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自分が読者、プレイヤーとして何が欲しいかを確認する方法

ワタシは電書で小説をリリースしたり、ゲームをリリースしたりしていますが、マーケティングについては全然解りません。現在対象読者としてイメージしている傾向の読者さん、ユーザーさんを可視化できていないのです。
ちなみにgranatで制作、リリースしている小説、ゲームについては明確に定義ができています。「ワタシ(館山)が『読みたい』『プレイしたい』と思う小説、ゲーム」です。書きたい、作りたいではなく読みたい、プレイしたいです。
つまり想定ターゲットは自分と同傾向の趣味を持つ人です。
今回は想定ターゲットとしての自分を検証するためのテキストです。

小説でもゲームでも「敢えてリリースしよう」という場合、「よそでも手に入る」作品は作りません。制作、創作にはとんでもない手間がかかり、作りたいというのをモチベーションにしないので、わざわざ他で買えるものを自作したくないのです。特に同人ゲームでは「アホほど分岐する陰気な青春もの」なので死ぬほど面倒です。万が一外注したらとんでもない額が人件費で飛びます。その額、製作期間をつぎ込むなら、どう考えても伊能図レプリカを買うとかそっちの方が有意義です。でも「入手不可能」だから仕方なく作るのです。
小説の場合も状況はあまり変わりません。分岐しないのでずいぶん工程は楽になりますが、granatの小説は基本的に「読みたいラインナップで、かつ他で入手できないものを自作」して出しています。

「よそでは手に入らない」という部分に注目した人は多分、ここまでの工程を見て溜息のひとつもつかれたかと思います。そうなんです。既に求められているなら大抵は「ある」んです。世の中にはすごい作家さんやゲーム制作者さんがうぞうぞいて、みんなに求められていて素晴らしい作品は「既にある」のです。ない時点で「そんなに求められていない」のです。

できれば「もっと売れたい」「もっと多くの人に届けたい」とも思うのですが、欲しくない要素の入っている小説、ゲームをそこまでのコストをかけて作りたいかというと、そんな面倒なことは絶対やりたくありません。ワタシは作る喜びみたいな部分は全くなく「自分が買い手、受け手として欲しいもの」だけを作っているので、想定ターゲットからずれてしまいます。
「そのお客に売りたい訳じゃない」問題が立ちはだかるのです。

なのでせめて自分という想定ターゲットがどういうお客なのか可視化し、同好の士に届けられる機会を増やすしかありません。そのためには自分がどういう処理をして「読みたい作品を実際に買っているか」を認識すべきだと思いました。その分析の補強のために何をしているかを並べてみました。



探す、知る、スルーする作業

twitterアカウント、情報サイトのフォロー

自分がどんな傾向の作品が欲しいかを知る機会を可能な限り増やすようにしています。方法は大抵twitterで作家、出版社、好きなジャンルのブックデザインをしているデザイナー、ゲーム会社、制作者などのアカウントをフォローしたり、Amazonの『この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています』『この商品を見た後に買っているのは?』を追いかけていったり、タイムラインで流れてくる作品を確認に行くなどです。
漫画好きならコミックナタリーなどの漫画情報サイト、ゲーム好きなら好みの作品を多く扱っている情報サイトを押さえておくと楽かもしれません。そしてそういうサイトもtwitterアカウントを持っていることが多いのでフォローしておきましょう。

趣味の合う仲間を増やす

あと自分の好きそうな作品が好きな人をフォローするなどもしています。
ご友人でなくても問題ないです。SNSで一方的にフォローしている人でもいいので、自分の好きな作品が好きな人を片っ端から探しましょう。何作か趣味が合う場合、その人の読んだ本は自分にも面白いかもしれません。

知らない漫画はオンラインサービスを探す

漫画についてはオンライン漫画はいくつかのサービスを毎日見に行き、新連載でどれを追いかけるかを決めるとか、無料電書のキャンペーンがある時に読んだことがないけど気になる作品や、ヒット作品だけどノーチェックだったりした作品の1巻を読んでみて「これは知らなかったけど面白い!」と思える作品をチェックしています。

自分の性的、恋愛的なツボ以外の作品を外す

ただしある程度好みが偏っていて、そこから外れると読みづらいジャンルがあります。性的なサービス、恋愛ものです。性欲要素が売りになっている作品の場合「自分のツボから外れるとつまらない、グロに感じる」というかなりシビアなマイナス補正がかかります。あと性的、恋愛的なサービスというのは基本的にその作品の想定ターゲットに向けたものなので、そこが合致しない場合自分はその作品の想定ターゲットではない可能性が上がります。

