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豊島美術館とダンゴムシ

前から行きたいと思っていた、香川県の豊島美術館に行ってきた。アーティスト内藤礼さんと建築家西沢立衛さんによる美術館です。行った日は朝から曇り空、時に陽が差してきたり、時に雨が降ってきたりと目まぐるしい1日の間、この場所のいろんな表情を感じられてとても良かった。

着いてからどれ位たった頃だろうか、座って開口部近くで水が流れていくのを眺めていると、黒い小さなものが動いているのが目に入った。よく見ると1匹のダンゴムシだ。豊島美術館はコンクリート造りで、上に2つ開口部はあるけど、ダンゴムシが入れるとしたら入り口からしかない。そう思うと随分歩いてきたんだなと思う。

「何を探してるんだい?」と思ってしばらく眺めていると、床から湧き出す水を避けながら、それでも同じようなところをぐるぐる廻っているようだ。ダンゴムシにとって豊島美術館ってどの位広いのかな。そもそもコンクリートの上なんて良い環境じゃなくないのかい。入った時はそんなことを知らずに来たんだろうけど、早く出口に向かった方がよくないかい。

勝手なことを想いながら、自分のやっていることも(やってたことも)こんなことが結構あったのかなあと考えたりする。そこに入ってしまったら出口が1つしかなくて、それがわかるまでずっとずっとうろうろし続けるという。より俯瞰して見れたら出口なんてすぐにわかるんだろうけど、ダンゴムシにとって難しい状況みたいに、その時の自分も嵌っていたんだろう。その時に俯瞰して見えなくても、時間が経つとわかったこともある。

そうは言っても、それは勝手な邪推で、ダンゴムシにとっては、ここは壮大な遊び場なのかもしれない。実際、この空間はとても落ち着くし、自然の音が増幅されて感じられ、より感覚が開かれていくようだ。風の音もすごく感じられる。ダンゴムシにとってもひょっとして特別な体験、いつもの土の上と違う体験なのかもしれない。非日常の世界を楽しんでいるのかも。

ダンゴムシも自分もずっと広いところから俯瞰すれば、同じ小さな存在なんだろう。今いるところは、たまたま迷い込んだ場所か、望んできた場所かわからないけど、じっとしてては何も変わらないし、動き続けることが大事なのかもしれない。そうだよね、とダンゴムシに話しかけようと思って見たら、もうどこかに行ってしまっていた。自分もそろそろ動き出さねばいけないかな。

良い人生を送れよ、いや、送ろうな、お互い!

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