「開かれた家」をつくる(4)

さて、物件が決まり、早速、現代美術家との打ち合わせを行い、実際に改装準備に入ることになった。

私から現代美術家に伝えたのは、「現代風の和」的イメージでという漠然としたアイディアのみで、後は作家のイマジネーションに任せることにした。しばらくして作家から第一案が届いた。色々面白いアイディアが散りばめられているが、全体の統一感が足りないような感じがしたので、その旨を作家に伝えた。その際、少し細かく指示したのだが、第二案では、確かに私の依頼した内容は取り込まれていたが、ちょっと作家らしさがなくなってしまったので、軌道修正し、もっと自由に発想して下さいとお願いした。

こうして何度かやり取りする中で、最終案がまとまり、この案を具体的に進めるにあたり、建築家・工務店の方に相談することになった。実際、作家のイメージに合わせるには窓を一部塞いだり、壁を塗り替えたり、色々な大工作業が必要で、それらが物理的に可能か、また費用がどの位かかるかの見積もりを依頼した。この話し合いの中で、実際に作家の意図に合う改修が、物理的にも、費用面でも可能であることがわかり、いよいよ工事がスタートすることになり、作家の方でも作品の制作に入ることになった。

工事は実質約2週間程度で完了したが、工事の過程では、もともとのクロスの下地の仕事が雑であったためにクロスの張替えを当初の予定から少し変更せざるを得ないということはあったが、ほぼ作家の意図通りで完了できた。

出来上がった部屋は元の部屋のイメージからかなり違って、とてもいい感じの仕上がりになった。作家にとっても部屋全体のディレクションは初めてであったので、こんなに素敵な仕上がりになるとは、嬉しい喜びである。自分が制作したわけではないが、そのプロセス全体に関わって来たことで、単に美術作品を購入する以上に楽しく濃密な時間を過ごせたと思う。この事が今回やってみて一番良かったと思った。何か、アートのファンから、本当の意味でのアートのサポーターになれたような気がする。

そして、今回の出来上がった部屋は作家と相談し、「窓月の間」と名付けることになった。そしてこの「窓月の間」を作家と私の友人限定で公開することにした。

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