それでも買う場合は「自分がその作品の想定ターゲットではないけど面白かったので買う」というかなり強めのモチベーションが必要になります。そういう要素があるけど追いかけてしまう時も多少はあります。

好きなジャンル、属性、ツボを自覚する

自分の好きな特定ジャンルがカテゴリとして存在する場合、意識して追いかけることができます。「戦国時代が好き」「過去の事件をモチーフとしたミステリが好き」「グルメものが好き」などです。
漫画の場合は絵柄も大きなポイントになります。こういう絵柄のこういうストーリー傾向が好きというのは一通り確認しておいた方が楽です。
ゲームの場合、どういうジャンルというのは遊び勝手に直結するのでノーチェックはすごく厳しいです。テキストを読むのが苦手な人がノベルゲームを買ってしまったら目も当てられません。

NGツボ、地雷を自覚する

自分が「何が嫌いか」をちゃんと知らないと結構えぐい目に遭います。グロやエロ、恋愛などの解りやすい要素は避けやすいです。
グロ作品は表紙などでそういう要素を出していることも多いですし、エロもそっち売りの場合ある程度きわどめの表紙だったり、特定のそういう作品に強いレーベルを把握できます。カップリング表紙など「どんな相手役とのロマンティックな、エッチなサービスが展開されるかがきっちり解る」ように作ってあったりします。売り手も想定ターゲットに解りやすいように意識しています。
ほとんどの人が持っていない特殊なツボの場合は苦労します。「どうしてもデートシーンでちゃんこ鍋一気食いが入っていたら嫌。見たら暴れる」とかだと、それ以前の大きなカテゴリ「デートシーンがある」「ちゃんこ鍋を食べそうな展開」とかで避けていくことになります。
地味に困るのはこの中間です。すごく探しやすいものではないけれど、ちらほら散見するみたいなやつです。「初見の作家さんを読んだ。ヤンデレ嫌いなのに後半でヤンデレ出てきた」みたいなパターンです。そうなってくると「あらかじめ避ける」ことはしづらいです。
このへんの場合は「作家さんの他のラインナップを確認してから読む」「近い趣味の人が人柱に立つのを待つ」しかないです。

他にスルーしていることはないのか

今までの分類は「意図的に外しているのを自覚しやすい」ポイントです。そうではない、意識する前に外してしまっている要素があります。
パッケージデザインのミスマッチです。これは個人的にミスマッチかどうかと、他の大多数の人にもそう感じられるパターンと両方あります。
検討に入る前に無意識のうちにこのへんが合わないものを外しています。世の中には本もゲームも大量にあるので「検討に入る」より前にそれより多くのものをふるい落としています。特にパッケージデザインのミスマッチについては、脳が処理したことを忘れるくらい無意識で行われています。「面白そうだから買う」前に既にフィルタリングは終わっているのです。
実際にはそういう形で販売されることはまずありませんが、例えば「自分が絶対面白いと思うはずの内容」でも、禁則でたらめベタ打ちのテキストを雑にバインダーにまとめて、適当にタイピングされたタイトルと作家名の作品を本屋で売るコーナーが商業書籍の半分くらいあるとしたら、多分手に取らないと思います。それが面白いかどうかが解らないどころか、つまらなそうに見えてしまうからです。(ただし「そういうコーナーに置かれているものに悶絶するほど面白い作品があったらしい」と知っていればその限りではありません)
そこまで極端でなくても、自分がよく買うジャンルとは違うジャンルに見える表紙だったりしても、本来その作品が面白いと思う人は手に取らないし、そのパッケージで手に取った人には不満な内容になります。
パッケージデザインの傾向、クオリティを見て、無意識に「その傾向の内容、パッケージのクオリティと同等の内容を期待」してしまうのです。

想定ターゲットに届けることは可能なのか

自分の処理を鑑みても、正直言うと「届いている」とは思えません。作品選定(を自覚した)時点でとんでもない量のふるい落としが終わってしまっています。また小説は漫画、ゲームなどのヴィジュアル、グラフィックがあるものと違い、好みのものをあらかじめ追いかけることがとてもしづらいです。

これだけ頑張っても自分の欲しいであろうものの情報をきっちり得られていないし、それ以上に自分の作品の情報を趣味の合いそうな人に届けきれていません。
ゲームの場合はまだ何とかなりそうな気がしますが、小説の方は「あ、届ける動線がないわ」と思いました。漫画、ゲームならある作品情報サイトがそもそもありません。インフラなし状態です。(ライトノベルの場合はラノベの杜さんがありますが、それ以外のジャンルについてはあるんでしょうか? ご存じの方ぜひお教えいただけると嬉しいです)

これからもたまに分析の補強のための文章を書きたいと思います。

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