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ドレイク「Take Care」徹底解説

アルバム概要

「Take Care」は、カナダのラッパードレイクの2枚目のスタジオアルバムで、2011年11月15日にリリースされました。Young Money Entertainment、Cash Money Records、Republic Recordsからリリースされ、Noah "40" Shebibが主にプロデューサーを務めました。アルバムはリリース直後に商業的成功を収め、初週で63万1,000枚を売り上げ、Billboard 200チャートで初登場1位を獲得しました。また、2013年のグラミー賞では最優秀ラップアルバム賞を受賞しました。

ジャンルの融合と音楽スタイル

「Take Care」は、ヒップホップ、R&B、ポップ、エレクトロニカ、ポストダブステップなど、さまざまな音楽ジャンルを融合させたアルバムです。アルバム全体を通じて、低音の効いたグルーヴ、メロディックなシンセトラック、ムーディなギターサウンド、スムーズなピアノ、そして暗くてシンセティックなレイヤーが特徴です。

リル・ウェインとの関係性

ドレイクとリル・ウェインの関係性は、「Take Care」の制作において重要な役割を果たしています。リル・ウェインは、Young Money Entertainmentの創設者であり、ドレイクのキャリア初期からのメンターでもあります。リル・ウェインの影響は、特に「HYFR (Hell Ya Fucking Right)」などのトラックで明らかです。この曲では、リル・ウェインがフィーチャーされており、二人のラッパーが自己肯定感と過去の反省をラップで表現しています。また、リル・ウェインは、ドレイクに音楽的自由と創造性を与える環境を提供しました。これは、ドレイクが「Take Care」でより個人的で感情的なトピックに取り組むことを可能にしました。リル・ウェインの影響は、ドレイクの音楽スタイルやリリックの深みを増すのに貢献しています。

The Weekndの影響

「Take Care」において、The Weekndは重要な役割を果たしています。The Weekndは、このアルバムの制作において多くの楽曲を提供し、The Weekndの暗くてムーディなサウンドがアルバム全体のトーンを形作りました。特に「Crew Love」や「The Ride」、「Shot for Me」は、The Weekndの影響を強く受けており、彼のエモーショナルでソウルフルなスタイルが反映されています。The Weekndは、自身のアルバム「House of Balloons」から多くのトラックをドレイクに提供し、このアルバムの成功に大きく寄与しました。The Weekndは、「Take Care」において自分の曲を提供したことについて、「自分のアルバムの半分をドレイクに提供した」と述べており、これはThe Weekndのキャリア初期において非常に重要な出来事でした。このあとThe Weekndは2016年に大名盤を作ることになります。

ニッキー・ミナージュの参加

「Take Care」では、ニッキー・ミナージュも重要な役割を果たしています。彼女は「Make Me Proud」というトラックでフィーチャーされており、この曲はアルバムの中でも特に力強いパフォーマンスを見せています。ニッキー・ミナージュのエネルギッシュなラップスタイルとカリスマ性は、ドレイクの柔らかいトーンと見事に調和し、アルバムにダイナミズムとバランスをもたらしています。ニッキー・ミナージュは、このアルバムに参加したころ、ちょうど世間の注目を浴びる女性ラッパーとして一躍時の人となっていました。

ニッキー・ミナージュのキャリア初期と2011年の活動
ニッキー・ミナージュは、2009年にリリースした3枚のミックステープで注目を集め、2010年にデビューアルバム『Pink Friday』をリリースしました。このアルバムは米国のBillboard 200チャートで1位を獲得し、シングル「Super Bass」はBillboard Hot 100チャートで3位に達しました。この成功により、彼女は一躍スターとなり、2011年には「Super Bass」の大ヒットでさらに知名度を上げました​。

アンドレ3000の参加

アンドレ3000は、「Take Care」においても重要な役割を果たしています。彼は「The Real Her」というトラックでフィーチャーされており、彼のユニークなリリカルスタイルと個性的なフロウが曲に深みを与えています。ドレイクがリスペクトするアンドレ3000とのコラボレーションをこのアルバムで果たすことに成功しています。

ケンドリック・ラマーの参加

ケンドリック・ラマーは、「Buried Alive Interlude」でフィーチャーされており、このトラックはアルバムの中でも特に注目されています。ケンドリック・ラマーのリリックは、彼の内面的な葛藤と自己反省を描いており、Drakeとの共鳴を感じさせます。ケンドリックは、このインタールードで、自身のキャリアの初期に感じた不安や困難を表現し、それがドレイクのアルバム全体のテーマと共鳴しています。

