『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』
2019年のアメリカ映画。
ジャンルはダークコメディ。
監督は、ダニエル・シャイナート。
脚本は、ビリー・チュー。
キャストは、マイケル・アボット・ジュニアアンドレ・ハイランド、ダニエル・シャイナート、バージニア・ニューコムなど。
制作・配給が今勢いのあるA24。
『ムーン・ライト』とか『ミッドサマー』とか。イケてる面白い映画量産している会社です。
タイトルからお察しの通り、徐々に死の真相が明かされていくストーリー展開の映画です。
あらすじはこんな感じ。
ジーク・オルソン、アール・ワイエス、ディック・ロングの3人は売れないバンド仲間。
ドラムに"ピンクフロイト"の文字が書かれているあたり、ピンクフロイド大好き感丸出しでバカっぽくて最高です。
そんな3人がバンド練習終わりにハメを外すシーンからこの映画は始まります。
ワイワイ楽しそうにする3人。
大人になってもバカやって楽しめる仲間がいるのは羨ましいな〜なんて思っていたんですが、前言撤回。
次のシーンで、負傷したディックをジークとアールが病院の前に放置します。
そして、ディックは亡くなってしまいます。
ただこの段階では、なぜ死んだのかは全く分かりません。
これから徐々に謎が解き明かされていくんだというワクワク感。これぞミステリー。
検死結果でディックのお尻に損傷の痕がある=男性に犯されたのでは?という医者の見解。
ジークとアールが?え?でも、それが理由で亡くなることなんてあるの?どういうこと?気になる〜。
で、この後の展開としては、警察の捜査が始まって、ジークとアールはあの手この手で証拠を隠滅して逃れようとします。
負傷したディックを乗せていたジークの車の後部座席は血だらけ。その血をジークとアールが拭き取るシーンを見て、「あ!パルプ・フィクションだ!」と思った矢先、2人がパルプフィクションの話をし始めた時はテンション上がりました。
しかしながら、いわゆるミステリーものと違って、完全犯罪のような仕組まれた殺人ではなく、頭のキレる犯人でもなく、わりとあっさりジーク達は追い詰められます。
わりとあっさり追い詰められる要因として、ジークとジークの娘シンシアの存在が大きいです。
このジークという男が、良くも悪くも正直過ぎるというか嘘が下手というか。表情が顔に出る人代表みたいな感じで。でも、なんだか憎めないキャラクターなんですよね。
シンシアは子どもで見たままのことを口にします。それがことごとくジーク達のアリバイ崩しになっているんですねぇ。図らずも警察の手助けをするシンシア。子どもは本当に純粋ですね。嘘に塗れた大人とは大違い。でも自分がジークの立場だったら、シンシア〜それは今言わないで〜ってなると思います。
でですね、
この映画で重要なのが、登場人物の名前の「愛称」なんです。
日本で言うと、あだ名みたいなものですね。
ただ、海外では日本よりこの「愛称」がかなり根付いています。
例えば、
レオナルド→リオ
ロバート→ボブ
レベッカ→ベッキー
とかですね。
読み方があまり変わらないものもあれば、まったく違う読み方になっているものもあります。
調べてみると、1つの名前に対して愛称がいくつかある場合もあるみたいです。
なので、愛称を知らないと伝わらないパターンも。
この映画でも、序盤で警察同士の会話で愛称のくだりがあります。
1人はエドワードという名前をテッドという愛称で呼びますが、もう1人はそのことを知らず、「エドでは?」と訂正します。確かにエドもエドワードの愛称なんですが、テッドも愛称なので、愛称を知らないとこういう食い違いが起こるんですね。
ちなみに、テッドはセオドアの愛称でもあるみたいです。ややこしい。
この序盤の何気ない会話が、絶妙に伏線になっていたんで、もうビックリです。細かい演出するな〜と。
で、ここから先は盛大にネタバレしますので、映画を観て結末が知りたい!という方はここまでにしておいてください。
愛称が重要なキーポイントになっている映画です。これだけ頭に入れておいてもらえたら、死の真相を知るとタイトルの意味が分かると思います。これ以上言うと感の鋭い人は察するかもしれないので、ここら辺でやめておきます。では、先に進みます。
警察の依頼の元、医者がディックの遺体のDNA検査を行ったところ、体内から検出された精子が人間のものではなく、馬の精子でした。う、馬の精子!?
どういうこと!?
その後のシーンで、すぐに答え合わせが。
ジークが奥さんに問い詰められ、嘘のつけないジークは全てを話してしまいます。
実は、ジークとアールは昔から、飼っている馬のコメットにお尻の穴を捧げていたのです。しょ、衝撃的展開…!ジークは結婚する前からアールと2人でそれをやっていて、ディックにもやらせたところ、馬のアレが大きすぎて、何かを突き破ってしまったのか、とにかく馬のアレが大きすぎて、ディックは運悪く亡くなってしまったと、そういうことだったんです。
なんちゅうこっちゃ。
でですよ!
ディック・ロングですよ。
ディック・ロングの本名はリチャード・ロングなんですね。
要するに、リチャードの愛称がディックなんです。
このリチャードの愛称がディックということを知らなかった警察が、ディック・ロングとリチャード・ロングが同一人物であることを知って、ジークを自白に追いやるんですが、その説明は省略します。
その展開も面白いので、是非ご覧になって確かめてください。
で最後に、タイトルの意味です。
『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』
原題は、
『The Death of Dick Long』
なので、ほぼ同じですね。
原題と邦題が全然違うパターンはよくありますが、この作品はこの意味のタイトルでないといけません。というのも、このタイトル、ディックの死の真相を意味しているからです。
リチャードの愛称であるディック。
実は、スラング(隠語)で男性器を意味します。アソコですね。
なので、ディック・ロングはこういう意味もある訳です。
「長いアソコ」
もうお分かりですよね?
ディック・ロングの死因は、馬の長いアソコにお尻をやられてしまって亡くなったと。
いや、色んな意味で遊びすぎだなこの映画!!
この映画観て改めて思ったのは、男って本当にバカってことですね。
でも、日本にはあまり馴染みのない愛称や隠語を上手く使ったストーリーで、僕は好きな映画でした。
ジークもどうしようもないんだけど、どこか憎めないキャラクターなんですよね。応援したくなるというか。
女性はあまり好まない映画かもしれません…。むしろ嫌いな人もいるかも。
個人的に、監督のダニエル・シャイナートがディック・ロング演じてるところがツボでした。パルプ・フィクションでも、タランティーノが似た様な感じでワンシーンだけ出てたので、タランティーノ愛感じました。
以上、海上の映画noteでした。
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