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韓非子を読んで刺さったことまとめ 前編「昔の人が言ったことを妄信するな」

2つの予定がかぶりそうだったので一方の予定を後ろにずらしたら、ずらさなかった方の予定も後ろにずれて結局同時進行することになったのでもう調整するのをやめました。なるようになれ。ゆーりです。

今年も年末年始は2週間ほど休みを取りました。
おせちを作ったり年またぎ酒場放浪記を見たりニューイヤー駅伝を観たり箱根駅伝を見たりする中、2週間あれば読み切れるだろ、と、年末に図書館で韓非子(岩波文庫)をレンタル。

何も考えずに4冊一気に借りたら、4冊合わせて貞観政要2冊分に匹敵する厚さだったのでだいぶびびる。
もちろん片手間では読み切ることもできず、完読に1カ月。
クリティカルヒットしたポイントをまとめていたら3月になってしまった(しろめ
後編は只今絶賛まとめ中です。


まえおき

はじめに

太宗の時代の話が中心の貞観政要と違い、韓非子はこの時代の時代背景やこれまでの中国史の流れ、思想家に対する前提知識がある程度ないと、「なぜこういった思想に至るのか」の理解がかなり難しかったです。

なので、もしこれから韓非子を読もうと思われる方は、「中国戦国時代の基礎知識」「老子」あたりを履修しておくと、韓非子がかなり読みやすいと思います。
(ほぼ履修してないのになぜ読もうと思ったのか小一時間ry)

上記以外にも、荀子じゅんしとか、孔子とか、商鞅しょうおうとか、申不害しんふがいとか、慎倒しんとうとか…
知っておいた方が良い人物がいるのですが、それらも紹介すると超大作になってしまうので、
自分用に、「刺さったこと」「学びがあったところ」をざっくりとまとめました。
なので、韓非子のすべては網羅していません。あしからず。

韓非について

韓非は、中国戦国時代の思想家で、生まれは韓の国の諸公子となっている。つまり王子様である。(とはいえ庶子だったので、王位を継ぐような感じではなかったようです。)

こういうことを考える人って、一般人か、官僚の家系の人がほとんどだと勝手に思っていたので、王子様だったのかよ…とかなり驚きました。

韓非、全部は書いてないってよ。

そして今回めちゃめちゃびっくりしたのが、韓非子は全部韓非が書いてるわけじゃないっていうこと。

韓非子 第1冊(岩波文庫 金谷治 著)には、

『韓非子』は二十巻五十五篇から成る。韓非の自作ばかりではないが、(中略)孤憤第十一・説難ぜいなん第十二・五蠹第四十九・顕学第五十などはその確実なもので、(中略)説難につづく和氏かし第十三・姦劫弑臣かんきょうしいしん第十四、(中略)難一第三十六から難勢なんせい第四十までが自著と認めて良いものである。(後略)

韓非子 第1冊(岩波文庫 金谷治 著)p15~16

とある。
実は、書籍の前の方はほとんど飛ばして読んでいて、最後に改めて確認したらこのようなことが書いてあったので、マジでびっくりしました。
先に言ってくれよ~~~ってなりました。(先に読め)

他にも色々な文献を読んだのですが、ここは確実に書いた!ここは書いたとは言えない!と様々な説があり、一般人である自分には判断ができませんでした。

まずは、上述した孤憤こふん説難ぜいなん五蠹ごと顕学けんがく和氏かし姦劫弑臣かんきょうしいしん難一難二難三難四難勢なんせいの計11篇に書かれている内容を「前半」として区切り、自分の学びになった部分をまとめました。

今回の参考文献

韓非子 第1冊~第4冊 岩波文庫 金谷治 著
内野台嶺 著. 韓非子講話, 章華社, 昭11, 10.11501/1046882.
木村英一 著. 法家思想の研究, 弘文堂, 昭和19, 10.11501/1038750.
常石茂 訳. 韓非子 上巻, 角川書店, 1968, (角川文庫), 10.11501/2972759.
常石茂 訳. 韓非子 下巻, 角川書店, 1968, (角川文庫), 10.11501/2973034.

今回のまとめのため、個人情報を対価として国立国会図書館で文献を読む権利を獲得したのですが、めちゃくちゃおススメです!
家にいながら古い文献が読める。
参考文献の下4つは国立国会図書館のデジタルデータです。

特に、韓非子講話(内野台嶺 著)は、かなり言っていることが理解しやすいのでおすすめです。(ただし、戦前の文体なので文章自体を読むのには時間がかかります。)

どうでもいいんですが、約90年前でこれだけ文体が異なるなら、100年後、自分の文章もめっちゃ読みづらいなって思われることになるんだろうか?などと考えさせられました。

めちゃくちゃ脱線した。本題に入ります。

昔のしきたりや、昔の人の言うことをそのまま正しいと思い込んで実践するのは愚かである。

まずこの11篇を読んで、これは心に留めておく必要があるな、と思ったのがこれなので、最初に紹介します。

韓非子の中に、儒学を批判して「仁義を行うようなものは褒めるべきではない。学問を習うようなものは採用すべきではない。」という旨の記述があります。

昔は人口が少なく、資源もたくさんあったから、仁愛で国はよく治まっていたが、今(中国戦国時代)はそうではない
相手に「善」を期待するより、「法」によって行動を規定する方がずっと理にかなっている。
古い時代と今の時代は状況が全く異なるので、古代の人が言っていること(ここで言うと儒学)をそのまま正しいと思って実践するのは愚かである

