国富論を読んでみた
アダムスミスの古典「国富論」を読んでみました。いわゆる「見えざる手」で有名な方ですが、原典を読んだことのある方って実は多くないのではないでしょうか。
私が今回手にとってみたものは、この新訳版です。上下中の3巻からなり、1,000ページ以上?の大ボリュームで読破するのに時間を要しました…。
それでも、現代風の言葉に変換されているため、予想していたより大分読みやすく、内容も面白かったです。
これを1回読んだところで経済がより理解できるわけでも、アダムスミスについて語れるようになるわけでもありません。
しかし、未だに名作として読み継がれる大昔(1700年代?)に書かれた古典は一読の価値があると思います。
当時の優秀な方々が、人生をかけて経済の仕組みを解き明かそうと熟考した文章ですから、彼らの思考回路を辿り、どのようにしてその結論に至ったのかを知ることで、現代をより理解することができると思います。
個人的に興味深いと思った箇所をまとめておきます。
1. 労働価値説
商品の価値は、その生産に要する労働時間に基づいているとする労働価値説
商品の価値はその生産に費やされた労働量に比例する。要するに、商品の価格はその生産にかかった総労働時間に基づいている
例えば、ある商品Aが商品Bよりも多くの労働時間を必要とするならば、商品Aの価格は商品Bよりも高くなるという理論
2. 分業の効果
分業による労働の特化と相互依存が、経済の生産性向上と豊かさを生む
分業は、個々の作業者が特定の作業に特化することを指し、その結果として商品の生産効率が向上し、コストが低減する
特定の業務に特化することで、労働者はより高い技能を磨くことができ、生産効率が向上するだけでなく、他の人々との協力によって経済全体が成長する
この分業による専門化と相互依存が、スミスが提唱する市場経済の中で豊かさを生む要因
3. 市場価格と自然価格
アダムスミスは「市場価格」と「自然価格」という概念を導入
市場価格は、供給と需要に応じて変動する価格であり、瞬時の市場の状況に左右される
一方、自然価格は、商品を生産するために必要なコストや、生産要素の真の価値に基づいて形成される価格のことをいう
市場価格と自然価格が一致しない場合、市場メカニズムが働いて均衡が保たれる
4. 貨幣の役割
貨幣は交換手段、計量基準、貯蔵手段としての役割を果たす
交換手段(Medium of Exchange): 貨幣は商品とサービスの交換手段として機能する。直接物々交換が不便な場合、貨幣を使用することで効率的かつスムーズな交換が可能になる
計量基準(Measure of Value): 貨幣は商品やサービスの価値を測る基準としても機能する。価格が金額で表示されることで、異なる種類の商品やサービスを比較しやすくなる
貯蔵手段(Store of Value): 貨幣は価値を保存する手段として機能する。人々は貨幣を使用して富を蓄積し、将来の需要に備えることができる
貨幣の発展は物々交換の困難さに対する解決策となる
5. 貨幣の価値
スミスは貨幣の起源について、「物々交換の困難さ」に言及
直接物々交換では需要と供給が一致する難しさがあり、その問題を解決するために貨幣が発展したと考えた
貨幣は社会の経済活動を効率的に進め、分業を促進する役割を果たすもの
スミスは貨幣の価値がその供給と需要によって決まると考えた
貨幣が過剰に発行されると、その価値が下がり、物価が上昇する
物価の安定が重要であり、貨幣の適切な管理が必要
6. 重商主義への批判
<輸出至上主義への反対>
重商主義の主要な信念は、国の富を増やすためには輸出を増やし、輸入を制限すべきだという考え方。これに対して、スミスは自由な貿易が経済の発展に寄与すると主張
スミスは、貿易においては自由競争が効率的であり、国際的な比較優位を活かすことが大切だと認識しました。彼は、制限的な貿易政策が逆に経済の成長を妨げる可能性があると指摘
<貿易収支の優越性の否定>
重商主義者は貿易収支の黒字が国の富の指標であると考えているが、貿易収支自体が経済の健全性や豊かさを反映するものではない
経済が特定の商品やサービスに特化し、国際的な分業が進むことで、資源が最適に割り当てられ、国富が増加する
<貨幣の蓄積への疑問>
外国からの黄金や銀の蓄積が国富の指標ではなく、実際の生産や投資が重要だと主張
生産性の向上や効率の追求が真の富の源であり、金銭の蓄積が目的ではない
<自由競争と市場経済の擁護>
自由な市場競争と分業が経済発展の鍵
制限的な貿易政策や商業の独占が市場メカニズムの効果を妨げ、経済成長を阻害する
以上です。ありがとうございました。
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