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おぬしも、あこぎなやつよの~



こんにちわ。

今日は、阿漕(あこぎ)の言葉の由来についてお話していこうと思います。

「あこぎな商売しとるな」
これは
「しつこく金品をむさぼる」
「強欲」
という意味で使われてるのが一般的ですよね

その、使われている“阿漕(あこぎ)”という言葉ですが


その言葉の由来となったのが

私の地元・・・

海水浴場やヨットハーバーのある阿漕浦海岸
そこにある
阿漕塚のお話です

三重県津市の中央部から
岩田川の河口の南側にある、阿漕浦にはこんな逸話があるんです



”阿漕平治”の物語


今から1200年前にさかのぼります

むかし、阿漕の浜に、
親孝行な漁師の平治(へいじ)が老母と住んどった

ある時、老母が病気になってな、
「平治、すまんなぁ、じっきにようなるでな」
と、言うたんやけど、老母はようなるどころか
日に日に痩せていくばっかやった。

平治は心配でどうしようもなく、浜をうろうろ歩いとると
浜におったおじさんが
「平治よ。おまえんとこの老母の病気には、ヤガラが一番やの。
せやけど、ヤガラは阿漕浦やないとおらんのや」
老母の病にはヤガラという魚がよく効くという話を聞きました。

ところが阿漕浦は、お伊勢さんにささげる魚を獲る海でな、
漁師が勝手に入れない海や。
この掟を破ったら、むしろで海苔巻きみたいに巻かれて、
生きたまま海へ沈められることになっとる。

「阿漕のヤガラか・・・」
老母の具合が大変悪くなり、とうとう平治は
禁漁区となっていた場所に舟を漕ぎだして漁をしてしまう。

ヤガラのおかげで
母の病状が良くなっているように見えてきたため、
平時はその後も何度も密漁を
行ってヤガラを採っていた。

しかしある晩、役人の舟が近づいたことに気づいた平治は

慌てて漁場を離れたが、
その時にうっかりと自分の名前が書かれた笠を落としてしまう。

夜が明けると、役人が平治を捕まえに来た。
手には平治の菅笠(すげがさ)を持っとった。

そのため密漁の罪が露見した平治は、むしろに巻かれて海に沈められてた。
そして息子を失った老母もまもなく亡くなってしもた。



このお話は、
親孝行な息子の悲しい物語として、今日まで伝えられています
でも、続きがあるんですよ!



阿漕の上宮司(じょうぐうじ)に、平治が何かと頼りにしていた
西信律師(さいしんりっし)っちゅうお坊さんがおらんした。

このお坊さんの夢に平治があらわれて

「おれ、おかんのために、決まりを破っておかんより先に死んでしもた。
親より先に死ぬなんて一番の親不孝や。
その罪であの世にも行かれへん。

どうぞ、お坊さんのお力で成仏させてくだされ。
お礼に柳山にある家の仏さんをお寺に納めますで」


不思議に思ったお坊さんが柳山にある
その家に行ってみると、ちゃあんと夢に出てきた仏さんがあったんて。

お坊さんは、平治の供養のために
塚を作ってな、平治の話を語り伝えたんや。



それで、今でも”平治盆”いうて
8月16日に、上宮寺のお坊さんがお参りして
盆踊りもあるんやに



子供の頃から、
毎年、行われていた、平治塚の盆踊りの謂れです


今日が、その8月16日です
地元では、親から、地域の大人から、みんなに教えてもらい
子供でも知ってるお話なんですよ


このお話に出てきた
阿漕町
柳山
阿漕浦

は、今でも町名として使われています


ヤガラとは
正式名は、アカヤガラといい、
漢字だと赤矢柄と書きます

大きくなると、長さは2mにもなるそうです
ところが半分近くが頭なので、刺身で食べられる部分は少しなんだとか(笑)


今では、市場か料亭でしかお目にかかれない珍魚のようです

ヤガラをみかけられましたら
この平治のお話を思い出していただけましたら、幸いです