これを読んでまず思ったのが、
これって『韓非子』に対しても同じことが言えるよな?
ということ。

今、我々が「韓非子に書いてあることが正しい!だからこれを採用すべきだ!」と言うのは、
韓非が否定する
「古代の人が言っていることをそのまま正しいと思って」いるのと同じなんですよね。

現代に生きる我々にとってはどうなのか?という視点を持って韓非子を読むと、学びが大きいと感じました。

進言する前に、信頼を勝ち得よ

高い教養と徳のある人が君主に重用されるのは難しい
たとえ正しい意見であっても、君主に意見すれば、それだけで排斥される可能性があり、
もし君主が採用してくれたとしても、君主の側近たちに「この人間は自分達に不利益になる」と判断されれば、側近たちから排斥される危険性があるからだ。

同じ発言でも、信頼のない者は信用されず、信頼されている者が言えば信じる。信頼関係を築くことができて初めて、自分の言葉が君主に通じるのだ。

というわけで、韓非による「君主から信頼を勝ち得る方法」をフランクにご紹介。

1.「やりたいことがあるんだけど、これって私的なことだし、君主としてはこういうのやるのちょっとマズいかな~」と思っている。

それは個人的にじゃなくて、公にも利益のあることですよ!ぜひやりましょう!!と言って後押ししてあげる。

2.「ダメだと思っていることがあるけれど、どうしてもやめられないよ~」と言っている。

正面から非難しない
今のままで良いと思いますよ~、止めても大してメリットはないですよ~~と言ってあげる。

3.何かを実現したいと思っているが、何も実行できていない場合。

それを実現するとこんなデメリットがありますけどね~。むしろやらないほうがいいんじゃないですか~?と言ってあげる。

4.ある事柄について、何か成果をあげて自分の才能を示したい!と思っている。

直接手助けをするのではなく、類似例などでさりげなく方向性を示す
うまくいったら、「え、僕の助言が参考になった?いやいや、その話をきっかけに考え付いた社長がすごいですよ!いやーマジですごいっすね~尊敬です!」と、自分で選んだと思わせる

5.君主が危険なことをやろうとしていて、それを止めたい場合。

それは会社にとってあまりよくないかもしれませんね~、それに、社長にとってもこういう理由で、不利益になると思いますよ~~。
と、その選択が君主自身にとって不利益になることを伝える

6.君主と同じ考えの人を誉め、諫める。

君主の行動を誉めたい場合は、同様の行動をした別人を誉め、君主の行動を諫めたい場合は、同様の行動をした別人を戒める。

これは何で?という感じだったんだけど、直接言うと角が立つから、遠回しに伝えたほうが良いだろう、ってことなのかな?と解釈。

7.自慢話は肯定し、失敗談は慰める。

決して、「どこぞの誰々がもっとすごいことやってましたよ!」とか、「いやーそんなんじゃ失敗するに決まってるっしょ!とか言ってはいけない

ここまですればあなたは君主の信頼を得られていることでしょう
そこでようやく意見をすれば、あなたの提案は受け入れられること間違いなし!(超意訳)

「相手が何を重視していて、どう言えば刺さるのか」考える

例えば、ある人が「表向きは名誉を重んじているが、内心では金儲けをしたいと思っている」場合。

名誉を得られる方法をアドバイスしても、表面上は表受け入れるふりをしながら、実際には採用しないだろう。
逆に、利益を得られる方法をアドバイスすれば、こっそりアイディアを採用しつつ、(表向きは名誉を重んじているため、)進言した者を軽蔑して遠ざけるだろう。

相手に納得してほしいときは、相手が何を重視しているかを察して、それに合うように言葉を組み立てなければならない

多数に有効な方法を採用する。

道徳や仁愛を持つ聖人しかいなければ、法律がなくても国は治まるし、明君であれば権力を持たなくても国は治まる。
しかし、世の中のほとんどの人間は聖人ではなく、ほとんどの君主は明君でも暗君でもない、中程度の能力の人間だ。

だから、権力を捨て、道徳を広めることに力を使うのではなく、誰でも従うことのできる明確な法律を定め、権力を自分自身で握ることに力を使う

たとえ賛同を得られなくとも、国にとって良いことを行う。

民衆は赤子のようなものであり、
病気を治すために行っていることでもそれが解らず、治療の痛みを嫌がって泣き叫ぶ

刑罰を厳しくするのは、悪事を禁止するためだが、民は国を厳しすぎると考える。
税を取り立てるのは、国の将来に備えるためだが、民は国を貪欲だと考える。

たとえ国を治め民を安らかにするための方策であっても、多くの人はその仕組みを理解できず、非難する
けれど、民におもねり、必要な政策を行わなければ、結果的に国は滅びに向かうことになる。

消費税増税が問題になったときも、こんな感じでしたよね。
自分は大して政治に詳しくないので、あの頃の選挙は、増税がいい悪いということだけ取りざたされていたなーという印象です。

韓非子の別の篇でも、「表に現れていることに惑わされず、なぜそうしているのかを見極めることが大切だ」というようなことが言われています。

「増税します!」「増税断固反対!」という言葉だけを見るなら、増税に反対する政治家のほうが私たちにとっては良いですよね。税金は安い方がいいですから。

でも、その言葉の裏に何があるのか?を考えるべきだということ
もし、「(このままだと社会保障が立ち行かなくなるから)増税します!」
だったら納得できるし、

もし、「増税断固反対!(ってとりあえず言っとけば票集まるでしょ。)」
だったら国のことも民のことも考えてないんだから完全にアウトですよね。

無論、「(何に使うか考えてないけど)増税します!」もダメですよ。

というわけで最後やや脱線しましたが、
以上、11篇を読んで、自分にとって特に学びになった部分をまとめました。

後編はこちら

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