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少女探偵の源流はそもそもどこなのか問題4

星子ひとり旅シリーズや幽霊事件シリーズのヒットに結び付く、少女探偵は誰なのかとずっと考えてきましたが、世界で一番有名な少女探偵であるナンシー・ドルーは日本での人気はそこまででもなく、漫画などの探偵ヒロインも「名前を聞けば解る」というほど知名度は高くなく、『少年探偵団』シリーズの花崎マユミがほぼ主人公になっている『塔上の奇術師』はシリーズでもそこまで有名ではなく、少年探偵団の名前を知っている人でも花崎マユミの名前を知らない人も多いです。仁木兄妹シリーズの仁木悦子もロングセラーとして愛されていますが、少女期には悦子が探偵役とは言いづらい構成です。

少女向けの少女探偵ジャンルが増えた時にも、あからさまに増えて有名になった作品は『少年探偵団』シリーズのヒットからのコミカライズ、少年探偵ブームが起こった波を受けてのことでした。

少女探偵主人公の作品として知られた作品がまず出たのは現時点では漫画が最初だと考えています。ただ、今までの記事でも書きましたが、低年齢の探偵ヒロインはその後の星子ひとり旅シリーズや幽霊事件シリーズに繋がる作風、キャラ立てではなく、日本随一の少女探偵漫画でもある『パズルゲーム☆はいすくーる』の三輪香月が登場するのは1983(昭和61)年、二作のシリーズ刊行前にリリースされていますが『パズルゲーム☆はいすくーる』の中でトラベルミステリとして描かれている『SPECIAL 1 ミステリー・ツアー』が1985(昭和60)年の発表で、星子ひとり旅シリーズ第一作『殺人切符は♥色』が同年の刊行です。時期的には影響を受けたタイミングとは思いにくいのと、『パズルゲーム☆はいすくーる』のトラベルミステリと言ってよい作品はこの回だけなので、この作品が後進に与えた影響はほぼないと思います。

「……少女探偵が源流ではないのかも」
この可能性を考慮する時が来たようです。

この時期はいわゆる2時間ドラマが大ヒットしており、その中でも西村京太郎先生、山村美紗先生の作品はトラベルミステリ、観光地を舞台としたご当地ミステリとして大人気でした。
星子ひとり旅シリーズの著者、山浦弘靖先生はテレビドラマの脚本も多く書かれていて、刑事物もかなりたくさんあります。
だとしたら流れとしては「2時間ドラマでヒットしているトラベルミステリを少女向け小説でもやってみよう」という動線の可能性が大きい気がします。

既に若い女性が一人旅に出ても自殺と間違われることも激減している時代です。女性層が旅行ものの小説を読む土壌は充分できています。この時期にはもう内田康夫先生の浅見光彦シリーズも始まっていて、ご当地もの、旅情ものはそれなりに堅いと思われます。

そして、絶対言及しなければならないのは山村美紗先生です。
山村作品は女性主人公が多く、テレビドラマでもキャサリンシリーズ、祇園舞妓小菊シリーズなど、ものすごく女性探偵が多いのです。
山村美紗作品がなければ、女性が探偵役、謎解きをする作品が読者に受け容れられる時期はもっと遅くなっていたと思っています。そして京都という観光地を舞台とした作品が大量にあることも大きな影響を与えているように感じています。

現時点では「2時間ドラマ、トラベルミステリ、山村美紗作品のヒットが、星子ひとり旅シリーズ、幽霊事件シリーズの少女向けトラベルミステリに結び付いた」と認識しています。

実際のところ、ある程度はそうじゃないかなと思っていたのですが、可能性のあるルートをチェックしていかないと不確定なままなので、今まで頑張って確認してきた訳です……「これじゃないと確かめた」というやつです。

山村美紗作品は西村京太郎作品ほどでなくてもめちゃくちゃ多いので、今度改めて記事にしたいと思います。深堀りしないと決めていてすらかなり大変なのが予想されます。しばらくお待ちください。

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