりもできませんでした!!!残念でした!!!さようなら!!! 何度でも言わせて?友達ちょうだい? 神様そこんとこどうなってる? いい加減にしてもらっていい? 用意できんならアンタが友達になってよ? アンタも友達いなさそうやんね? 言い過ぎてご

          大丈夫?今どこ? #呑みながら書きました

          いらんエンターテインメント

          先週だけで結婚指輪を失くし、前歯が折れた。 その日はひどく指が浮腫んでおり、これはしんどいと思い、ベッドサイドに指輪を置いて寝た。 起きると指輪は跡形もなくなっていて、マットレスを剥いで、ベッドを逃し、ありとあらゆる手段で血眼になって探したが、結局姿を現すことはなかった。 神隠しにあったとしか思えない。 こんなに探してないのなら、あとはもう探偵ナイトスクープに頼む外、方法が見当たらない。 その次の日の朝、今度は前歯が折れた。 これに関しては特筆する点もなく、ただ文

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          実につまらん日記

          近頃すこぶる良いことがなく、5月に大阪天満宮で引いたおみくじが凶だったことを思い出す。 ちなみに今もコロナの床で鼻を垂れながらこれを書いている。 毎日職場と家の往復。 家事を済ませて眠りにつけばまた次の朝。 休日は1週間分の買い出しと掃除をしておしまい。 毎日良いことが一つもない訳ではない。 ただ何かが、爆裂に、物足りない。 熱心だと評判の教師がいけない薬に手を出したり、平凡な主婦が不倫に走ったり、実直なサラリーマンが巨額の横領をしたり、そんな全てのマチガイを辿っていく

          実につまらん日記

          クソ喰らえ!幸あれ! #呑みながら書きました

          急に話し始めて悪い。 今年の頭に5年間勤めた職場を退職して、1ヶ月間ぼんやりと過ごしたのち、3月頭から転職活動を始めた。 前の職場は本当に素敵な人たちばっかりで、お仕事自体も一生続けようと思えるぐらい好きやったけど、一生懸命働き過ぎて続け様に身体を壊したので辞めた。みんな大好き、両指でハートマークを作っている。 大学以来の就職活動、久しぶりに人から選ばれるという作業をした。きっしょくわるい。 YouTubeで面接のエキスパートみたいな人(お前は誰やねん、もうイライラしてきた

          クソ喰らえ!幸あれ! #呑みながら書きました

          ヤンキーとダブルス

          悲しい話をするつもりはないが、私は生まれつき身体の関節が緩いらしく、特に右肩は、吊り革を握って車両がぐらりと揺れるだけで脱臼してしまう。 お医者さん曰く「ルーズショルダー」と呼ばれるものらしい、怖いほどにそのまんまである。 先日、布団の中で伸びをした瞬間、右肩がほろりと外れた。 慣れてはいるものの、やはりどこまで行っても脱臼は脱臼で、利き腕が言うことを訊かないというのは、痛みよりも恐怖が勝つ。 いつもの如く「ひーーー…」と情けない声を上げながら、関節を元の位置に戻してやると

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          ドーナツ(短編小説)

           赤子に乳を吸わせる仕草が母なれば、この仕草はなんぞやと思いながらも、懇切丁寧にうちは股を拭いている。トイレットペーパーに赤いもんが付かんくなったのを確認して、小さいパンツにこれまた小さいおむつみたいなんを貼っ付けて履く。しょうもない。 この一連の所作が女たらしめるもんかと言われると、どうもピンと来んけれども、これがメスの所作かと言われてもよく分からん。こんな情けなく股を拭いて始末している他の動物を見たことがない。  ずらっと並ぶこの個室で、何匹ものガールズが、お股中心の段取

          ドーナツ(短編小説)

