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週記12月(その2)

来年2月に出る訳書の念校が終わった。以前書いた“没入型ノンフィクション”の、あれ。とても興味深く、原著者さんの書く英語がとても整然としていて論理的に破綻がなかったおかげで、訳出作業がとてもはかどった。これまでで一番、文法的に整った英文だったのではなかろうか。

近影で使ってくれと送られてきたという、著者Jさん自撮り写真の気合いの入りように、くすっと笑う。これまで世に出回っている、大学の先生っぽい(実際、大学でクリエイティブライティングを教えている教授なのだが)彼の画像とは一転、ラッパーですか? 的な、ストリートの人になってる。本書に寄せて撮り直したのだろうか。だとしたら可愛いぞ、Jさん。

金曜日の朝、NHK『あさイチ』吉川晃司さんゲスト回を観た。現在放映中の朝ドラ『舞いあがれ!』で鬼教官を演じておられるが、当初期待された「怒鳴るタイプの鬼教官」ではなく、声を荒らげずに厳しさを伝える演技プランを立てたのだという。「だって朝から人が怒鳴っているの聞きたくないでしょ?」と。

クランクイン直後の撮影、指導する航空大学生の3名に吉川さん演じる大河内教官が歩み寄り、自己紹介する場面。台本には歩きながら学生たちの名を(呼び捨てで)呼ぶとあったが、番組中に紹介された動画では、吉川さんが「歩きながら人に話しかけるって失礼じゃありません?」と提案し、学生役の3人の前まで歩み寄ってから声をかけた。呼び捨てではなく、「○○学生」と、航空大学の学生を呼ぶときの正式呼称で。

こういう気遣いができる方なのかと驚いた。

スタイルいいですよね、役者とミュージシャンの両立には憧れますと、あれこれ褒めちぎる司会の華丸大吉さん(司会ですもの)には「だってあなたたちだって同じじゃない、漫才やって、芝居やって」と、嫌みにならない口調でリスペクトを返す。役の幅が広がるからと流鏑馬を習い、和弓を習い、毎日10キロ弱走って、筋トレとストレッチで体型と体力を維持する。骨折したことを笑い飛ばしながら、折れた方の足でシンバルキックをする!

スーパーマン自慢なんかしない。目が遠くなった自分も、50代になって骨折したあとの骨のくっつきが悪くなったことも、狭心症で手術したこともさらりと話す。僕は着実に老いてますが、何か? みたいな。わたしと同世代の彼は、わたしと似たような身体的悩みを抱え、老いを認め、老いと共存していた。

『探偵・由利麟太郎』のドラマ化で久しぶりに注目するまで、わたしの中の吉川晃司は、ここで止まっていたんだけど(当時リアルタイムで遭遇し、語彙力がゼロになったのを覚えている。今観てもかっこいいわ)、彼は生来の礼儀正しさや仕事への真摯な態度にプラスして、年齢を重ねながら、とてつもない努力を重ね、進化を遂げていたのね。

かくありたいと思う人がまたひとり増えた。

これからは余生だよね、Xデーに備えて断捨離やエンディングノートを書いとかなければ、なんて、最近すっかりご隠居モードでいたけど、自分をチューンアップする時間はまだ残されている。吉川さんの100分の1でもいいからやってみようじゃないか。
まだ攻めてもいいんだなとも思った。

さて、どこまで攻めていけるか。





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