歌詞:
"Lookin' in the mirror, I'm embarrassed
I'm feelin' like a suicidal terrorist
React like an infant whenever you are mentioned
Mind over matter never worked for my nemesis
I'm in the matter of man, arm wrestlin' hands I was dealt"

和訳:
「鏡を見ていると、恥ずかしくなる
自殺テロリストのような気分だ
君が話題に上がるたびに、幼稚な反応をしてしまう
精神力で克服するのは敵には通じなかった
与えられたカードを手に、腕相撲をしている感じだ」

「Buried Alive Interlude」ケンドリックのリリック

リアーナの参加

「Take Care」では、リアーナがタイトル曲「Take Care」にフィーチャーされています。この曲はJamie xxとギル・スコット・ヘロンの「I'll Take Care of U」をサンプリングしており、リアーナの感情豊かなボーカルが加わることで、楽曲に深い感情と共鳴を引き出しています。リアーナのボーカルは、曲のテーマである愛と支え合いを強調し、リスナーに強い印象を与えます。

2011年当時のリアーナの評価
2011年、リアーナはすでに世界的なスーパースターとして確固たる地位を築いていました。この時期、彼女は多くのヒット曲をリリースし、音楽業界で大きな成功を収めていました。2011年のアルバム『Talk That Talk』には、「We Found Love」や「Where Have You Been」などのヒット曲が収録されており、これらの曲は国際的なチャートでトップを飾りました。

リアーナはこの時期までにも大ヒットを飛ばした曲がたくさんあります。

  • グラミー賞受賞:2008年にはJay-Zとのコラボレーション「Umbrella」で初のグラミー賞を受賞しました。

  • 数々のヒット曲:「SOS」(2006年)、「Umbrella」(2007年)、「Disturbia」(2008年)、「Rude Boy」(2010年)など、多くのシングルがBillboard Hot 100で1位を獲得しました

バードマンの参加

バードマンは、「We'll Be Fine」でフィーチャーされており、彼の特徴的なスタイルがこの曲に力強さを与えています。バードマンの参加は、Young Money/Cash Moneyの一員としての結束を示しているようです。

リック・ロスの参加

リック・ロスは、「Lord Knows」でフィーチャーされており、この曲はアルバムの中でも特に力強いパフォーマンスを見せています。リック・ロスの重厚なラップスタイルは、ドレイクの柔らかいトーンと対照的であり、曲にダイナミズムと深みをもたらしています。

サンプリングとプロダクション

「Take Care」の成功は、巧妙なサンプリングと卓越したプロダクションに大きく依存しています。以下に、アルバム内の主な曲とそのサンプリングについて詳しく解説します。

  • "Take Care":

    • サンプリング元: Jamie xxとギル・スコット・ヘロンの「I'll Take Care of U」

    • この曲は、リル・ウェインがプロデュースしたもので、Jamie xxとギル・スコット・ヘロンの「I'll Take Care of U」をサンプリングしています。Rihannaのボーカルが加わり、楽曲に深い感情を与えています。

  • "Lord Knows"

    • サンプリング元: マーヴィン・ゲイの「I’ll Never Stop Loving You」

  • "Cameras / Good Ones Go Interlude"

    • サンプリング元: Jon Bの「Calling On You」

  • "The Motto"

    •  サンプリング元: マック・ドレの「Feelin' Myself」

「Take Care」と「The Motto」の詳細

  • "Take Care": 「Take Care」は、Jamie xxとギル・スコット・ヘロンの「I'll Take Care of U」をサンプリングし、リアーナのボーカルが加わることで、深い感情と共鳴を引き出しています。ビートはメロディックでありながらも力強く、感情的なリリックと調和しています。

  • "The Motto": 「The Motto」は、YGの「She Got A Dunk」をサンプリングし、Boi-1daとT-Minusがプロデュースした楽曲です。この曲のキャッチーなフック「YOLO (You Only Live Once)」は、ポップカルチャーに広く浸透し、一世を風靡しました。フレーズ「YOLO」は、「一度きりの人生」を意味し、瞬間を大切にすることを強調しています。ビートはアップテンポであり、パーティーやクラブでの人気が高い曲です。ビリー・アイリッシュもこの曲を好きと公言していました

まとめ

「Take Care」は、ドレイクの音楽キャリアにおける重要な転換点であり、リル・ウェインやリアーナ、The Weeknd、ニッキー・ミナージュ、アンドレ3000、ケンドリック・ラマー、バードマンなどの協力がその成功に貢献しました。このアルバムは10年代の最高傑作に今後も語られ続けていくでしょう。


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