          サムシング 2022

          改めて今年一年を振り返ってみると、なんにも覚えていないことに気が付いた。 先日友人と散策中、茶色い猫の写真をふたりして鯛焼きに見間違え、そのあと近くにあった鯛焼き屋さんでとっても素敵な鯛焼きを食べた。 これが私の最後の記憶となる。 年の瀬になると、みんな今年一年を振り返ろうとするものだから、私もノリノリで首をぐいんと捻ってみたら、後ろには鯛焼きしかなかった。 きっといろいろ沢山あったはずなのに、何ひとつ思い出せない、不思議。 よく映画などで、記憶の収納を、引き出しやロッ

          サムシング 2022

          LOVE 小松菜 #呑みながら書きました

          やっぱり今年一年を振り返った時、一番に思い返されるのは4月の結婚よりも11月の退職(現在有給消化中)よりも、12月の小松菜が美味しいことに気が付いた、これですわな、ですわなヤバい。 いやー、小松菜おいしいや。 ここんとこ毎日、小松菜食べては寝て、小松菜食べては寝てですわ、小松菜もたぶん私に付いてくるのに必死やわなー。 今までなんとも思ってなかったクラスの男子に突然ときめいて、ひとりで勝手に大恋愛みたいな、まぁ中高6年間女子校やったんですけども、クラスに小松菜みたいな男子が居

          LOVE 小松菜 #呑みながら書きました

          根性

          私は両親から「武士かな?」というほど厳しく育てられた。 特に父はこの世で一番怖い生き物で、私はよく「助けてもらうのを待つな!何でも自分で考えて自分で何とかしろ!甘えんな!」と叱られた。 「たったひとりの愛娘、普通かわいくて仕方がないもんでは?」と思っていたが、そんな事は口が裂けても言えず、両親から可愛い可愛いされている他所の一人っ子を見ては、「はん!良い御身分ですなあ!」と蛇のような目で見ていた。 中学2年の頃、当時ハンドボール部に所属していた私は、練習中に倒れてきたゴー

          あゝ圧縮紀

          圧縮袋に夏用の布団を詰め込んで、掃除機でずぞぞぞぞぞぞと吸う。 どんどんと薄く固くなっていくそれの上に正座し、私が「お前ならまだやれる!」と、掃除機に言っているのか布団に言っているのか分からないエールを送ると、圧縮袋は自分が応援されたと勘違いしてポテンシャルを見せつけてくる。 右手に掃除機のノズルを持ち、左手に圧縮袋を抱きしめて、半分コオロギの様なシルエットで暫くいると、やがて圧縮袋からはピーピーラムネの音が聞こえ始める。 あゝまたピーピーラムネが食べたい。 いつから地球は

          あゝ圧縮紀

          元気モリ子、勝利への道

          信頼関係なんてのはちょっとした事で崩れ去るもので、今もアスパラガスからの信頼を失ったところである。 恐らく半年ぐらい前に買ったアスパラガスだと思う。 夕飯を作ろうと野菜室を漁っていると、隅っこでラップに包まれた何かが怪しげにキラリと光った。 身に覚えのないそれを徐ろに取り出すと、中からジャコほど小さくガリガリになったアスパラガスが一本出てきた。 皮肉なまでに大きなラップに包まれ、小さくも細部はしっかりと現役時代の姿を留めたその様に、私は思わず後退ってしまった。 これでアス

          元気モリ子、勝利への道

          シェフの気まぐれ人生 #呑みながら書きました

          第13回 呑みながら書きました 今回もぬるっと参加させて頂きます!うれしいな! 正直ここんところ、本当に「絶不調☆」「絶望☆」という感じで、全く元気はないのだけど、愚痴らしい愚痴とか弱音みたいなのは案外出てこなくて、結果いつもの私です。 グラスの中に「元気」という名の水は全く入っていないけどグラス自体はピカピカ、みたいな状態っぽい。 ちょっと何言ってるか分からない。 「人生いろいろ」って島倉千代子も言ってんの。 今日は朝から一歩も外に出ず、ずっと何か食べてるので、そろそ

          シェフの気まぐれ人生 #呑みながら書きました